第252話 警備兵「へっへっへっ、身体検査だよぉ」
王都へ帰還したドロテア。
ドロテアの強力な補助魔法で強化された馬車であれば、通常六日ほどかかる行程を二日で走破できるのだ。
王宮に帰り着いたドロテアは早速、若き王に報告に上がった。
王 「
ドロテア 「いえ、それどころか、
王 「馬鹿な! 災害級と言えば、全てを捨てて避難して、人命が助かれば儲けものというレベルだぞ? 神災級となれば、誰も助からない神の裁きのレベルだ」
ドロテア 「はい、そのレベルの可能性が高いと思います。彼の者が本気になれば、一撃で街を消滅させてしまう事すらも可能だと」
王 「それほどか?
“不滅の要塞” とまで言われた国内唯一のSランク魔道士・ドロテアがそこまで断言するのなら、信じるしかないか。
他国のスパイではなさそうなのが救いだな。で、その者を王宮に連れ帰る事もできなかったというわけか? 当然仲間に引き入れようとしたのだろう?」
ドロテア 「はい、宮仕えはしたくない、と。爵位も興味ないとアッサリと言い切られました。現在は監視をつけてありますが、強引な手法は逆効果かと。
その者は、特に好戦的という印象も受けませんでしたので、敵対しない限り、特に反社会的な行為をするような危険人物ではないかと。ただ、怒らせたらどうなるかは……」
王 「特に法を犯すような事もないのであれば、放っておけばよいか。だが……」
ドロテア 「ええ、今の国内情勢の中では、外国から来た冒険者にちょっかいを出す者は多いかと思われます。
諸侯にすぐに通達を出すべきかと。彼の者―――リュージーンという冒険者には一切手出し無用、敵対する事なかれと。敵対すれば全滅もありえます。もし敵対した場合、全滅も覚悟せよ、王国は一切関知しない、と」
王 「あいわかった、早速手配しよう。引き続き、その者をなんとか王国に引き入れられるよう、慎重に事を進めよ」
* * * *
ダヤンの街の城門。
早朝から街を出る者たちが門を通過していく。
門の外に昨日までなかったはずの小屋が建っているのを見て皆ギョッとしたが、門限に間に合わなかった者のために宿泊用の小屋を建てたのだろうと勝手に解釈されたようで、特に騒ぎは起きなかった。
宣言通り、遅めの時間に起きてきたリュー。
イルミン一行はリュー達が起きる前に街に入っていったようだ。
宿泊料は前払いで貰ってあるし、商人たち用の朝食も昨晩の内にまとめて渡しておいたので、朝は勝手に出ていって良いと言ってあったのだ。
ヴェラはとっくに身支度を済ませていた。リューは簡単に身支度を済ませると、小屋を収納し、再び門に向かったのであった。
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門の衛兵は昨日とは違う者達だったが、質は大して変わらないようだ。今回は入場料を吹っかけられる事はなかったのだが、荷物検査と身体検査をすると言い出した。
リュー達はほとんど荷物を持っていない事(亜空間に全てを収納しているため)、小屋が忽然と消えた事が怪しいと言う事であった。一応筋は通っているようにも思えたが……
ヴェラ 「何すんのよ!!」
パシーン!!
突然ヴェラの声が響き、ヴェラの張り手が衛兵の一人に炸裂した。ヴェラの胸を衛兵が触ったらしい。
衛兵(セコ) 「へっへっへっ、何って、身体検査だよぉ、身体に触らなければ調べられねぇだろう? いいのかい? 検査が終わらないと入城できないよ?」
いやらしい手つきをしながらヴェラに迫るセコ。後退るヴェラ。
リュー 「はぁ……ったく。お前らいい加減にしろよ?」
リューはヴェラにちょっかいを出していたセコの首根っこを摘み上げると、そのまま宙高く持ち上げ、勢いよく地面に叩きつけた。
セコ 「ぐえっ!」
リュー 「呆れた街だなぁ、ほんとうにここは。ここも盗賊のアジトかなんかなのか?」
衛兵 「キサマ! 警備兵に手をあげて、タダで済むと思っているのか? (振り返って)おい!」
『ナルダー隊長、どうしました?』
衛兵の名はナルダーというらしい、なんと隊長であるようだ。
そのナルダーの合図で、控えていた衛兵達が次々と奥の扉から出てきた。
リュー 「公然と賄賂を要求したり、痴漢行為を働いたりする、なんともゲスな警備兵だな。この街の領主はそんな行為を許しているのか? それとも領主もグルのゲスなのか?」
ナルダー 「貴様、警備隊への暴行、さらに貴族に対する不敬罪も追加だ。覚悟はできているだろうな?」
出てきた警備兵達がリューを取り囲み威圧し始めた。
リュー 「お前達、命令に従ってるだけならやめておけ。あるいは自分たちが悪だと分かってて突っ掛かってくるなら容赦はせん、死ぬ覚悟は完了しておけよ」
ナルダー 「生意気な! やっちまえ! 殺しても構わん! 俺達をコケにした奴がどうなるか思い知らせてやれ!」
リュー 「本当に山賊の城に来たようだな。なら手加減はいらんか」
リューとヴェラを取り囲んだ衛兵達。一人がリューに向かって槍で突いてきた。見れば、昨日、門番をしていたサモイという衛兵であった。その槍の柄を掴んで止めたリューは、次の瞬間、火球を放った。
サモイ 「うぎゃっ」
火球を食らったサモイは火だるまになって吹き飛ぶ。リューはいつのまにか火の仮面を装着している。
リュー 「ヴェラは下がっていろ」
リューは転移でヴェラを百メートルほど離れた場所に移動させた。
ヴェラ 「あら? 私も暴れようかと思ったのに…」
周囲の兵士達が突いてくる槍を躱しながらリューが火球を返していく。次々と被弾して火傷を負っていく警備兵達。
ナルダー 「何をしている! 魔法を使え!」
兵士達はリューから距離を取り、呪文詠唱を始めた。
リュー 「詠唱が必要なレベルではなぁ」
衛兵達の呪文詠唱が終る前に、リューの高速の攻撃が衛兵達を全員倒してしまう。
あっという間に全滅してしまった兵士達。
その時、ナルダーが無詠唱で魔法攻撃を放ってきた。
だが、その攻撃はリューに当たる前に見えない壁に弾かれてしまう。
ナルダー 「な、魔法障壁だと?!」
リュー 「魔法障壁については、この国の人間はよく知ってるだろう?」
ナルダー 「……馬鹿な!」
後退るナルダー。
ナルダー 「ちょっ、待ってろ!」
叫んだナルダーは、背を向けて脱兎のごとく門の脇の検問所に走り込んでしまった。
衛兵の検問所は防壁と一体化されており、防護壁の内側の詰め所と繋がっている。検問所と詰め所は防壁の中と外を抜ける通路にもなっているのだ。
ナルダーはさらなる応援を頼むため詰め所に走り込んだのだ。
ナルダーはとりあえず、詰め所に居た数人の警備兵に防壁の外に敵がいるから応戦しろと指示、さらに緊急招集の鐘を鳴らした。
緊急事態に対処するため、手の空いた警備兵や休暇中の警備兵があれよあれよと集まってくる。出没する魔獣に対処するため、警備兵達の練度は高いのであった。
詰め所に居た警備兵達が様子を見に防壁の外に出てきたが、倒れている同僚の兵士たちを見て愕然とした。
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次回予告
警備隊壊滅
乞うご期待!
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