第168話 魔法職辞めますか?
リュー 「…お前達、魔法職辞めて戦士に転職するつもりなのか?」
アナ 「いえ、そういうわけじゃないんですけど……」
アナスタシアとレオノアとパーティを組んだリューは、早速翌日から
ダンジョンからは、リューが魔物が外に出る事を禁止したが、スタンピードで魔物が溢れ出してしまったため、まだまだたくさんの魔物が彷徨いていたのである。これは気長に気長にコツコツと駆除していくしかないであろう。
特に、繁殖力が強いゴブリンやオークは既にかなり増えているようで、駆逐しても駆逐してもなかなか減らない。これらの討伐は常設依頼として低ランクの冒険者達の定番となるのはどこの街も同じである。
一般の街に比べると周辺にいる魔物の数がやや多いのだが、日頃から街間の移動には護衛が必須な状況だったのは同じなので、特に大きな変化があるわけでもない。
また、領主から領内の各都市の冒険者ギルドに、動ける冒険者はバイマーク周辺の魔物の討伐に協力してくれるよう指示が出された。ワイラゴの入場制限が解除された事もあり、これまでバイマークを敬遠していた冒険者達も気分を変えて新しい街、新しいダンジョンに挑んでみようかと思うようで、バイマークの街には冒険者が徐々に集まって来ていた。
さて、常設依頼を受けたリュー達であるが……
アナは治癒・支援魔法が得意な
つまり、前衛はリューが担い、後方からアナとレオノアが援護する形になるはずである。
リュー 「レオアナ二人は下がって援護を!」
当然リューもそのつもりで、数体のゴブリンに遭遇したところで剣を抜き構えたのだが……
なぜか二人は耳を貸さず、奇声をあげながら率先してゴブリンに襲いかかって行ってしまったのだった。
嬉々としてゴブリンを蹂躙したレオノアとアナ……
目が点になるリュー。
アナとレオノアは、魔力を使って身体能力を補強する技を身につけ、高い物理攻撃能力、近接戦闘能力を発揮できるようになっていた。二人はゴブリン程度であれば余裕で殲滅できる実力は既に持っていたのである。二人はそれが楽しくて、魔法ではなく肉弾戦を繰り返すようになっていたのであった……(そもそも二人が杖ではなく剣や槍を装備していた時点で何かおかしかった事にリューは気づくべきであった……。)
研修卒業後、魔法職らしからず、剣や槍を振り回して物理戦闘で魔物を倒し続けていた二人であったが、しかし、敵の数が多かったり強敵に遭遇した場合には苦戦する事もあろう。そのため、もう一人仲間を増やしたいと思い、Fランクではあるが実力は確かで、かつソロで活動していたリューに声をかけたのであった。
結局、初依頼はアナとレオノアが率先して物理戦闘を行い、リューがフォローに回る形に終始してしまった。と言っても、たまに打ち漏らした魔物を始末する程度で、リューにはほとんど出番はなかったのであった……。
十分過ぎる成果を得たリュー達はギルドに戻ってきて報告を済ませたあと、酒場に移動して初クエスト達成の祝杯をあげていた。
そこでリューは、二人に役割転向する気なのか尋ねたのである。
だが、二人はあくまでマジシャンとヒーラーであり、それを辞める事までは考えていないそうであった。ただ、今は苦手だったはずの物理攻防で無双できるのが楽しくてつい……、と言う事らしい。
やがて二人は魔法職がどこまで近接物理戦で戦えるのかを試したい気持ちも持ち始めていたようである。
レオノア 「はっきり言って、魔法職の人間が魔力による身体強化を覚えたら、戦士職の人間より強くなれるんじゃない? 魔力の量も扱いも魔法職の人間のほうが上なんだから……」
アナ 「そうね、このまま身体強化を極めて行けば、最強の剣士にもなれてしまいそう、これまでそんな事考えた事もなかったけど」(笑うアナ)
レオノア 「現時点で、先輩の冒険者よりアタシ達のほうが強いかもよー?」(笑)
調子に乗ってそんな事を大声で言っていた二人に、周囲で飲んでいた冒険者が絡んできた。
冒険者 「ふん、魔法職の奴が剣士より強いとか、笑わせるなよ?」
声を掛けてきたのは、近くの席で飲んでいた先輩冒険者のバッジであった。バッジは物理特化の剣士職のDランク冒険者である。
バッジ 「よく見りゃ先日研修を卒業したばかりのヒヨッコ共じゃねぇか……。
まぁ、あの研修を卒業できたって事はそれなりに自信を持つのも分からんでもねぇが」
だが、バッジの仲間のサップが言う。
サップ 「いや、バッジよ、研修の内容が見直されて、卒業は簡単になったらしい。前みたいに厳しくなくなったそうだから、今後の卒業生の実力は推して知るべきってところだろうよ」
バッジ 「それじゃぁなおさらだ、ちょっと強くなったからって調子にのってるとすぐ命を落とす事になるぞ?」
レオノア 「ちょっと、なんなの? 先輩だからって、後輩を舐めてると痛い目見るかもよ? 実際そういう事もあったしぃ」(笑)
アナ 「ちょっと、もしかしてレオノア酔ってる?」(焦)
レオノア 「酔ってないわよぉ。
…アタシ達には身体強化って武器があるんですからね、魔法が得意な魔法使いが身体強化に魔力を使ってるんだから、普通の剣士より強いのは当然でしょう?」
バッジ 「身体強化って、最近ギルドで研究が始まったっていう技術か?」
レオノア 「そうよ、それを編み出したのがアタシ達なのよ」
サップ 「ふん、気に入らねぇ。新技術だか何だかしらねぇが、今更魔法使いが物理でも強いとか言い出しやがって。これまで散々物理攻撃特化の指導をすすめてきたのはギルドじゃねぇか。それに今後は魔法職もパーティに加える方向に指導を変えたとか? 今更掌返しかよ!」
バッジ 「なるほど、俺たちは厳しい訓練をさせられたのに、そんなの意味なかった、今後は必要ないと言われりゃ確かに腹も立つな」
アナ 「あの、私達の時はまだ研修内容は以前のまま、むしろ以前より厳しいくらいだったんですよ?」
レオノア 「そうだぞぉ、アタシ達はその厳しい訓練を身体強化で乗り切ったんだ! はっきり言って、あんたらより物理戦闘能力だって上よ、上!」
サップ 「面白ぇ、そうまで言われてこちらも引き下がれねぇ! 勝負しろ! 俺たちがこれまで必死で身につけてきた実力が役に立たねぇクズかどうか、勝負だ!」
アナ 「いや、そこまでは言ってないんですけど……」
レオノア 「そうだ、お前らなんてクズだよ~クズ!」
アナ 「ちょっと! レオノア、あなたやっぱり酔ってるでしょ?!」
トイレに行くため席を立っていたリューが戻ってきたところ、先輩冒険者と勝負する話が決まっていたのだった……
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次回予告
レオアナ、先輩冒険者達と勝負!
乞うご期待!
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