第47話 復活の剣聖
レイナード 「さぁ、打ってこい。俺も少し本気で反撃させてもらうが。なに安心しろ、手加減はする。」
リューは普通に振りかぶって、レイナードに打ちかかった。
リューは、剣の技術が高いわけではない。むしろ、剣技や格闘技は素人である。
ただ、身体能力が高いので、剣を振る技量が拙くとも、普通に振っただけでとんでもないスピードの斬撃になってしまうのだが。
そこで、手加減して、ごく軽く打ち込んで見る事にしたリューであったが……
一歩踏み込んだところで、リューは踏みとどまり、剣を止めた。
打ち込んだ瞬間にリューのほうが打たれるのを予知したからである。リューの危険予知能力である。
レイナード 「ほう?先を読んだか。噂通り、やるな。」
リューが剣を振り上げるのとほぼ同時に、レイナードも剣を振り上げていた。このまま行けば相打ちというタイミングに見えるのだが……
リューの予知能力では、リューの剣だけが外れ、リューの額にレイナードの剣がめり込んでいる結果が見えていたのだ。
少し興味が出てきたリューは、今度は止めずに打ち込んでみる事にした。打たれても次元障壁を張っておけば問題ないだろう。
再び打ち込んでいくリュー。レイナードもそれに合わせて同じように剣を振り下ろしてくる。
剣が交錯した瞬間、リューの剣がレイナードの剣に弾かれる。リューの剣は軌道が逸れてレイナードの脇に、しかし、弾いたレイナードの剣はそのままリューの額へと吸い込まれるように向かっていく。
レイナードはリューの額の数ミリ手前で剣を止めて見せた。バリアを張っているのでリューは打たれても問題はなかったのだが。
周囲から見れば、ただリューが剣をレイナードの脇に振り下ろし、レイナードがリューの額の前で寸止めしただけにしか見えなかったかもしれない。
だが実際は、レイナードの剣筋は弧を描いており、相手の打ち込みを弾きながら、なおかつ自分の剣が相手に当たる軌道に持っていったのだ。レイナードの極意技のひとつである、絶妙な剣技であった。
リューは妙技に目を輝かせた。
リュー 「・・・凄い!」
だが、レイナードは少し不満そうに言った。
レイナード 「お前はまったく本気を出していないようだったがな?」
リューは、剣の腕は素人であるが、実は、真面目に剣を勉強してみたいと以前から思っていた。
前世の日本でも、剣道に興味があったのだが、結局、機会がないまま終わってしまった。
今、目の前には、かつて剣聖と言われた剣士、レイナードが居る。おそらくこの人物は、今の技以外に、たくさんの神業を持っているに違いない。
リューはその気になれば空間魔法で相手を葬ってしまえるので、戦闘能力としてはそれで十分なのかもしれないが、純粋に趣味として、剣に興味があったのをリューは思い出したのであった。
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その日の夕方、リューはレイナードを尋ね、一緒に訓練場に来てもらった。
弟子入りさせてくれと言うつもりはない。ただ、レイナードの持つ剣技をもっと見てみたかったのだ。
もちろん、片足義足で杖をついているレイナードに現役時代のような動きはもうできないだろう。
だが、もし、足が治ったとしたら・・・?
そのために、リューは誰も居ない訓練場にレイナードを呼び出したのである。
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リュー 「わざわざお呼びだてして申し訳ありません。」
レイナード 「いや、構わんよ、私も君とは話してみたいと思っていた。」
リュー 「素晴らしい剣技でした、さすが剣聖。」
レイナード 「それは昔の話さ。今はただの案山子のレイナードだ。」
レイナードは義足の片足を持ち上げて自嘲気味におどけてみせた。
リュー 「その足が治るとしたらどうですか?」
レイナード 「?!」
この世界には、手足の欠損さえも治す高級なポーションや高度な治癒魔法があるという。
もちろん、それはレイナードも知っていた。だが、そのような治療を受けるには、国家予算レベルの治療費が必要なのだ。
かつては剣聖と呼ばれるほどの実力者であったとしても、既に老いて衰えを見せ始めていたレイナード、しかも、怪我をした時には国の仕事から離れ冒険者をしていたレイナードに、国がそのような治療費を持ってくれるはずもなかった。
残念ながら、レイナード自身にも金は用意できず、引退するしかなかったのであった。
レイナード 「君は、欠損を治すほどの治癒魔法が使えるのか?!」
リュー 「あんたさえ良ければ。」
レイナード 「もし治るというのなら、それはありがたい話だが……」
それを聞き、リューは手をかざし魔法を発動する。
レイナードの体が輝き、義足がはずれて落ちた。
数十秒後には、欠損したはずのレイナードの足が復活していた。
レイナード 「おおおお!?これは!?」
足だけではない、体も元気になっている。レイナードの顔も若返っていた。
リューの治療魔法は、実は治癒魔法ではない。時空魔法を使って、健康だった時代まで時間を戻しているのである。つまり、足だけでなく、肉体も足を失った時点まで若返っているのである。
義足に履かせていた靴を脱がせて久々に戻った自分の足に履かせたレイナードは、地面をどんどんと踏み鳴らしたり、歩いたり、走ったりして体の具合を確かめた。
ひとしきり確認すると、レイナードはリューのところに走ってきて手を握った。
レイナード 「素晴らしい、ありがとう、ありがとう!!」
だが、一瞬後、冷静になった顔でレイナードが言った。
レイナード 「治してもらったのはありがたいのだが、私には治療費を払うことができない。」
リュー 「別に金はいらない。あなたの全力の剣技が見たかっただけだ。」
レイナード 「おお、そうか、そうだった。私の剣技でよければ、お礼にすべて君に伝授しよう!」
リュー 「弟子にしてくれと言うつもりはない。ただ、一度手合わせしてみませんか?」
レイナードはその申し出に一瞬驚いた顔をしたが、すぐに獰猛な笑みを浮かべ、木剣を構えた。
レイナード 「望むところだ。私も君と戦ってみたいと思っていた。」
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次回予告
剣聖の予想外の強さに敗北するリュー?!
乞うご期待!
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