第256話 警備隊と賢者様の事情聴取

ブリジット 「それでは、賢者様、申し訳有りませんが、事情をもう一度詳しくお聞かせ願いたいのですが、もうしばらくお付き合い頂けますでしょうか?」


リュー 「俺は賢者じゃない、敬語も使わなくていい、俺はタダの平民の冒険者だ。俺の方も敬語が使えないが気にしないで貰えると助かる……


…実は俺、敬語が使えない呪いに掛かっているんだ」


ヴェラ (あ、まだその設定使うんだ)


リュー (しーっ!)


離れて様子を見ていたヴェラが戻ってきて余計な事を言いそうになる。


ブリジット 「そんな呪いがあるのですか?」


リュー 「冒険者だから…そんなもんだと思ってくれ(笑)


ところで、俺は昨日からずっと入城手続きを受け付けてもらえてないんだが、入城していいのか?」


ブリジット 「私の権限で入場を許可します。(生き返った警備兵達に向かって)構わないな? それと、“元凶”の四人も一緒に来い、話を聞かせてもらおう」


ブリジットは国から特権を持って視察に来ているそうで、この街の指揮権を上回る上位の指揮権を持っているのだそうだ。(もちろん街の領主が王命に従わないと言えば別であるが。)


ブリジットの指示で警備隊の兵士達も解散となった。門を潜る時、リューの近くを通った兵士たちが怯えた表情をしていた。今後は賄賂の要求やセクハラなどアホな事をしなくなると良いのだが……おそらくは、山賊のような兵士たちの質はそう簡単には変わらないだろう。


リューとブリジット、そしてコモイ・サモイ、ナルダーとセコの四人が連れられ、城内の門の近くに建っている警備兵の事務所の会議室を借りて事情聴取に入った。


まず、リューが何があったのかを順を追って話した。


ブリジット 「なるほどね、法外な入城料を請求された事、閉門の時間を勝手に早めた事、女性の入城希望者へのセクハラ要求、女性の入場者への痴漢行為、それを庇った者への殺人未遂、そんなところかしら」


次に、警備兵達の言い分を聞くが、警備兵達は当然のように端々で嘘をついて誤魔化そうとした。そのうちエスカレートし、リューの事を大嘘つき呼ばわりまでし始めた。


だが、ブリジットは呆れた顔でそれを見ていた。実はブリジットは、捜査のため相手の嘘を見破る魔道具を王宮から持参してきていたのだ。


魔導具の存在を明かし、嘘を一つ人す指摘していくブリジット。これにはコモイ達もついに観念して罪を認めるしかなかった。


ブリジット 「想像以上に風紀が乱れているわね……これは思ったより問題かも」


なにせ、リューの証言の時は一度も光らなかった魔道具が、警備兵達が話す内容ではことごとく光ったのである。息を吐くように嘘を付く。悪い事をする事に対する抵抗感がない。警備兵の間に風紀の乱れが蔓延している事の証である。


ナルダー 「だが、警備兵の逮捕に抵抗して暴れたソイツも悪いだろうが! いや、悪いと思いますが?」


ブリジット 「何を言ってるの? 痴漢行為を働いて、抵抗したら逮捕しようとしたなんて、正当な逮捕と認められるわけないでしょう」


リュー 「俺は理不尽に殺されそうになったから身を守っただけだ、正当防衛だな」


ブリジット 「リュージーン殿の正当防衛を認めます。それに、私も女ですから、女性に対して猥褻行為を行った事は許せないわ!」


ナルダー 「痴漢行為それをやったのはセコだけだ。俺たちはやってねぇ」


セコ 「ひでぇ! お前たちだってしょっちゅうやってるじゃねぇか!」


ナルダー 「馬鹿黙れ」


ブリジット 「なるほどね、これまでもそんな事をずっとやり続けてきたというわけね?」


リュー 「賄賂の要求に猥褻行為。この街の警備兵達は全員やってるらしいぞ?」


ブリジット 「お前達、後で全員きっちり取り調べて罪は償わせる! 警備隊のメンバーは全員覚悟しておきなさい!」


警備隊は本当ならば全員謹慎処分としたいところであったが、そうすると街の警備業務が回らなくなってしまうので、とりあえずブリジットは警備隊に通常業務を続けるよう命じたのであった。


リュー 「言っておくが、は生き返らせてやったりはしない。覚えておけよ?」


ブリジット 「生き返って身体は元に戻っても、一度殺された記憶はあるのですよね? ならば、彼らも懲りたんではないでしょうか。彼らもさすがにもう【賢者様】に手を出す事はないでしょう」


リュー 「だといいんだがな」


やっと解放され、警備隊の事務所を出たリューとヴェラ。


ブリジットは領主に現状について問い質すと言って、領主の館に向かった。


警備隊は最悪であったが、街の雰囲気はどうであろうか? 一応簡単に見て回る事にした。


とりあえず宿を取り、街の料理屋へ行って見る事にした。各町の名物料理を食べる事は、旅の楽しみの一つである。街の雰囲気は悪くとも、食い物は美味いかもしれないのだから……


     ・

     ・

     ・


この街の料理は、まずくはないがまぁ普通であった。だが、別の問題が発生した。最後に出されたお茶に毒が盛られていたのである。


予知能力によってお茶の危険を察知したリューは、ヴェラにそれを伝え、神眼でお茶に毒を入れた者を探した。


神の目が店の中を探っていくと、厨房の外に男が一人、店の中をそっと伺っていた。【鑑定】してみたところ、警備兵の一人であった。男の心を読んでみると、昼間の出来事を根に持っての犯行……証人隠滅でブリジットの追求を躱す狙いもあるようだ。


その男の指示で、厨房に居た料理人の一人が毒を入れたらしい。店の料理人も警備隊の息の掛かった者が入り込んでいるようだ。


リュー 「おい、この店では客に毒を飲ませるのか?」


リューとヴェラはカウンター席に並んで食事をしていたが、そのリューの言葉でカウンターの中に居た料理長が殺気立った。


料理長 「ああ?! お客さん、そんな事言って代金踏み倒そうって魂胆か?!」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


リューを警備隊の暗殺者が狙う?


乞うご期待!



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