第272話 リュー「はい、嘘!」
バラス 「奴はデキが悪かったものですから。跡継ぎになるのは無理かと憂慮していたところでして。跡は次男か三男にしようかと考えておったところ、死んだのなら余計な揉め事にならずに済みますな」
ランスロット 「実の息子なのに冷たいお言葉、荒んでいますなぁ。これならスケルトンのほうが人間らしい気持ちを持っているかもしれませんぞ?」
リュー 「お前に聞きたい事がある。ブリジットを隷属の魔法で従わせ、俺を殺すよう命じたのはなかなか下衆な策だった?」
バラス 「はて、何のことかな?」
リュー 「お前が指示したんだろう?」
バラス 「知らん。トツテが勝手にやった事だ」
リュー 「…嘘だな」
バラス 「本当だ! 奴には昨日、廃嫡を言い渡したところなのだ。だが奴は無断で私の部下を連れ出してしまいおってな。これから奴を捕らえて処罰する予定だった、代わりに奴を成敗してくれたようで、ブリジット殿には感謝いたしますぞ!」
ランスロット 「慌てて縁を切って責任を逃れようという所でしょうか? しかし、親の縁を切っても監督責任は逃れられないでしょう?」
リュー 「やったのはトツテにせよ、全部、お前の入れ知恵のようだな」
バラス 「知らんと言ってるだろうが! さっきから何なんだお前は?! 無礼であるぞ!!」
だが、リューは神眼で心が読めるリューに嘘は通用しない。
リュー 「俺は、相手が嘘を言っているかどうかが分かるスキルがあるんだよ」
バラス 「何…だと!?」
確かに、光属性(または聖属性ともいう)の魔法またはスキルに、嘘を見破るものがあるのを男爵も知っていたが。
リュー 「だいたい、隷属の魔法が使える魔法使いなど、そうはおらんだろう? 侯爵当たりから借りたというところか」
目が泳ぐバラス。
バラス 「……知らん、何の事だか……」
リュー 「惚けても無駄だ、言っただろう、嘘は分かると」
バラス 「……」
リュー 「黙っていても無駄だよ。その侯爵の名は?」
ブリジット 「アルザード侯爵か?!」
バラス 「……」
リュー 「正解のようだ」
ブリジット 「やはりな……。国王への反逆罪、許される事ではない」
バラス 「誤解だ! 私は反逆など……」
ブリジット 「黙れ! 私の護衛の騎士が一人殺されている。さらに私を虜囚とし、隷属の魔法で辱めたのだぞ? この私自身が揺るがぬ証拠だ! この事は全て王に報告する。おそらく領地は没収、爵位は剥奪となるだろう」
バラス 「だからそれはトツテが勝手にやった事で、私は何も……」
リュー 「はい、嘘」
バラス 「!」
リュー 「領主はブリジットが捕らわれていたのを知っていたんだろう?」
バラス 「う……」
リュー 「
バラス 「ええいもういい! この場で全員殺してしまえば済む事だ! 出合え!」
その瞬間、扉が開いて騎士達が雪崩込んできた。領主子飼いの騎士達である。後ろのほうには先程門のところに出てきた騎士達も居た。
ブリジットが騎士達に向かって叫んだ。
ブリジット 「お前達! 私は王命によってここに来ている。領主に与する者は反逆罪となるぞ! 分かっているのか?!」
だが、騎士達には動揺する気配もなかった。
バラス 「ふ、コイツラは俺が高い金を出して雇っているのだ、王家の威光などチラつかせても無駄だよ。
さぁお前たち、殺ってしまえ!」
一斉に剣を抜く騎士達。
だが、剣を抜き終わると同時に、騎士達の首もすべてすべて斬られて落ちていった。突然騎士達の傍らにスケルトン兵達が現れ首を刎ねたのだ。本当はリューが対処するつもりであったのだが、スケルトンの対応のほうが早かった。
仕事を終え、またすぐに姿薄くなって消えていくスケルトン兵。
バラス 「な! …これは!」
リュー 「ランスロット、勝手にやるなよ…」
ランスロット 「申し訳アリマセン。ですが、主も殺るつもりだったのでしょう?」
リュー 「まぁな……」
ランスロット 「屋敷の中も兵士たちによって制圧済みです。どうしますか、全員殺りますか?」
リュー 「さすがに使用人達まで殺す必要もないだろ。雇い主が失脚した事を伝えて、さっさと再就職先を探しに行かせてやろう」
結局、リューが許したので、その後、使用人達は全員さっさと屋敷を逃げ出して行くことになるのだが。
実は、リュー達が乗り込んで来た時、部屋の中にはもう一人、バラスが侯爵から借りていた魔法使いが居たのであるが、リュー達とまともに戦っては勝ち目はない事を理解しており、いつでも逃げられる準備をしていた。この魔法使いは気配を消すのが得意で、リュー達に乗り込まれた瞬間には気配を消し、密かにカーテン裏の秘密の通路から隣室に逃れ、そこで服を着替えて使用人に紛れたのである。
そして魔法使いは、屋敷を逃げ出す使用人達と一緒に外に出て、逃亡に成功したのであった。逃げ延びた魔法使いは侯爵の元に帰り、強力な戦闘力を持った冒険者が出現した事を伝えるのである。それを聞いた侯爵はどうするのか……?
リュー 「さて、この領主はこの後どうする?」
ブリジット 「反逆罪ですから……もちろん領主は解任。逮捕の上、首謀者の情報を得るために拷問の上、死刑。あるいは無期奴隷として鉱山送りというところでしょうか」
バラス 「証拠は?! 証拠がないだろうが!」
ランスロット 「黙りなさい。主がそうだと言っているのだからそうなのです」
リュー 「言ったろ? 嘘が判定できる能力があるって」
バラス 「お、お前などの! たかが冒険者風情の言うこと等、証拠となるか!」
ブリジット 「リュージーン殿は【賢者】だ、十分信じるに足る」
リュー 「賢者ではないけどな」
バラス 「本人が違うと言っておるじゃないか!」
ブリジット 「…わ、私は信じているから問題ない!」
リュー 「じゃぁ、本人に証言してもらえば問題ないだろう?」
リューがそう言った途端、バラス男爵の両腕が根元から切り離されて床に落ちた。
― ― ― ― ― ― ―
次回予告
バラス、バラバラっす
乞うご期待!
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