第173話 ロンダリアの街で一泊したら騎士に囲まれた

冒険者 「……もしかしてお前、光魔法が使えるとか?」

 

リュー 「いや、使えない、基本、物理だけだ」

 

冒険者 「じゃぁ手も足も出ねぇだろうが」

 

リュー 「まぁ、なんとかなるだろ」

 

冒険者 「見たところ旅の冒険者って感じだが、この辺のアンデッドを舐めてると死ぬぞ?」

 

リュー 「まぁ、放っておいてくれていいよ、大丈夫だ」

 

冒険者 「そうかい、じゃぁ勝手にしな! 自殺志願者なら助けるんじゃなかったぜ!」

 

その冒険者はそう言い捨てると馬に乗って走り去っていった。

 

改めてレイスに向き合うリュー。まだ三体のレイスは遠巻きにリューを見ている。

 

確かに物理攻撃は通用しないようだが、まだ他にも手はある。

 

確かにリューは魔法を使えない。(正確には、時空系魔法と神眼も魔法の一種なのではあるが。)他にも、生活魔法(水を出したり焚き火に着火する火種を出したりという程度)はリューも使えるのだが、攻撃的に使えるような強力な魔法は使えない。

 

だが、亜空間収納の中に以前攻撃を受けた時に収納してあった攻撃魔法があるのを思い出した。

 

レイスには炎系の魔法が効くというので、試してみる事にした。

 

魔法が収められていた収納空間の出口をレイスに向けて開放する。すると、無数の炎の矢ファイアーアローが飛び出した。

 

それを受けたレイスは驚き、苦しみ始めた。効果が薄いと言っても、数が多ければそれなりに効くようだ。レイスに刺さった炎矢は数百にも及んだため、それを受けたレイスは叫びながら消えてしまったのであった。

 

一体が倒されたのを見て、レイスの残り二体は慌てて逃げ去ってしまった。

 

他にも色々試してみたい事があったのだが―――次元障壁が越えられないと言う事は、次元斬なら斬れるのでは? とか、転移は使えるのか? とか―――逃げられてしまったのは仕方がない。

 

次元障壁が越えられないのであれば、次元障壁の壁で囲って捕らえておけば良かったと思うが後の祭りである。まぁ、また遭遇する機会もあるだろうと、リューは先を急ぐことにした。

 

リューは魔力の流れを再び神眼で確認する。魔力はどうやら山中に見える古城から出ているが、その行く先を辿っていくと、街があるのを発見したのであった。

  

 

   *  *  *  *

 

 

街についてみると、かなり立派な城壁がある城郭都市であった。安全な地域であれば簡易な柵しかないような村もあるのだが、これだけ立派な城壁があるということは、この周辺には危険な魔獣が出ると言う事なのだろう。

 

街は薄暗く、霧に包まれ陰気な雰囲気の街であった。

 

街の城門は閉じられており、その前に門兵が居た。リューは馬を居りて門兵に近づき、入場の許可を尋ねるが、門兵は黙ったまま訝しげな視線を送るだけで答えない。

 

リュー 「……?」

 

門兵 「……身分証……」

 

リューは身分証ギルドカードを提示する。

 

それをしばらく眺めていた門番であったが、無言でカードを返し門を開けてくれた。

 

門を入る時、門番に街の名前を尋ねてみた。

 

門番 「……ロンダリア……」

 

ここが目的の街、ロンダリアであった。

 

とすると、先ほど見えた古城が、アンデッドの出るダンジョン「不死王城」で間違いないだろう。

 

城内に入るリュー。

 

街の中は静かであった。霧が立ち込め薄暗く、行き交う人もほとんど居ない。なんだか暗い雰囲気の街である。

 

リューは宿の場所なども門番に尋ねたかったのだが、振り返ったら門番は姿が見えなくなってしまっていた。仕方がないので街に入って別の人間に聞くしかない。街の中に入っていった。

 

神眼にはまだ謎の魔力は感知され続けている。それは、微弱ではあるが、確かなものとなっていた。続く先は、街の中央に向かう方向である。

 

リューはそちらに進んでみると、街の中央にある屋敷の中からそれが出ている事が分かった。屋敷というよりは小さめの城である。

 

おそらくあれが領主マガリエル家の屋敷なのだろうが、もう夕方も遅い時間であったので、尋ねるのは翌日で良いだろうと判断し、リューは宿屋を探す事にした。

 

しかし、それにしても人がほとんど居ない街である、なんなのであろうか。

 

最悪、どこか適当な場所に小屋を出してしまえばよいかと思っていたら、街の中に小さな宿らしきものを発見したので、そこに入ってみたのであった。

 

だが、部屋はあるかと聞いてみたが「ない」と一言言われて終わりであった。

 

一応、ここは宿屋だよね? と尋ねてみると、「そうだ」と言う。満室という事なのだろうと理解して、リューは宿を出た。

 

どうも、この街の人間は、街全体の雰囲気同様、みな陰気で無愛想である。何か理由があるのだろうか?

 

とりあえず、そろそろ日が暮れる。野宿でも構わないが、いつもの小屋を出せる場所はみつけたい。街の外に出ようかと思って歩いていたところ、ちょうどよさげな空き地を見つけたので、そこに泊まらせてもらう事にした。翌朝早くに引き払ってしまえば問題ないだろう。

 

いつものように小屋を設置して中にで寝るリュー。もちろん小屋の周囲には次元障壁を張ってある。

 

だが、翌朝、リューが起きてみると、小屋の外が騒がしい。気配からすると、どうやら取り囲まれているようだ。

 

やや寝坊してしまったか、すぐに撤収しないとやっかいな事になるかも知れない。いっそ小屋ごと街の外にでも転移してしまうか? それは反って騒ぎになるか? などと考えていたところ、小屋の扉を激しく叩く者が居た。

 

仕方なくドアを開けてみる事にしたリュー。(基本的には冒険者は即座に戦闘に入れるような服装で寝ている。町中であればそこまでしない冒険者も多いが、見知らぬ街で勝手に小屋を出して泊まってしまっているのでリューも外出用の服装のままであった。寝汗もかくが、クリーンの魔法を使えば清潔に保てるので、この世界では何日も同じ服であってもあまり洗濯や着替えは重視されない。)

 

扉を開けて小屋を出てみると、小屋の周りをぐるりと、剣に軽装だが鎧を纏った騎士に囲まれていた。

 

リュー (やっぱ勝手に空き地に泊まっちゃ拙かったかな?)

 

 

― ― ― ― ― ― ―


次回予告


領主の元に連行される?


乞うご期待!



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