第179話 Fランクがダンジョン? ダメダメ帰れ帰れ
エミリア 「リュージーン様、どうか、お願いします。不死王を倒して頂けませんか? 呪いを解き、レイスを倒したリュージーン様ならば、それが可能なのではないですか?」
リュー 「うーん、どうかな……不死王というのに会った事がないからな。そもそもレイスと不死王を同じレベルで考えちゃいかんだろう。それに……
…不死王とは相互利益がある盟約を交わしていたんだろう? それを違えたのはマガリエル家のほうと言う事になると、不死王のほうに大義名分がある事になるしなぁ。
利用したい時だけ利用して、必要なくなったら殺そうとするとか、呪いたくもなるのも仕方ないのではないか?
俺もかつて、騙されて、足の筋を切られてダンジョンに置き去りにされた事があるが、割と、一族諸共殺したくなるもんだぞ?」
エミリア 「そんな事が……」
ホイス 「お嬢様、これ以上言っても理解はしてもらえないでしょう。それにそもそも、Fランク冒険者にSS級の魔物を討伐しろなど無茶振りもいいところ、上手いこと言って誤魔化そうとしていますが、実は此奴も困っているのだろうと思いますぞ」
いつもは蔑まれても飄々と受け流すリューだが、今回は珍しく少しムッっとした。
リュー 「……まぁ、ちょっと、その不死王に会ってみたいとは思うけどな」
ホイス 「何を言っている、相手はアンデッドの王だぞ、瞬殺されて終わ―」
エミリア 「本当ですか?!」
リュー 「盟約を交わせるくらいなのだから、話ができる相手なのだろう?」
エミリア 「実は、不死王とのホットラインは父が乗り込んで以降、不通になってしまっておりまして……」
リュー 「だとすると、ダンジョン側から乗り込むのが、その不死王の研究室とやらへの近道かな? ダンジョンコアを不死王が管理しているなら、コアを破壊されそうになったら出てくるかもしれんからな」
ホイス 「たかがFランク冒険者が、ダンジョン攻略など、大風呂敷を広げ過ぎだ、馬鹿らし過ぎて笑われるだけだ」
リュー 「俺は既にふたつダンジョンを踏破しているんだが?」
ホイス 「ならば何故Fランクなのだ? ホラ吹き大会ならSランクの実力があるかもしれんな」
リュー 「ギルドのマスターに嫌われていてな、ランクアップさせてもらえなかったんだ」
ホイス 「いい加減にしろ、相手をする価値もない。不死王城は、未だに攻略に成功した冒険者は居ない。ましてやFランク冒険者ごときができるわけがないだろう。いいか、見えを張って無理をするなよ、不死王城は他のダンジョンとは違って手強い、命を粗末にするものではない」
リュー 「……そうだな、無理する必要はないか」
ヴェラ 「そんな、大魔道士様なら解決できます、私の占いにもそう出ていました、大魔道士が現れて街を救ってくれると! お願いします!」
リュー 「俺は魔道士じゃないんだが……まぁ、しばらく様子を見させてもらうかな。エミリアの容態も今後どうなっていくか分からないしな。呪いを止める事ができなくとも、魔力を防ぐ手立てがあれば問題ないかも知れないわけだし」
ホイス 「リュージーン、すべて解決とは行かずとも、ヒントと治療は大いに助かった、それについては感謝する。治療代についてはマガリエル家から上乗せして報酬を振り込む事になろう。バイマークに帰って依頼完了の報酬を受け取るが良い。
エミリア様、早速領内の魔法使い・錬金術師を集めて対策を検討させます」
ホイスはそう言って足早に部屋を出ていった。
リュー 「では、俺も失礼させてもらおう」
退室したリュー。
だが、後ろからヴェラが追ってきた。
ヴェラ 「大魔道士様、どうか、どうかお願いします」
リュー 「だから魔道士じゃないから。俺は、魔法ほとんど使えないんだ」
ヴェラ 「え? でも、呪いを解いたり、レイスを倒したり、されてたじゃないですか?」
リュー 「うーん、解除はできても、魔法を使う事はできない、みたいな? 生活魔法程度は使えるけどね」
ヴェラ 「それでも凄いです。むしろ、アンデッド相手にはそれこそ大きな武器になるのではないでしょうか?」
リュー 「どうかね。とりあえず、アンデッドのダンジョンというのに少し潜ってみようかなと思っている」
ヴェラ 「攻略ですか?」
リュー 「いや、攻略じゃなく、様子見で。浅い階層をちょっと覗くだけ……」
ヴェラ 「そ、そうですか……では、私も同行させて頂いてもいいですか?」
リュー 「君が? 君は文官じゃないのかい?」
ヴェラ 「いえ、私はこれでも冒険者です。近年はエミリア様の手伝いでほとんど活動していませんが。私は光魔法が使えるので、アンデッドが多いダンジョンでは役に立ちますよ」
リュー 「そ、そうなんだ。
……
……?
え? このままついて来るの? お嬢様は放っておいていいの?」
ヴェラ 「はい、お嬢様の事はメイド達に頼んでありますから。もう目も見えるようになったので、自分でも動けるでしょうしね。
先程お嬢様からも、リュージーン様のサポートをするようにと言い付かって来ましたので」
リュー 「そうなんだ……じゃぁ、とりあえず、この街の冒険者ギルドに案内してもらうかな、それから宿……いや、どこか泊まってもいい空き地とかあるとありがたいのだけど」
・
・
・
― ― ― ― ― ― ―
ヴェラの案内でロンダリアの冒険者ギルドにやって来たリュー。
ドアを開けると、いつもと変わらぬ冒険者ギルドの雰囲気……はなく、なんだか薄暗く、活気のない辛気臭いギルドであった……。
受付嬢 「…………いらっしゃい……冒険者ギルドへ……何の用ですか……?」
冒険者ギルド受付嬢の定番セリフすら、なんだか辛気臭い……
リュー 「いや……依頼を達成したので、その報告をしたいのだが」
受付嬢 「依頼……? あなたに依頼を出した覚えはないのですが……失礼ですが?」
リュー 「ああ、俺はリュージーン、バイマークのギルドで指名依頼を受けてこの街に来たんだ。バイマークのギルドに依頼は達成したと連絡を入れておいてもらえるかと思ってな」
受付嬢 「そうですか……
リュー 「ああ、そうだったな」
リュー (なんだか調子が狂うな)
受付嬢 「……一応、連絡は…とってみますが……実は…連絡用の魔道具の調子が悪いので……」
リュー 「そ、そうなんだ、じゃぁ、やっぱいいや、後で自分で報告しておくから。
じゃぁ、不死王城に潜ってみたいんだが、何か丁度良い依頼はあるかな?」
受付嬢は黙って依頼の貼ってある掲示板を指差した。
リューは手を上げて、依頼ボードの前に移動する。
だが、ちらほらと薬草採りの依頼があるだけで、ボードに貼られている依頼は少なく、ダンジョンに潜る必要がある依頼もほとんどなかった。
どの街にもある常設依頼のゴブリンやオークの討伐依頼もなく、代わりにレイスやスケルトンの退治が常設依頼になっていた。
掲示板を眺めていたら、ヴェラが説明してくれた。
ヴェラ 「不死王城の影響で、この街の周辺にはアンデッド系ばかりで、ゴブリンなどの普通の?魔物はほとんど出ないのです。それと、ダンジョン内もアンデッドばかりなので、採れる素材が少なく……この街は儲からないので冒険者の数も少ないのです。。。」
リュー 「受けられる依頼がないならないで別にいい、適当にぶらついて帰ってくるさ。ダンジョンには入場制限はないんだろう?」
そこに、一人の男が近づいてきた。
男 「ダンジョンを散歩コースと間違ってると命を落とすぞ? 見ねぇ顔だな、他の街から流れてきた冒険者か? いや、お前、一昨日不死王城の近くを彷徨いてた奴じゃないか?」
リュー 「ああ、あの時の……」
男 「レイスに手こずってたようだったが、ダンジョンに潜る気か? ランクは? F? プッ、その程度のランクでダンジョンに行くつもり? やめとけヤメトケ、死ぬだけだ。あそこのダンジョンは手強いんだ。スケルトンはゴブリンなんぞとは比べ物にならんほど強いんだぞ?」
リュー 「スケルトンとは戦った事がないんでな、ちょっと勉強のために潜ってみたいんだ」
男 「ああ? アンデッド系と戦った事がないのか。お前聖属性魔法は使えるのか? ダメ? じゃぁ炎系は? それも使えねぇ? そんなんじゃ話にならん、帰れ帰れ」
男は手をひらひらと振る。
リュー 「別にダンジョンに入場制限はないんだろう?」
男 「制限はあるよ、俺がダメだって言ったらダメだ」
リュー 「お前は?」
男 「俺様はチェリー様だよ、Dランク冒険者だ。この町ではベテランだ、覚えておけ」
ヴェラ 「久しぶりですね、チェリーさん」
チェリー 「って、お前、ヴェラじゃねぇか、久しぶりだな! お屋敷に勤めてたんじゃなかったのか? また冒険者に戻るのか?」
ヴェラ 「いえ、そういうわけではありません。こちらのリュージーンさんをダンジョンに案内しろと領主様に命じられてまして」
チェリー 「領主様の? 命令? だったらなおさらダメだな。こんな弱そうなFランク冒険者をダンジョンに行かせたら簡単に死んじまう。領主様の客を死なせるわけにもいかんだろう」
リュー 「お前にそんな権限はないだろ? ダメと言われても勝手に潜らせてもらうさ」
チェリー 「ふん、生意気だな。いいだろう、じゃぁ俺様がテストしてやる、お前がダンジョンに潜れる実力があるかどうかな」
リュー 「ふうん…? 構わんよ、受けて立とう。模擬戦か?」
― ― ― ― ― ― ―
次回予告
Fランク冒険者ごときが不死王城に挑戦するのは無謀だ、やめときな!
乞うご期待!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます