第243話 捕らえられた元勇者
ランバート 「だいたい、SSランクと言ったら “災害級” と言われるレベルですよ?」
リュー 「俺は災害かっ」
ドロテア 「違いないだろう、君が本気になったら街が滅びるんじゃないのかい? 昨日の、“アレ” を街に向けて撃ったらどうなるか……」
リュー 「波動砲(笑)か……まぁ否定はしない」
ガーメリア 「何を言ってるんですか先生? 何があったんです? 騙されていませんか?」
ドロテア 「ガーメリア、お前はいつから居たのだ? どの辺から見ていた?」
ガーメリア 「コイツが先生を上回る実力だとか言う話の当たりからです。
でも、そんなのありえない、先生のSランクは、神業の領域だからこその唯一の認定であって、先生こそが世界最高の魔道士です! それを超える人間なんて居るわけがない。しかもそれがこんな弱そうな人間だなんて……」
ドロテア 「私の事をそこまで買ってくれているのは嬉しいが、私なんてまだまだだよ。上には上がいる。現にここにも居た。ガーメリア、彼は、私の “絶対障壁” を破った、それも簡単にね。いや、破られたからには、もはや “絶対” なんて使ってはいけないな」
ガーメリア 「そんな! 先生の絶対障壁が破られるなんて、絶対ありえない……幻覚、そうだ、幻覚を見せられたのではないですか?
…さては! キサマあの悪名高き魔導師イド・デヴィンの手の者か!」
ガーメリアは杖を構え、ドロテアとリューの間に割って立った。それを見てランバートもドロテアを庇うように移動した。
ガーメリア 「私が化けの皮を剥がしてやるわ! 覚悟なさい!」
ドロテア 「ガーメリア! やめなさい!」
ガーメリア 「でも先生!」
ドロテア 「ガーメリア! 私の言う事が聞けないのか!? 私の言葉が信じられないというのだな?」
ガーメリア 「いえ、そんな事は……
…も、申し訳ありません……
でも、数万の敵軍の攻撃をたった一人で防ぎきった先生の魔法障壁を破ったなんて、信じられません! それがもし本当の事だとしたら、そんなの災害級じゃ……」
ドロテア 「だからそう言ってるだろう? 彼はSSランクなのは間違いないよ、それどころか、SSSランクかも知れない」
ドロテア(リューの方を向いて) 「ちなみに、SSSランクは神災級とか
リューは肩を竦めた。
リューが本当に全力を出したら、
ドロテア 「リュージーン、是非、王都に来てくれないか? 王に君のことを紹介したい。そして、正式に魔法使いランクを認定したいんだが」
リュー 「遠慮しとくよ」
ガーメリア 「キサマ! 先生のお誘いは命令と同じだ!! 断るなど無礼にも程があるぞ?!」
ドロテア 「ガ・ア・メ・リ・ア? 少し・黙ってて・くれるかな?」
ドロテアの発する激しい怒気を感じたガーメリアはさすがに黙り、それ以上は何も言わなかった。
ドロテア 「リュージーン、君には宮廷魔導師の地位を与えてもいい。なんなら爵位も与えられると思うぞ?」
リュー 「興味ない」
ドロテア 「ふ、そういえば君は自由を愛すると言ってたな。仕方ない、今日のところは諦めるとしよう。その代わり、旅の途中で近くに来たら連絡してくれないか? またうまい酒をご馳走するよ」
リュー 「まぁ、考えておくよ」
その返事にガーメリアがまた怒りの表情を示したが、ドロテアに睨まれ、口を開く事はなかった。
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その日の内に、ドロテアはガーメリアに引きずられるようにしてドレッソンの街を後にした。
馬車に乗り帰っていく二人。護衛の騎士が前後に付いているが、二人の馬車に続いてもう一台馬車が走っていた。そしてその中にあったのは、ユサークとジョディの姿であった。
実は、ガーメリアとランバートはドロテアを迎えに来たわけではなく、隣国で問題を起こして逃げ込んできた “勇者” を迎えに来たのだった。魔法王国としても、勇者を自国の戦力として取り込めるのであれば吝かではないのである。工作員を通じて連絡を受け、ガーメリアが派遣されてきたのだ。
ガーメリアはユサークを保護し、帰ろうとしたところで、よく知った自分の師の魔力を感知し、街の外まで見に来たというわけであった。
馬車の中のユサークとジョディ。
二人は隷属の首輪を嵌められ、かつ、魔力を抑える手枷を嵌められた状態であった。この手枷は、魔法王国製だけあって魔力を抑える能力が極めて高く、ユサークの魔力が非常に小さくなっていた。魔力がまるで別人のように小さくなり、質も変化していたため、ユサークがドレッソンの街を離れていく事にリューは気づかなかったのだ。
ちなみにユサークに手枷と首輪を嵌めたのはガーメリアである。ユサークに会ったガーメリアは鑑定能力でユサークに勇者の称号がない事を確認し、詐称かと問い詰めた。それに怒ったユサークはガーメリアに襲いかかったが、一蹴され、取り押さえられてしまったのだ。魔法王国の “宮廷魔導師四天王” の魔力は伊達ではないのである。
魔力を抑える枷を嵌められ一般人並みに抵抗力が落ちた状態で、さらにユサークは隷属の首輪を嵌められてしまった。
その状態で尋問したところ、どうやら嘘はついていないようであった。(隷属の首輪の力で嘘をつくなと命じて尋問すれば尋問は簡単である。)つまり、元は勇者であった、そして今でも本人は自分は勇者であると信じているようだ。しかし何らかの理由で勇者の称号が失われてしまったという事なのだろうか。
はっきり言って、勇者の能力を持たないユサークには価値はない。だが、せっかく魔法王国を頼ってきた、一応かつては勇者の称号を持っていた者なのだから、何かしら利用価値はあるだろうという判断で、一応連れ帰る事としたのだた。
王都に着いた後、ユサークは軍に引き渡される事になる。だがすぐに情報源として価値がない事が判明する。ユサークはフェルマー王国についての軍事的に有益な情報など何も知らないのだから。
ユサークには勇者の称号がなくともかなり戦闘力があるので、軍の前衛職として活躍する事も期待されたのだが、なにせ性格に難のあるユサークである、問題を起こし暴れたあげく、結局、戦闘奴隷に落とされる事となるのであるが………。
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次回予告
リュー、魔法王国の王都へ向かう
乞うご期待!
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