第169話 無茶修行に出てしまったレオアナ

翌日、レオノアとアナは先輩冒険者達とギルドの研修場で模擬戦を行う事になった。

 

実は、酒の席での売り言葉に買い言葉だったのはお互いに認めて謝罪したのだが……

 

それはそれとして、魔力による身体強化技術で簡単に強くなれると言われても納得できない先輩達は、その強さを確認したかったのである。

 

また、レオノアとアナも、身体強化によって自分達がどれだけ強くなったのか試してみたいと思っていたのだ。

 

さらにギルドも、身体強化技術の研究の一貫としてこの勝負に興味を示したのである。

 

研修生達も興味津々で見守っている。研修生には魔法職志望者も僅かずつではあるが増えている。その者達は現在、魔力による身体強化法を教わっているのである。

 

(今回はあくまで、身体強化でどこまで戦えるかという検証なので、身体強化を使ってないリューは出る幕がなかった。)

 

試合はアナとバッジ、レオノアとサップがそれぞれ行う事になった。

 

各々木剣を取り、試合が始まる。

 

バッジとサップはDランク、バイマークでのDランクなので、他の街ならCかBを与えられてもおかしくはない実力者である。それに対し、魔法使いマジシャン回復職ヒーラーが剣で戦うと言うのであるから、これまでの常識から考えれば、戦闘職の二人の圧勝で終わるはずである。だが……

 

…二人の少女は先輩冒険者達と剣で互角に渡り合って見せた。

 

観戦者ギャラリーから驚きの声が上がる。

 

サップ 「ふん、気に入らねぇ!」

 

バッジ 「驚いた、確かに中々の身体能力だな……」

 

だが、最初は様子見であったバッジとサップが本気を出し始める。

 

そして、押され始めるレオアナ。

 

そもそも、レオノアとアナは身体能力が高まっているとは言え、剣は素人に近いのである。長い間剣技を磨いていた者の技術と工夫に適うわけがなく……

 

結局、最後は先輩たちの圧勝に終わったのであった。

 

バッジ 「いや、やるもんだな。思わず本気になっちまった」

 

サップ 「ふん、これに懲りたら生意気言わねぇこった」

 

見ていた者達は魔法職なのに凄いと騒ぎ立てていたが……レオノアはガックリ落ち込んでいた。負けるにしても、もうちょっと通用すると思っていたのであった。

 

レオノア 「悔しい……」

 

アナ 「仕方ないわ、剣の修行に関しては、私達はまだまだ素人同然だもの」

 

そこにバッジがやって来て声を掛けた。

 

バッジ 「その素人同然に本気を出させられてしまったんだ、大したもんよ。このまま修行を続けていけば、立派な剣士になれるだろうさ。魔法使いを辞めて剣士を目指したい気持ちはよく分かった。なんならこれからは時間のある時に剣の練習も俺たちが見てやろう!」

 

アナ 「…え? 私達は別に剣士になりたいわけじゃないんですけ…」

 

レオノア 「結構よ! 世話にはならない。私達は魔力強化だけで貴方達に勝ってみせるわ、見てなさい!」

 

ピシッと指差すレオノアに、やれやれと肩をすくめるバッジであった。

 

 

   *  *  *  *

 

 

レオノア 「修行するわよ!」

 

敗戦がよほど悔しかったのか、レオノアはさらなる鍛錬という方向に向かってしまったのだった。

と言っても先輩に教わるのは癪である。それに、剣の技術ではなく、身体強化の力で勝ちたいのだ。

 

そこで、レオノアなりに知恵を絞った結果、街を出て、魔物相手に戦闘を繰り返す事で練度を上げようと言う結論になったのだった。

 

アナ 「レオノア……実はすごい負けず嫌いだったのね……」

 

そう言えば、バイマークの研修は諦めて他の街で冒険者になろうとアナが言ったときも、レオノアは悔しいからと言って研修続行を主張したのだった。

 

アナはレオノアを放っておけず、仕方なくレオノアの武者修行についていった。

 

(リューは……これはパーティとしてクエストを受けたわけではなく、自分達の我が侭による武者修行なので巻き込むのは悪いとレオノアは誘わなかったのであった。)

 

そんな時、ギルドに緊急クエストが発令された。それは、かなり大規模なオークの集落が出来上がっているという目撃情報であった。

 

 

 

 

スタンピードがあった時、浅層の魔物はほとんどが人間の街=バイマークに向かったのだが、その時、バイマークとは違う方向、森の奥へと向かったオークの一団が居たのである。そのオーク達が、森の奥で集落を作り、繁殖して数を増やしていたらしい。その数、少なく見積もっても五百匹以上……

 

そして、数を揃えたオーク軍団が、人間の街を襲撃すべく街に向かって移動を開始していたのである。

 

運が悪い事に、森の中で武者修行をしているレオノアとアナは、そのオーク軍団と遭遇してしまったのであった。

 

 

 

 

レオノア 「良い修行になるわ」

 

最初は嬉々としてオークに向かっていったレオノアであった。

 

しかし、段々、様子がおかしい事に気付いた。斬っても斬ってもオークが次から次へとわいて来るのである……

 

二人が使っている安物の武器は、数多くの魔物を斬り続けてきたために、既に鈍って斬れなくなってしまっていた。

 

アナ 「はぁっ、はぁっ、これはっ……スタンピード?」

 

レオノア 「はぁっ、はぁっ、違う、と思う……オークしか居ないもの」

 

徐々に疲労が溜まり、息が上がっているレオノアとアナ。魔力による身体能力向上が切れ始めているのである。

 

物理戦闘特化の冒険者に比べれば魔力が多い二人であったが、無限に魔力があるわけではないのである。そして、魔力が切れれば身体強化も失われてしまう。その前に……

 

レオノア 「数が多すぎる、魔法で一気に殲滅するわ!」

 

肉弾戦だけでなく魔法も使える、これは魔法職の剣士の大きなアドバンテージである。

 

レオノアは、魔法を使うため、身体強化を解除したのであった……

 

 

― ― ― ― ― ― ―

 

次回予告

 

身体強化の欠点

 

乞うご期待!

 

 

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