第249話 盗賊の村壊滅

部屋に戻ったリュー。


当初、リューは猫化ヴェラと一緒に寝るつもりであったのだが、結局ヴェラは村の外の適当な場所に小屋を出して泊まる事にした。


宿の部屋は、血の匂いが染み付いていて気分がよくないとヴェラが言ったからである。


リューは言われなければ分からなかったが、ケットシーであるヴェラは鼻が良いようだ。

 

おそらく、旅人が来る度に眠らせては殺して金品を奪っていた、その血の臭いが部屋の床や壁に染み付いてしまっているのだろう。

 

部屋の扉は一応鍵が掛かるようにはなっているが、宿の人間は当然合鍵を持っているだろうから鍵など意味はない。


     ・

     ・

     ・


そして、やがて時は深夜。

 

廊下でヒソヒソ話し声が聞こえる。

 

オヤジ 「おい、鍵穴に鍵が入らねぇぞ?」

 

女将 「何やってんだい、貸しな! ……本当だ、どうなってんだ?」

 

オヤジ 「隣も試してみよう」

 

リューの部屋の隣はガーメリアの部屋である。あまり良い印象もない連中なので放っておくかとも思ったリューであったが、流石に殺されるのを分かっていて見過ごすこともできず、鍵穴に次元障壁を張っておいたのだ。

 

鍵はガーメリアの部屋と騎士の部屋には刺さらず。女将は首を傾げながらリューの泊まっている部屋の扉の鍵穴に差したところ、こちらはすんなりと入った。

 

女将は顎でオヤジに合図する。オヤジは頷いてナイフを抜いた。女将がそっと音がしないように鍵穴を回し、扉を開けた。

 

そっと足音を立てないように侵入してきた二人。手にはそれぞれ一本ずつナイフを持っている。二人はベッドのわきに立つと、ナイフを振り上げベッドで寝ているリューに向かって一気に突き立てた。

 

しかし、ナイフは硬質な音と堅い手応えがあっただけで、人間を刺した時の感触とは明らかに違っていた。

 

女将・オヤジ 「?!」


慌ててオヤジが布団をめくると、中には丸太が寝かされていた。そして、後ろから声がする。

 

リュー 「そうやって、何人殺してきたんだ?」

 

驚く宿の女将とオヤジ。

 

女将 「なんで後ろに?!」

 

オヤジ 「どうして眠っていない?」

 

リュー 「睡眠薬入りのビールの事か? それなら飲んだフリして捨てたぞ」

 

女将 「最初から気づいてたのかい?」

 

リュー 「ああ、ここが盗賊の村だって事もな。峠で皆殺しにした盗賊達から聞いた」

 

女将 「ちっくしょう!」

 

女将がナイフを無理やり引き抜いてリューを刺そうと襲いかかるが、その腕がすっぱりと切り落とされ床に転がる。そして次の瞬間には女将は胸をリューの剣に貫かれていた。

 

女将 「うっ」

 

剣を抜いてオヤジも斬るつもりだったリューであるが、剣がすんなり抜けなかった。剣は人や動物の身体に深く突き刺してしまうと簡単に抜けない事があるのだ。普通の剣を使ったのが失敗であった。


仕方なく魔法を使う。盗賊達と同じ、体内に小さな火球を転送しようとする。


だが、魔法仮面をつけていなかったのでうまく制御できず。親父の身体の内側から強烈な業火が湧き上がる事になってしまった。


慌ててリューはオヤジの体に沿って次元障壁を張り、宿に燃え広がるのを防いだ。火事になると、睡眠薬で眠らされているガーメリア達まで焼け死ぬ事になってしまう。せっかく助けのにそんな事で死なれてもなんだかもったいない。


女将は結構大声を出していたが、ガーメリアと騎士達が起きてくる気配がない。なかなか強力な睡眠薬のようだ。


炎は数秒後にはすぐに収まったが、その時には既に、親父は人がたの炭になっていた。

 

リュー 「ああ、これ・・でもいいな、死体の処理がいらない。“謎の人体発火現象”って言ったら信じるかな? 火を使った攻撃魔法がある世界では謎でもなんでもないか……」





その時、リューは宿の周囲に気配を感じた。村人達が取り囲んでいるようだ。リューは階段を降り、宿の玄関を出る。

 

村人A 「女将はどうした?」

 

リュー 「…返り討ち?」

 

村人B 「一人か? 他の連中は死んだか?」


村人C 「お前だけは腕が立つようだな? だがこの人数相手だ、勝てると思うなよ?」

 

リュー 「いや、むしろ、この程度の人数で俺を殺せると思ったか? 俺は峠の盗賊を一人で殲滅したんだぞ?」

 

村人A 「ちくしょう、やっぱりそうか! やっちまえ!」

 

一斉に襲いかかってくる村人達。だが、一瞬後には、全員吹き飛ばされていた。村人達の身体はバラバラに切断され、地面に散らかったのであった。リューの風の刃ウィンドカッターである。今度はリューは風の仮面を装着けてみたのだ。


初級魔法であるウィンドカッターであるが、魔法の仮面とリューの膨大な魔力供給により、その破壊力は上級以上となり、金属さえも切り裂いてしまう。襲ってきた村人は装備していた鎧ごとキレイに両断されてしまったのであった。





リューはそのまま村の中を歩く。


神眼を発動し、村の中をサーチ、発見した者を次々殺していく。


(もちろん、心を読み盗賊の仲間である事を確認しているが、ほぼ全員盗賊団の仲間であった。)


発見した村人あらため盗賊は、辺りを汚さないよう、今回は極小のウィンドカッターを体内に送り込んでみた。小さなサイズで破壊力のある風の刃を作り出すのはかなり難しい繊細な技術だが、魔法の仮面を使えば簡単である。そして、何発撃ってもリューなら魔力切れの心配もない。


脳あるいは心臓を小さな風の刃に斬り裂かれ、盗賊達は次々と倒れていった。


結局、村人は全員盗賊の仲間であった、二人の子供を除いて。


リューが殺さなかった二人の子供は、隷属の首輪を付けられた奴隷であった。



― ― ― ― ― ― ―

 

次回予告

 

正体を現したな! 罪もない村人を虐殺し金品を奪うとは!

 

乞うご期待!

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る