第247話 寄り道したら……
盗賊達を殲滅し、旅路を再開したリューとヴェラは、しばらく街道を進んだところで脇道があるのを発見する。
脇道には看板が立てられており、
「この先ワニム村、宿屋有り」
と書いてあった。
このまま街道をまっすぐ進めば次の城郭都市ダヤンまで辿り着けるはずであるが……。
リュー 「こっちだな」
ヴェラ 「急げばダヤンまで行けるのでは?」
リュー 「いや、今日はこの村に泊まろう」
ダンジョンに向かう冒険者は別であるが、一般的に、街と街を行き来する商人や旅人は野宿は基本的に避ける。この世界には魔物が居て危険だからである。
野宿をする必要がある場合は、護衛を大勢つけて交代で見張りをしながら、襲ってくる魔獣を撃退しながらという事になる。
野宿しやすい安全なポイントはある程度限られてくるため、旅人達は同じ場所に集って、協力しながら野営をする事が多くなる。
必然的に、旅人が頻繁に野宿するポイントができ、その場所は利用者によって徐々に整備され、簡易的な宿場ができ、村になり、街に発展していく。そうして、この世界はだいたい一日で移動できる程度の距離間隔で街や村ができているのである。
旅をする者は、安全地帯である次の街まで一気に移動して、街に宿泊するのである。早朝に出て、日が暮れるまでには次の街に着くようにする、それが普通なのである。
だが、リューはふらっと時間を気にせず旅に出てしまう。当然、街に着く前に日が暮れてしまう事も多いのだが、リューの場合はそれで問題がない。
仮に途中で宿泊する事になっても、リューは亜空間に収納してある小屋を出せば済むのでテント泊の必要はない。収納には出来たての料理も保管してあるし、ゆっくり風呂に浸かる事もできる。(収納には源泉から直接取り込んだお湯が大量に入っている。)
小屋は周囲に次元障壁を張ってしまうので、魔獣の襲撃を心配する必要もない。むしろ、下手な宿に泊まるよりはずっと快適である。
また、リューならば、必要であれば夜間の移動も可能である。神眼があるリューには夜の闇も昼と同じである。ただ、リューは夜はちゃんと眠る主義なので、あまりしないのだが。正体がケットシーであるヴェラも、夜目が効く。魔法が得意なケットシーである、索敵魔法や強力な攻撃魔法も使えるので問題ない。
まぁ仮に魔獣に襲われたとしても、リューが瞬殺して収納してしまうので、ヴェラの出番はほぼないのだが。
もはや、魔獣は素材提供に出てきてくれるだけの存在である。危険なはずのこの世界で、リューは何も危険がないかのように気ままに街の外をふらつく事ができるのだ。
ただ、リューならぬ一般の旅人は、街間の移動には結構神経を使う。朝出発して夕方、日が暮れる前に到着しなければならないのだ。距離は急ぎ足でギリギリ間に合うというような距離である事が多い。もし、途中で何らかのアクシデントがあれば、間に合わなくなってしまう可能性があるのだ。
(大抵の街は夜、門を閉ざしてしまうので危険な街の外で翌朝まで待つ事になる。)
今回、盗賊退治をしていたリューは、しかしそれほど時間を掛けたわけでもないので、ダヤンの街まで急げば日が沈むまでに辿り着ける時間であったのだが……
リューはあえて村に泊まる事を選んだのだった。
リュー 「野宿でも構わんが、村があるというのなら立ち寄ってみるのも悪くないだろう」
ヴェラ 「ワタシはリューの小屋のほうが嬉しいけどね。泊まってみたら酷い宿で、野宿したほうが良かったって事のほうが多かったじゃない」
あまり安い宿に泊まると、食事は堅いパンに味のないスープのみ、隙間風の吹く部屋に、寝具はノミだらけという事もある。初級の冒険者がまず覚える必要があるのは、ノミ退治の魔法であると言われているくらいである。
もちろん高級な宿はそんな事はないが、小さな村では安宿が一軒しかなく、選択肢はないというケースもよくあるのだ。
リュー 「それも旅の醍醐味というものだろう?」
必要なら転移で移動してしまう事も可能なリューにとっては、旅をする意味は、旅を楽しむ以外の何ものでもないのである。
酷い部屋に泊まった場合でも問題はない。リューは神眼で寝具と部屋の中の微細な虫達を捉え、転移で外にすべて放り出してしまう。
ノミやダニの数はあまりに多く、最初は辟易したが、慣れてくると範囲指定しながらまとめて処理できるようになった。
無数の微細な虫を神眼で捉えてまとめて処理するのも、リューには良い練習になるのであった。これが上手くなってくると、例えば体内に入った毒素を、神眼で細胞レベルで毒素だけを捉えて体外に転移排出してしまうなどと言うこともできるようになってくる。やった事はないが、リューであればガン細胞の摘出なども可能であろう。
(ノミ退治が面倒な時は自分の小屋に避難してしまえばよいだけである。)
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街道を逸れ、村に向かったリューとヴェラ。
すぐ近くかと思いきや、思ったより山奥に入っていく。
一時間半ほどかかって、やっと辿り着いた村は、想像以上にボロかった 。村を囲う防壁は木製で、門番が一人、暇そうにあくびをしていた。
門番に声を掛けるリュー。
リュー 「旅の者だが、一晩泊まりたいのだが」
門番 「おや、客か、珍しいね。ダヤンの街から来たのかい?」
リュー 「いや、ドレッソンからだ。ダヤンに向かっている」
だが、それを聞いた門番は妙な顔をした。
門番 「峠を越えてきたのか?」
リュー 「そうだが?」
門番 「最近、峠には盗賊が出るって話だが、大丈夫だったのか? そうか、今日は盗賊は出なかったのか」
リュー 「いや、出たよ? 返り討ちにしてきた」
門番 「なに?! そ、そうか……強いんだな…」
リュー 「宿があるんだろう? 看板に書いてあった」
門番 「あ? ああ、宿は一軒だけだ。今日はほかにも客が来ているが、まだ部屋は空いているだろう……」
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次回予告
村の正体
乞うご期待!
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