第242話 「君はSSS級かも知れないね」

リュー 「魔法を使うために全集中すると俺は変顔になってしまうので、全力を出す必要がある時は仮面を着けてるんだ」


ドロテア 「な、なるほど…それで魔法のコントロールが上手くなったのか……」


鬼の仮面について適当な事を言って誤魔化したリューは、ドロテアに攻撃魔法を撃ってみろと言った。


最初は遠慮がちに、そのうちムキになって、ドロテアは様々な属性の魔法攻撃を撃ったが、リューの張った障壁が揺らぐ事はなかった。


リューはドロテアの障壁を破ってみせた。それと同じ方式の障壁魔法なのだから、強力な攻撃魔法を加えれば絶対に破れないわけではないはずだが、結局ドロテアの攻撃では障壁を揺らがせる事もできなかった。


ドロテアは防御が得意な魔導師なので、攻撃魔法が得意というわけではなかったのだが、それでも並の魔道士よりは遥かに強力な魔法が使えるのであるが。


そしてついに、ドロテアは電池切れ、もとい魔力切れを起こして座り込んでしまった……。


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ドロテア 「君は、全然疲れた様子がないな。一体どれだけの魔力を保有しているのだ?」


ドロテアが要塞と呼ばれる事となった攻防戦でも、ドロテアは余裕であったわけではない。何度もマジックポーションを飲みながら、ギリギリで耐え凌いだのだ。


だが、リューが魔力切れを起こす気配はない。


ドロテア 「…まさか、測定器上限(九桁)超えは本当だったのか……?」





普通の人間の魔法を充電池を内蔵した電気製品に喩えれば、リューの魔法はコンセントに繋いで使う電気製品のようなものと言える。


普通の人間は電池が切れたら再度充電するまでは魔法が使えなくなってしまうが、リューの魔法は外部からエネルギーを供給されている。


言ってみれば、充電式の掃除機とコンセントから電源を取る掃除機の違いのようなものである。


しかもリューのコンセントのエネルギー源は世界に普く存在している、世界を構成している素子オリジン。つまりそれは世界そのものとも言える。世界中どこに居ても使えるコンセントがあるようなものと言えよう。


(そして不死王が作ってくれた魔法仮面はその家電を自動制御してくれるAIのようなものである。)


どう頑張っても、充電式の掃除機よりも、コンセントから電源を取っている掃除機のほうが吸引力が強い。リューの魔法障壁はドロテアのそれよりも遥かに強力なのは間違いない。





実は、リューはずっと、次元障壁の変わりとなるものを探していた。


リューがこれまで使っていた次元障壁は時空魔法によって異なる次元の空間を挟み込む事で障壁とする技であるが、これは相手もまた時空魔法を使える―――次元を越える事ができる―――のであれば通用しない可能性が高い。(実は挟み込む次元を高次の空間に変えれば強度が増すのであるが、そこまでリューはまだ理解していない。)


時空魔法が得意な不死王には次元障壁は通用しない。不死王とは戦う気はないので問題ないが、ショックだったのは、さらにその後、勇者にも破られてしまった事であった。


この世界に来て、転生の記憶が戻ってからずっと、リューは常に鎧のように次元障壁を身に纏っていた。ある意味、最も使い熟した魔法であると言える。そして事実それは完璧にリューを守ってくれていた。その絶対の安心感があればこそ、大胆な行動もできたのだ。だが、それが通用しないケースがあるという事を知ってしまった。


それから、リューは次元障壁が通用しない場合の新たな防御法を模索するようになったのだ。その一環として、時空魔法ではない属性の魔法障壁についても知りたかったのである。次元障壁が通用しない相手に魔法障壁が通用するのかは疑問なのであるが、打てる手は多いほうが良い。





リュー 「限界か、すまん」


ドロテア 「はぁ、はぁ、魔力が枯渇しかけるまで魔法を使ったのは、先の戦争以来だな……」


リュー 「他にも色々試したい事があったのだが、どうやら無理そうだな……


…いや、待てよ?」


リューはドロテアに近づき、腕を掴んだ。


ドロテア 「…? え?! なに? ……おおこれは! 魔力が流れ込んでくる!」


リューは魔力を無限に生成できる。その魔力を、枯渇している人に分け与える事はできないか? と考えたのである。どうやらそれは可能であるようだ。


本来、魔力というのは、人によって性質が微妙に異なっている。血液型のようなものである。人の体内にある魔力をそのまま他人に移植しようとすれば、違和感があったり、受け取れなかったり、場合によっては重篤な障害が起きる場合もある。だが、リューの魔力はリューの体内にあるものではなく、オリジンから直接生成された純度の極めて高いものであったので、魔力の他人への提供が成功したのである。


これを使えば、リューが魔力を提供してやる事で他の者が無限に魔法を使える可能性がある。(それをするメリットが現時点では思いつかなかったが。)


だが、拒否反応こそなかったものの、純度の高い魔力を短時間に無理やり注ぎ込まれたドロテアは、目眩を起こして倒れてしまった。


魔力酔いと呼ばれる症状のようである。


どうやら純度が高すぎて、自分の身体に馴染むまでに時間がかかるようだ。


結局、このような方法で無理やり人の魔力を回復させるのは、やはり簡単ではないようであった。


リュー 「すまんな、無理をさせたようだ」


鬼の仮面を外しながらリューが言った。


ドロテア 「いや、魔法を見せてくれと言ったのは私だ、ありがとう、よく理解できたよ……


…君がとんでもない怪物であると言うことがね。


君は……魔術師ランクSSダブルエス、いやSSSトリプルエスかも知れないわね」


リュー 「魔術師ランク?」


ドロテア 「ああ、この国には、冒険者ランクとは別に、国が認定する魔術師ランクというものがあるのだ。


ちなみに私は特級=Sランクだ、Sランクはこの国に私一人しか居ない。その私を遥かに上回る実力の君は最低でもSSランク……私はSSSもあり得るんじゃないかと、今は思っている」


『そんなことありえない!』


突然、二人の前に一人の少女が登場した。


ドロテア 「おや、ガーメリアじゃないか、どうしたんだ?」


ガーメリア 「どうしたじゃないですよ! 黙って王都を出て行って!」


ドロテア 「はははスマンスマン、ちょっと調査したい事があってな。だが王宮には君たち宮廷魔導四天王が居るのだから、何も問題はないだろう? そのために仕事は全部君たちに任せているのだから」


『そういう事は我々に命じて下さい、ご自身で動かれる必要はありません!』


遅れて現れたもう人の男が言った。


ドロテア 「ランバートも来ていたのか」


ランバート 「師匠、心配しましたよ」


ガーメリア 「そんな事より、今、SS級認定とか聞こえましたが?」


ドロテア 「ああ、そこにいるリュージーン君はSSランクを認定してもいいと思っている」


ガーメリア 「はい? こんな奴が? 見たところ、大した魔力も持っていないようじゃないですか! 私はなんとなく相手の魔力を感じる能力がありますが、コイツからは何も感じません!」


ランバート 「今【鑑定】してみましたが……保有魔力値3ですよ? 3ってなんですか? 3て! 少なすぎて鑑定結果が間違ってるのかと思いましたよ…」


ガーメリア 「……本当だ……ありえない、クズじゃん……」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


リュー、ユサークを見失う


乞うご期待!



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