第183話 アンデッド系ダンジョン体験

リュー 「これは魔法じゃない、昔、他の魔法使いが俺に向かって打ってきたのを収納魔法で保存しておいただけだ」

 

チェリー 「収納魔法? 特技って言ってた奴か?」

 

リュー 「いや、それとはまた別の話だが」

 

ヴェラ 「リューの収納魔法は凄いんですよ! 小屋とか料理とか温泉まで!」

 

チェリー 「小屋ぁ? 嘘つけ、そんな収納魔法聞いたことがねぇぞ…」

 

リューの収納魔法は生き物も魔物も収納でき、時間停止も自在、容量無制限、魔法さえも収納可能なのだから、使い方次第ではこれひとつだけで十分世界が獲れてしまうレベルである。

 

(※転移も収納も次元を越えて亜空間を扱うわけで、時間と空間を扱う時空魔法の一種である。時間と空間を扱う力は、まさに世界を造った神の力と言える。リューはまだまだ時空魔法を使いこなしているとは言えないのかも知れない……)

 

リューは収納に、過去に対戦した相手が自分に向けて放ってきた魔法を収納してあるわけだが、収納している魔法は、出し切ってしまえば弾切れになってしまう。

 

今まで使う機会はなかったのだが、ゾンビごときに使ってなくなってしまうのもちょっともったいないかなと思ったリューは、ふと思いついた技を試してみた。

 

確か、ソフィのお付きのメイド、ベティと戦った時に、暴走して制御不能になった極大火球を収納してあったはず。それを収納してある同じ亜空間の中に、ゾンビ達を転移で直接収納してみたのだ。

 

やってみたらどうやら上手く行ったようだ。亜空間の中でずっとエネルギーを維持したまま燃え盛る極大火球の中に放り込まれたゾンビは瞬時に燃え尽きて行く。火球の熱エネルギーの損耗は微々たるもののようである。外に放って爆発させてしまえば一瞬で終わってしまうが、この方法なら極大火球のエネルギーを無駄なく消費できる。いずれ火球のエネルギーがなくなったら、残った灰は全部ダンジョンの中にでも捨ててしまえばいいだろう。

 

色々試してみて分かってきた、スケルトンやゾンビ、マミーなど実体のある魔物は体内に魔石を持っており、それを抜き取るか破壊してしまえば倒せるようである。(骨だけしかないスケルトンも心臓のあたりに魔石があり、最下級のスケルトンでも最低限胸当てを装備しているので攻撃しにくくなっているようである。)

 

魔石抜き取りで倒せるなら、亜空間炉に放り込む意味もあまりないかも知れない。

 

次に出てきたのはレイスであった。出現率としてはスケルトンが一番高く、たまにレイス、もっと稀にウィスプなどであった。

 

レイスやウィスプのように実体を持たない魔物は魔石は持っていないようである。物理攻撃が効かない魔物には魔石はないようだ。

 

もちろん、魔石がなくとも問題ない。それらの魔物は、リューの新しい特技、魔力分解で昇天させてしまう事が可能なのだから。

 

他のモンスターでも同じであるならば、アンデッド系ダンジョンでも、リューにとっては攻略は「作業」でしかなくなりそうである。

 

リューは試しに、“いつもの作業”を行ってみた。

 

神眼で階層内をサーチ。捉えた魔物の魔石をすべて収納してしまう。また、実体のない魔物に関しては魔力分解で昇天させてしまう。

 

いつもなら魔物は倒すと同時に死体を収納してしまうのだが、今回はしなかった。アンデッド系の魔物からは採れる素材がほとんどないためである。アンデッド系の多いダンジョンは不人気なのはそのせいである、狩りとしての旨味が少ないのである。

 

魔石は一応売れるが、下級スケルトンやゾンビ・マミーの魔石の価値はゴブリンと大差ない。スケルトンの骨は武器などに加工する方法もあるようだが、鋼鉄には劣る。特にそれで飛び抜けて優秀な武器が作れるわけでもないのであまり需要がないのである。(金属が貴重な地域では重宝される場合もあるらしいが。)

 

ヴェラ 「……急に、魔物が出なくなりましたね…」

 

冒険者としての活動を楽しもうと思っていたリューは、出てくる魔物を冒険者らしく攻撃して倒していたのだが、早く先に進みたかったので、結局、纏めて殲滅を始めてしまったのであった。

 

敵が出なくなったため、どんどん先へと進んでいくと、すぐにその階層のボス部屋へと到着した。神眼で階層内の地図も頭の中に描けているリューは迷う事もない。

 

最初の階層(第一階層)のボスは、スケルトンナイトが三体であった。スケルトンの上級種である。通常のスケルトンよりしっかりした剣・盾・鎧兜を装備しており、能力も高く、剣技にも優れいてる。初心の冒険者では苦戦する相手である。

 

だが、リューの敵ではない。二体はリューが魔剣で斬り倒す。魔石を斬らなくても主要な骨を断たれると動けなくなり死ぬ?ようだ。三体目は魔石を転移で抜き取ってみた。するとスケルトンナイトはバラバラに崩れて落ちていった。どうやらボスモンスター相手でも魔石抜き取りは通用する事が確認できた。

 

チェリー 「? 最後の奴、倒れ方が変だったな、リュー、お前がやったのか?」

 

リュー 「ああ…楽勝だったな」

 

チェリー 「リューだけで十分だな、俺たち、何の仕事もしてないな」

 

リュー 「今日は俺の勉強のために付き合ってくれてるんだ、それでいいんじゃないか? 悪いから、魔石は全部チェリーが持っていっていいぞ」

 

チェリー 「そうか? 悪いな」

 

いそいそと魔石を拾うチェリーに、リューは転移で抜き取った魔石をさも拾ったかのように渡してやるのだった。

 


   *  *  *  *



一方その頃、リューの紹介状を破り捨てて謹慎処分になっていたブオンに正式な処分が下されていた。ブオンは隊長からヒラの隊員に降格、代わりに副長のキッドが隊長に就任した。

 

ホイスはブオンの解雇を主張したのだが、エミリアが反対、もう一度、勉強し直す機会を与えたかったのだ。

 

だが、エミリアの温情はブオンには伝わらず。ブオンは自分が連れてきた部下とともに失踪してしまったのだった。

 

ブオン 「部下だった奴の下について命令されるなんて冗談じゃねぇ! チクショー、エミリアめぇ簡単に人を切り捨てやがって! あと、あの冒険者も……この恨み、必ず晴らしてやるからな、覚えてろよ……」

 

街を出たブオンは、森の中にある以前使っていたアジトに向かうのだった。

 

 

― ― ― ― ― ― ―

 

次回予告

 

不死王城ダンジョン攻略2

 

乞うご期待!

 

 

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