第215話 勇者、お仕置きされる

魔女シャル・聖女アガタ・聖盾騎士ジョディ・拳闘士ココ。勇者パーティのメンバー四人がユサークを庇うように騎士達の前に立ち塞がった。


騎士団長「なんだ? お主らは上からの命令で勇者パーティに派遣されただけであろう? パーティメンバーによる悪行の報告は今のところ上がっておらぬ。下がれ、勇者の蛮行を看過していた罪は問われるであろうが、今なら情状酌量の余地はあるぞ? だが、これ以降邪魔立てするなら……勇者と同罪として容赦なく斬る!」


ユサーク「無駄だよ~ソイツらは俺の命令に逆らう事はできないんだよ~。神に与えられた勇者の権能? 俺の身に危険が迫った時は、積極的に俺の盾になるように命じてあるんだ」


ユサークの言った通り、例え国王が勇者の認定を取り消そうと、勇者の能力は有効のままのようである。シャル達は、勇者のスキルで隷属させられているため、逆らう事ができないのだ。


過去に一度、リューによって隷属の魔力を断ち切った事があったが、ロンダリアの領主の呪いの時と同じ、元を断たなければ、またその呪いのごとき魔力は対象者を捕らえジワジワと苦しめ続けるのである。


だが、短期的にならばその影響を断ち切る事はできる。リューが魔力分解を発動し、シャル達の勇者パーティメンバーの隷属の魔力を断ち切ってしまう。


その途端、突然糸が切れたようにバタッと倒れる勇者パーティのメンバー達。自由になった事を悟ったシャル達は慌てて起き上がると手を上げ首を振り、降伏の意志を示した。


騎士達に後ろに下がるよう指示され従う勇者パーティの女達。


ユサーク「ち、盾の役割すら果たせねぇとは、とことん使えねぇなぁ。まぁもういいよ、俺一人で十分だ」


ユサークは不敵に笑いながら天に手を翳す。一瞬輝く光が発せられ、ユサークの手の中に聖剣が生成される。謁見の間に入る際に武器は預けているが、その場で新たに剣を生成できるのだから関係ない。


ユサークが360度グルリと聖剣を一閃、すると飛ぶ斬撃が取り囲んでいた騎士達を一瞬で蹴散らしてしまった。


ユサークは国王を聖剣で攻撃しようと玉座を見上げたが、既に国王はそこにはいない、無事避難したようだ。


ユサーク「ち、逃げ足ははえぇなぁ、臆病者が」


騎士団長「何をしている、奴を早く捕らえよ。斬り殺しても構わん!」


騎士達が次々とユサークに向かっていく。しかしユサークが聖剣を振る度に、複数の騎士が斬り裂かれ吹き飛ばされていく。


騎士団長「馬鹿な、精鋭揃いの近衛騎士団がまったく歯が立たないとは……」


リュー「そろそろいいか?」


騎士団長「むむむぅ、ええぃやむを得ん。貴様、本当に勇者に勝てるのだろうな?」


リュー「問題ない。ほれ」


リューが手を翳す。すると、薄っすらと輝きを放っていた勇者の剣と鎧が、その輝きを失っていく。


これまでは、勇者の聖剣と鎧を収納していたリューであったが、今回はやり方を少し変えてみた。


不死王が、その気になれば光さえも分解できるはずだと言っていたリューの能力。


シャル達を縛っていた勇者の権能による魔力を分解できたのならば、その権能そのものも分解できるのではないか?


なんとなくできると確信があったリューは、それを実行した、そして予想通り、結果は成功であった。


ユサークは勇者の権能を失ったのだ。


既に勇者の剣と鎧は、ただの剣と鎧と化している。


だが、間抜けなユサークは自分が勇者としての権能を失っている事に気付いておらず、前に立つリューに襲いかかっていった。


ユサーク「この間は調子悪かっただけだ、今日は負けねぇ! 死ねやぁァァァ!」


だが、ユサークの剣撃はアッサリと躱される。


ユサーク「うげぇぇぇっ!」


カウンターでリューの手加減なしの蹴りがユサークの腹に炸裂する。


吹き飛ばされて壁に激突し、倒れるユサーク。


ユサークに近づいていくリュー。いつの間にか、リューは重量のある素振り用の棍棒を握っていた。


リューが近くまで来たところで、不意をついて素早く立ち上がり斬りかかるユサーク。

 

だが、不意打ちもリューには通用しない。ユサークの剣は空を斬り、棍棒の強烈な打撃により再び吹き飛ばされる。


ユサーク「ひげぶっ!」


リューの膂力で振るわれる太く重い棍棒の打撃は、普通の人間であれば一撃で肉片になってしまってもおかしくない破壊力であったが、ユサークの身体はミンチになる事はない。鎧の力を抜きにしても、ユサークの素の防御能力が高いためである。


だがそれでも血反吐を吐いて倒れる程度のダメージは受けている。見る見る動きが鈍くなっていく。


そんなユサークに近づいては棍棒で殴り飛ばす事を繰り返すリュー。淡々と、ゴルフでもやっているようにユサークを何度も棍棒で右へ左へと繰り返し打ち飛ばす。


いかに頑強な肉体と高い回復能力を持つユサークであっても、さすがにボロボロになり、ついには倒れたまま動けなくなった。


リュー「お仕置きはこんなもんでよいか」


そう呟いたリューは、倒れて動けないユサークの体を治療してやった。


ユサークのボロボロになった身体が再び元通りに戻る。力を取り戻し、一瞬獰猛な表情を見せたユサークであったが…



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


勇者の称号を失ったユサーク


乞うご期待!



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