第182話 不死王の城へ侵入

翌日、冒険者ギルドでチェリーと合流したリューとヴェラは、ダンジョン「不死王城」へと向かう。その道中で、チェリーが先輩冒険者としてダンジョンの説明をしてくれた。

 

チェリー 「いいか、アンデッドに最も効果があるのは光魔法だ、はっきり言えばターンアンデッドだな」

 

ヴェラ 「一般的な部屋を明るくする生活魔法も光属性ですが、アンデッドに有効な攻撃魔法は神官が使う事が多いので聖属性と呼ばれる場合もあります。治癒系の魔法も光魔法に属していますね。アンデッドには治癒効果のある魔法が逆に攻撃魔法として作用します」

 

※リューが使える治癒魔法は時間を巻き戻して以前の状態にしているだけなので、アンデッドに効果はない。

 

チェリー 「次に効果があるのは炎系の魔法だ。効果は光魔法よりは劣るけどな。

 

そのどちらも使えないとなると、後は物理攻撃で倒すしかねぇんだが、スケルトンは、これがまた……」

 

チェリー(リューを振り返りながら) 「…かてぇんだよ!

 

生半可な攻撃じゃぁ、スケルトンの骨は切れねぇ」

 

チェリー(リューの帯剣を見る) 「リュー、お前、主武器メインウェポンは剣だな?」

 

リュー 「そうだな」

 

チェリー 「だが、スケルトン相手にはそれじゃあダメだ。スケルトンを倒すにはこういうのを使うんだよ」

 

チェリーは背中を向け、背負ったバトルアックスを親指で差す。

 

チェリー 「こういう、斧とかナタみたいな重く破壊力のある武器でスケルトンの骨を断ち切るんだ」

 

ヴェラ 「私は重い武器はちょっと…でも光属性の魔法が使えますから大丈夫です」

 

チェリー 「そういえばヴェラは光属性の魔法を活かせるって事でこの街に来たとか言ってたな」

 

ヴェラ 「それもあります、それだけじゃないですけどね」

 

その時、スケルトンが現れた。まだダンジョンの外だが、そう言えばリューも街の近くでレイスに襲われた。このダンジョンは魔物が外に出やすいのだろうか。

 

チェリー 「さて、丁度いい。体験したほうが早い、リュー、っちゃいな!」

 

スケルトンは動く骸骨のモンスターである。そしてその骨は堅い。先ほどチェリーが説明した通り、斧のような武器で力づくで、斬るというより砕くのがセオリーである。鋼鉄製の良い剣であれば斬れなくはないが、ナマクラ剣では厳しい。また良い剣を使っていても腕が悪ければ斬れない事もある。

 

チェリー (ま、あの細腕だし、剣は通用しないだろうが、そん時ぁ俺の力を見せつけて…)

 

だが、チェリーの予想に反して、リューはスケルトンを全て切り刻んで倒してしまった。瞬殺であった。使ったのは佩いていた鋼鉄製の量産剣ではなく、魔剣フラガラッハを握っていた。リューの魔剣ならば、スケルトンの骨も問題なく両断できるようだ。

 

チェリー 「……おい。何だその剣は? あのかてぇスケルトンがバターみたいに……」

 

ヴェラ 「すごいですねぇ! 実は【剣聖】の称号を持ってたりとかして?」

 

リュー 「そんなもんはない。剣が良いだけだな。まぁ昔ちょこっとだが、剣聖に剣を教わった事はあったけどな、教わったのは基本だけだ」

 

ヴェラ 「剣聖と知り合いだってだけで普通じゃないんだけど…」

 

チェリー 「ふ、ふん。スケルトンは切れるようだが……このダンジョンにはもう一種類やっかいな魔物が出る。レイスだ。こいつには物理攻撃が一切通用しねぇんだ。剣でも斧でも斬れない。もちろん殴ってもダメだ。しかも、ドレインタッチという攻撃でこちらの生命力HPを吸い取ってくる。倒すには光魔法、あるいは炎の魔法で追い払うかだ。俺も火球くらいは飛ばせるが、炎系の魔法で倒すのはなかなかしんどい。もし出会っちまったらヴェラの光魔法の出番だな」

 

ヴェラ 「いえ、レイスならリューさんも倒せますよ」

 

リュー 「一緒に戦うんだ、リューでいい」

 

ヴェラ 「リューさ…リューがお屋敷でお嬢様を襲っていたレイスを倒したのを見ました。

 

あの技は、何か制限とかあるんですか? 回数に制限があったりとか?」

 

リュー 「特にないな、いくらでも?」

 

チェリー 「何? お前、光魔法は使えないって言ってなかったか?」

 

リュー 「光魔法ではない、ちょっと変わった特技があってな」

 

ヴェラ 「リューは領主様の呪いを分解してしまったんですよ」

 

チェリー 「呪いを? ちょと何言ッテルカ分カラネェガ……」 

 

そう言ってる間にリュー達はダンジョンに到着してしまった。早速、中に入ってみるリュー。城門を潜り城内に入ると、下りの階段があった。

 

ダンジョン「不死王城」は、上部に城が建っているがそれは入口に過ぎず、あとは通常のダンジョンと同じ様に地下へ地下へと潜っていく構造だとチェリーが説明してくれた。

 

 

 

 

ダンジョンに入れば当然魔物に遭遇する。

 

最初に現れたのはウィスパーであった。

 

ウィスパーは人魂のような浮遊する炎のような姿の魔物である(熱はない)。レイス同様、幽体しか持たない存在であるが、レイスが人間の幽霊に近い存在であるのに対し、ウィスパーはどちらかというと精霊に近いようだ。レイスほど明確な意思も持たないようで、幽霊というよりは、どちらかというと自然現象に近い。

 

リューは試しに剣で斬りつけてみたが、ウィスパーにはやはり物理攻撃は通用しなかった。次に魔力分解攻撃を仕掛けてみるとレイス同様の効果があった。ウィスパーをこの世に縛り付けている魔力の鎖がなくなりウィスパーは消えていったのであった。ウィスパーも消えていく時、なんとなく嬉しそうにしていたようにリューには思えた。

 

 

 

 

次に現れたのはゾンビとマミーであった。

 

ゾンビは動く腐った死体、マミーはミイラのような包帯だらけの魔物である。どちらも物理攻撃が効く。

 

ただ、ゾンビは腐っているので触れれば汚れてしまう。炎系の魔法が使えるなら焼いてしまうほうが良い。マミーも包帯の下はやはりキレイだとは言えない。リューには炎系の攻撃魔法が使えないが、亜空間収納の中には過去に戦った相手の放った魔法が保管されているので、それを出す事にした。

 

収納されていた大量の炎矢ファイアーアローがゾンビやマミーを一瞬で殲滅していく。

 

チェリー 「おい、お前、魔法は使えないんじゃなかったのかよ?」

 

 

― ― ― ― ― ― ―

 

次回予告

 

ダンジョン攻略

 

乞うご期待!

 

 

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