第253話 リューに挑んだ愚かな警備隊
増援の警備兵 「お、おまえがやったのか?」
リュー 「連れの女に痴漢行為を働いた衛兵を懲らしめただけだが?」
警備兵達は、よくある話なので事情は瞬時に理解できた。今日の門番は特に素行の悪い部隊の担当だったのだ、さもあらん。
リュー 「
確かに事情はすぐに察した警備兵達。どちらが悪いと問われれば、猥褻行為をした警備兵が悪い。だが……
多少の賄賂や若い女への痴漢行為などの
リューに向かって槍を構える警備兵達。だが、すぐに襲いかかっては来ない。どうやら応援が来るのを待っているのだ。
襲いかかってくるなら遠慮なく返り討ちにするが、動きがないのではどうしようかとリューが迷っていると、バラバラと奥から応援の警備兵が現れ始めた。
続々出てくる増援。リューがじっと待ってやっていると、その数はついに150人ほどになった。一瞬でこれだけの人数が招集されるとは、この街の警備隊は、腐ってはいるもののチームワークは良いようである。
リュー 「真面目にやれば良い仕事をしそうなのになぁ……」
事情も分からず招集された者がほとんどであろう事に配慮し、リューはもう一度だけ、警告してやる事にした。
空間魔法を使って全員の耳元によく聞こえるように声を響かせながら叫ぶ。
リュー 「俺は痴漢行為を働いた衛兵を懲らしめただけだ! それを知ってなお襲ってくる者は容赦はせん。言っておくが、俺は手加減が下手だ、来るなら死ぬ覚悟をして来るがいい」
ナルダー隊長 「耳を貸すな! 相手はただのFランク冒険者だ! 仲間がやられてんのに黙ってたら警備兵が舐められちまうぞ!」
その言葉を聞いて、警備兵達は全員武器を抜いてリューを取り囲み、殺気を放ちはじめた。
リュー 「痛い目を見ないと分からんか」
ナルダー 「この人数相手ではどうしようもあるまい? 後悔してももう遅ぇ! やっちまえ!」
ナルダーの号令で兵士達が一斉に攻撃を開始する。
だがそれを、マシンガンのようなリューの火球連射が迎撃する。
警備兵達 「おい、無詠唱だぞ?! Fランクじゃなかったのか?」「しかもなんて速度だ!」「魔法戦の隊形だ!」「魔法障壁を張れ!」
兵士たちはリューの火球を見て、一旦攻撃を止め陣形を変えた。
魔法障壁を張れる兵士が何人か居るようだ。詠唱中に攻撃されないよう後方で呪文を唱えている。それを守るように魔法耐性を持つ盾を持った兵士が前を塞ぐ。なかなかの練度だ。
詠唱が終わる前に倒してしまう事も可能であったが、あえて終るのを待ってやるリュー。
やがて詠唱が終わり、魔法障壁が発動する。どうやら盾を起点に障壁を張っているようだ。盾をもった兵士達がリューを取り囲むように陣形を移動してくると、魔法障壁がリューをグルリと取り囲んだような形になる。
ナルダー 「やれ!」
盾を構える兵士の後ろから、魔法の攻撃が弾道軌道で一斉に飛んでくる。魔法王国で警備兵を任されるような兵士はほぼ全員が攻撃魔法を使えるのだ。
火球、氷槍、土槍、風刃、雨のように大量の攻撃魔法が降り注ぎ、リューのいる場所は爆炎に包まれた。
ナルダー 「やったか?」
だが、煙が晴れてみると、そこには涼しい顔で立っているリューが居た。
ナルダー 「馬鹿な……あれではまるで、英雄ドロテアの絶対障壁ではないか……」
今度はリューの反撃である。
兵士たちにゆっくり近づいて行くリュー。焦った警備兵達は慌ててバラバラに攻撃魔法を撃ってくるが、すべてリューの前で見えない壁に弾かれてしまう。
だが、そこでリューが呟いた。
リュー 「見えにくいな」
リューは相手の攻撃魔法によって視界が遮られるのを嫌い、障壁の種類を変更した。
攻撃魔法を弾くのではなく、霧散させてしまう障壁。魔法障壁とリューの魔力分解能力を合わせた応用技、この世界ではリュー以外誰も使う事ができない魔力分解障壁である。
いくら魔法攻撃を放っても、リューに近づくと消えてしまう。その状況に警備兵達が焦る。
警備兵 「おい、どうなってんだ? 攻撃が通じないぞ?」
リュー 「魔法が使えないなら、物理で勝負すればいいじゃないか?」
そう言うと、リューは一気に距離を詰め、前に立っていた “盾” に蹴りを入れた。
吹き飛ぶ盾兵。何人かが巻き添えを食って一緒に吹き飛ばされる。
ドロテアのような高位の魔道士が使う魔法障壁は物理的な攻撃に対する防御能力も高いが、この街の警備兵の障壁にはそこまでの能力はないようだ。
ナルダー 「くそ、訳が分からねぇ、なんで魔法攻撃が通用しねぇ……?」
そこで再びリューの大声が響いた。
リュー 「もう一度だけチャンスをやる。俺に非はない、お前たちが悪だ。お前たちはそれが分かっていてなお、攻撃してくるのか?」
実はリューは不死王に貰った新兵器をテストしてみるつもりであった。これをふるえば相手は死ぬ。その前に念の為、もう一度警告してやったのだ。
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次回予告
近衛騎士登場
乞うご期待!
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