第273話 バラバラにされ拷問を受けるも折れないバラス

バラス 「…っ? なんだ?!」


リュー 「安心しろ、切り落としたわけではない、亜空間で繋がったままになっている。痛みはないし、動かせるだろう?」


慌てて手を動かすバラス。床に落ちた腕がビクンビクンと曲がったり伸びたりする。その様は大きな芋虫のようでなんだか気色悪かった。


次の瞬間、バラスの両足も切り離され、支えを失った男爵の胴体が床に落ちる。男爵は少し頭を打ったようで、呻いている。


ランスロットが近づき、バラスの襟首を掴んで持ち上げ、リューたちのほうに見せた。


バラス 「こ、こんな……馬鹿な……」


バタバタとバラスの手足が床の上で伸び縮みしている。


リュー 「暴れるなよ。正直に話してくれたら戻してやるぞ?」


バラス 「っ知らん!」


そう言った途端、バラスの首が胴体から切り離されて落ちた。顔面を床に打ち付けてバラスが呻く。ランスロットは持っていた胴体を床に投げ捨て、バラスの髪を掴んで持ち上げる。床に打ち付けられた胴体の痛みでバラスはまた呻いた。


ランスロット 「主、我々にお任せ下さい。ちょっと体に聞いてみましょう」


バラス 「ひっ!?」


すると数人のスケルトン兵が姿を現し、バラスの切り離された体のパーツを持ち、再び消えていった。


リュー 「殺すなよ?」


バラス 「何をする気だ……?」


ランスロット 「心得ております」


そういうと、ランスロットもバラスの頭を持ったまま消えてしまった。


リュー 「……」


ブリジット 「……」


リュー 「ええっと、どうしようか?」


だが、すぐにランスロットがまた姿を現した。バラスの体の部品もボトボトと床に撒かれるように放り出される。


ランスロットが持っているバラスの首は、生気のない虚ろな目をしていた。


ランスロット 「さぁ!」


バラス 「ひっ…、認めるっ! 認めます! 全て私の指示です! だからもう許してくれぇ~っ!!」


バラスは全ての罪を自供したのだった。


リュー 「何をしたんだ? …いや、聞かないでおこうか……」


ランスロット 「スケルトンの住む闇の世界で、少々痛い目を味わって頂きました。そして、未来永劫死ぬ事もできずに苦しみ続ける事になると言い聞かせました」


リュー 「言わなくていいと言ってるのに……」


バラス 「……もう嫌だ、連れて行かないで、許して……」


リュー 「随分短い時間だったが?」


ランスロット 「亜空間は時間の経過の仕方も違いますからな。使い方次第で、一瞬でも永遠にも感じるようにも」


リュー 「というか、身体を切り離した意味はなかったんじゃ……まぁいいや、今はこちらの処理だな。あとはブリジットに任せていいんだろう?」


だが……ほぼほぼ折れていたはずのバラスの心であるが、その時、小さな希望の光を見出し、ほんの微かであるが力を取り戻した。


バラス (……こ、この冒険者さえ居なくなれば……結局証拠などない……。拷問されて嘘の証言をさせられたと言えば、なんとか誤魔化せるのではないか?!)


リュー 「んん……? バラスはどうやら、自分は無実だと主張するらしいぞ?」


神眼でバラスの考えを読んだリューが言った。


ランスロット 「おや、思ったよりしぶといですね。もう一度教育をする必要があるようですか?」


ランスロットがバラスの頭を持ち上げ、自分の顔の前に持ってきて言った。


バラス 「ひぃっ!」


リュー 「証拠がないから、拷問で証言を強要されただけと言えば逃げられると……そうなのか、ブリジット?」


ブリジット 「いえ、王宮で再度尋問が行われますが、隷属の首輪を着けた上で行われるので、嘘はつけませんから。それで全て明らかになります。逃げられはしないでしょう」


リュー 「じゃぁスケルトン軍団に拷問を受けたのも、意味がなかったんじゃ……?」


ブリジット 「そうなりますね……」


バラス 「そんなぁ……」


ランスロット 「知ってましたけどね。だから拷問も手加減いたしました」


リュー 「は? じゃぁなんで態々?」


ランスロット 「お・し・お・き・です」


骨の顔なので表情は分からないはずなのだが、ランスロットが笑っているのが何故かリューとブリジット、アラハムには分かったのであった。


リュー 「お前、性格悪いな……」


ランスロット 「主に仇なす者に対しては容赦はしませぬ。この程度では甘いという意見が軍団の中でも多いのですぞ?」


リュー 「ああ、ソウナンダー」


スケルトン達の “会議” を想像してリューは参加したくねーと思うのであった……


ブリジット 「しかし、さすがは賢者様、ご協力ありがとうございました」


リュー 「賢者じゃない」


ブリジット 「では…大魔道士様?」


リュー 「名前を呼び捨てでいい、冒険者だからな」


ブリジット 「はい、ではリュージーン様」


リュー 「様もいらない」


ブリジット 「これだけ世話になっておきながら、それはできません」


バラス 「……………………!!」


体を元に戻してもらったバラスはアラハムによって縛り上げられていたが、リューの名前を聞いて、何か心に引っかかるものがあり、それが何かに思い当たって急にはっと反応した。


バラス 「リュージーン?! リュージーンと言ったか?! それは先日、王家から『手出し無用』と通達があった者ではないか? 確か、その者を怒らせた者は全滅を覚悟せよ、それについて王家は感知しないとか書いてあったような……


なんて事だ…… 名前をちゃんと確認しておくのだった~」


そもそも、王に反逆を企てていたバラスは、王宮からの指示など従う気がなく、まともに読んでいなかったのであった。自業自得である。



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


警備隊壊滅、領主逮捕

その後の街の運営をどうするか……


乞うご期待!



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