第68話 王女と決闘?
訓練用にストックされている木剣を握るソフィを慌ててマリーが止める。
立つのもやっとのベティも縋るようにソフィを止めようとする。
ベティ 「アリス、何をしてるの、ソフィ様を止めて」
これまで黙って動かなかったアリスもソフィの前を塞ぐように移動した。
アリス 「なりません、ソフィ様が冒険者と決闘など。」
キャサリン 「いや、決闘じゃなくて模擬戦なんだけどね?」
ベティ 「こ、こんな怪しげな冒険者とソフィ様を立ち合わせる訳にはいきません! 怪我でもしたらどうするんですか!」
キャサリン 「王女に怪我なんかさせたら、いくらポーションで治ると言っても、やっぱ大問題になるかしらね……? やっぱ止めたほうがいいかしら?」
だが、先程からキャサリンの言葉はメイド達には一切聞こえていないようだった。
マリー 「姫様、どうか自重なさってください。」
ソフィ 「何を言っておる、ただの訓練じゃろ? 最初からギルドマスターもそう言っておったじゃろ、パーティとしての親睦を深める意味もあると。ならば、妾がやらなくてどうする?」
キャサリン 「ああ、良かった、姫様はちゃんと聞いててくれてた…」
キャサリンがちょっと嬉しそうな顔をするが、だからと言って事態は何も変わりはしない。なりませぬ、なりませぬと通したくないメイド達と出たがるソフィが揉み合っている。
「ああ、じゃぁどうだ、リューは一切攻撃しない。一発でもリューに攻撃が当たったら王女様の勝ち、逃げ切ったらリューの勝ちって事にしたら?」
突然そんな事を言い出した者が居た。
この場に居なかったはずの剣聖レイナードであった。
リュー 「レイナードが急に湧いてきた。」
レイナード 「俺は虫か。なんか面白そうな事やってると聞いて覗きに来ただけだ。」
ソフィ 「そなたは、剣聖レイナードじゃな? 憶えておるか、子供の頃、会った事があるが。」
レイナード 「お久しぶりです、ソフィ王女。」
ソフィ 「確か、怪我をして引退したと聞いたが?」
レイナード 「怪我はリューに治してもらいました。」
ソフィ 「レイナードとリュージーンは知り合いだったか。」
リュー 「レイナードに剣を教わっている。」
ソフィ 「なるほど、リューは剣聖の弟子か! どうりで強いわけじゃのう。」
レイナード 「いや、大した事は何も教えていないさ。剣の振り方は素人並だったんで多少教えたが。それ以前に、コイツは最初から俺より強かったんだよ。」
ニヤッと笑うレイナード。
リュー 「言ったろう、剣は得意ではないと。」
リューはレイナードに向かって言う。
リュー 「どうだった、見てたんだろう? 大分マシになったと思うが?」
レイナード 「前よりは良くなったが、まだまだだな。」
肩を竦めるリュー。
実は見違えるほど良くなっているのだが、なんとなく悔しくて素直に褒めなかった意外と負けず嫌いのレイナードは、慢心させないためと心の中で自分に言い訳するのであった。
リュー 「しかし、俺からは一切反撃しないという条件では俺が不利過ぎるだろう。」
レイナード 「なら、時間制限を設けたらどうだ?」
リュー 「では3分間という事で。ボクシングも1ラウンド3分だしな。」
レイナード 「ぼくしんぐ?」
リュー 「いや、なんでもない。」
それならと、渋々引き下がるマリーとベティ。
だが、アリスはソフィの前に立ちふさがったまま、退く気配がない。どうしてもソフィを戦わせたくないようだ。
レイナード 「じゃぁ、その嬢ちゃんも一緒でどうだ? 2対1でもリューなら行けるだろ?」
リュー 「どんどん俺の条件が悪くなっていくな…比して俺にメリットがほとんどないんだが、この模擬戦は?」
リューはキャサリンのほうを見ながらぼやくが、目を逸らすキャサリン。
リューも最近、いい加減、この女は自分に甘えすぎなところがあると感じ始めていた。一度締めたほうがいいんじゃなかろうか、とりあえず、後で小一時間詰めてやろうと思うリューであった。
レイナード 「これも勉強だよ、剣の腕も戦闘経験を重ねるほど上がるってものだ。」
リュー 「まぁ……いいけどね……」
やる気になったのか、アリスがリューのほうに向き直った。
アリス 「ソフィ様に傷一つでもつけたら絶対に許しませんよ?」
リュー 「俺から攻撃はしないよ、だが自爆までは責任持てんから気をつけてくれ。」
そうして、ソフィ・アリス対リューの親善模擬戦? が行われる事になったのだった。
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次回予告
ソフィとアリスと2対1対決!
乞うご期待!
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