第39話 冒険者ギルドからの謝罪

教会に到着すると、警備兵を引き連れたボルトが「リューを出せ」と騒いでいるところだった。

 

リュー 「何か用か?」

 

警備兵 「貴様がリューか! おい、逮捕しろ!」

 

リューを取り囲み槍を向ける警備兵達。

 

リュー 「逮捕?一体何の罪でだ?」

 

警備兵 「昨日、お前が暴行・恐喝を行っていた件だ。この先の路地で、通行人から“通行料”と称して金を巻き上げていただろう?挙句の果てに、それを止めに入った四人の男に暴行を働いたな?」

 

昨日捕まっていたチンピラ達に話を聞いて、逆に俺に罪を擦り付け、四夜蝶に恩でも売るつもりで来たのであろうか。

 

リュー 「何を言っているのか分からんな、話がすべて逆だ、俺は恐喝をしていた四人組を懲らしめただけだが?」

 

ボルト 「そんな嘘に騙されはせんぞ。」

 

リュー 「大体、お前はもう指名手配されているはずだぞ。犯罪組織から賄賂を貰っていた罪でな。今頃第三警備隊がお前を逮捕に向かっている頃だろ。」

 

ボルト 「な、何をワケの分からない事を! 騙されはせんぞ! 何をしている! さっさと捕らえろ!!」

 

だが、次の瞬間には、リューを取り囲んでいた警備兵は全員意識を失って崩れ落ちていった。リューの頸動脈ブロックである。

 

命じられてやっているだけの兵士達を殺すのも可哀想なので、血流はすぐに解除してやった。意識を取り戻した兵士は、何が起きたか分からず、ボルトにせっつかれ再びリューを捕らえようとすると、また意識が遠くなってしまうので、そのうち隊員たちも諦めて、動くものは居なくなった。

 

「ええい何をしている!  役に立たん連中だな、こうなったら俺が成敗してくれる!!」

 

ボルトが剣を抜いて斬りかかってきた。

 

だが一歩踏み込んだ足に力は入らず、そのまま崩れ落ちて行くボルト。ボルトもまた、頸動脈の血流を止められて意識を失っていったのである。

 

ちょうどそこに、ゴラン達、第三警備隊が駆けつけてきた。

 

リューは教会に向かう前、ダグにゴランを呼んできてくれるように頼み、ダグを第三警備隊の詰め所に転移させておいたのだ。

 

すぐに血流ブロックを解除され意識を取り戻したボルトは、ゴラン達を見ると叫んだ。

 

ボルト 「何をしに来た、ここは管轄外だろうが! だがまぁ丁度いい、コイツを逮捕しろ!」

 

ゴラン 「いや、逮捕されるのはお前だよ、ボルト。」

 

ボルト 「何?!」

 

ゴラン 「四夜蝶のボスがすべて白状したぞ。警備隊の隊長が犯罪組織と癒着するなど言語道断!!」

 

第三警備隊の隊員達がボルトを取り囲む。


ボルト 「コイツラも犯罪者とグルに違いない! お前達、コイツラを捕らえろ!」

 

ボルトが第一警備隊の達に声を掛けるが、隊員達は戸惑って動かない。そこに、ゴランが一枚の羊皮紙を隊員たちに見えるように広げた。

 

ゴラン 「これは、領主からの正式なボルトの逮捕状である!抵抗する者は全員犯罪者と見做して逮捕する事になるぞ!」

 

隊員たちは誰も動こうとしなかった。

 

ボルト 「ちぃぃぃぃっ!!」

 

ボルトは剣を抜き抵抗する姿勢を見せる。往生際が悪い男である。取り押さえる隊員達が怪我をしても可哀想なので、リューは再びボルトの意識を奪ってやったのだった。


無事、意識を失って倒れたボルトは捕縛され、連行されていった。

 

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後日、ボルトと四夜蝶のボスは、結局二人共死罪となったと聞いた。(ボスの名前をリューは聞かず終いであったが、本当に“ボス”という名前であったと聞いた。)

 

ただ、なぜかボスは斬首刑を泣いて嫌がり、絞首刑とする事が認められたとか。首を切り離されたのがそんなにトラウマだったのか、リューは少し意外であった。

 

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ボルトが逮捕された日の翌日。

 

ボーダータウンへの四夜蝶の脅威もなくなり、教会/孤児院もひとまずは安全である。

 

スラムは四夜蝶が居なくなったことで、残った2つの犯罪組織が縄張りを奪い合う展開となるが、縄張り争いの余地ができたことで、しばらくは外に向かう事はないだろう。

 

リューはいつものように、教会にオヤツを差し入れ、シスターとお茶を飲んでいると、そこに冒険者ギルドの受付嬢レイラが訪ねてきた。

 

曰く、リューが冒険者ギルドにいつまで経っても来てくれないので、再度、ギルマス代理のキャサリンに呼びに来させられたのだと言う。

 

「いつまで経っても」と言っても、別れてからまだ3日しか経っていないのだが、それほどキャサリンとしては切迫しているのだと言う。

 

少し面倒だなぁと思いながらも、リューはレイラと一緒に冒険者ギルドに顔を出すことにした。

 

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ギルドマスターの部屋に通されたリュー。

 

話は、まずは前ギルドマスターのしでかした事への謝罪から始まったが、リューは、キャサリンに謝ってもらっても意味はないと言った。

 

リュー 「謝るべきは、事をしでかした本人、ダニエルじゃないのか? 代理の人間がいくら頭を下げても、本人は反省してないんじゃないのか?」

 

それは当然だとダニエルを呼びに行かせるキャサリン。

 

弱々しい薄笑いを浮かべながらやってきたダニエルは、リューの前にくると土下座をして謝罪を始めた。

 

ダニエルには厳しい処分が下され、事実上冒険者ギルドの奴隷のような身分になったという。

 

当然だろう。

 

そもそも、このダニエルが、まともな対応をしていれば、何も問題は起きなかったのだ。

 

リューが先輩冒険者に強盗されたと訴えても相手にしなかったようなギルドマスターだったのである。

 

土下座するダニエルに、多少は溜飲の下がる思いがしたリューであったが、そもそも、ギルドという組織として、そんな人間を放置していた体制にハラが立つわけで。

 

それについては、ギルドを代表する立場として、キャサリンも平身低頭謝罪した。

 

本当に、このままでは冒険者ギルドは潰れてしまう。

冒険者は居なくなり、依頼もほとんどなくなってしまった。このままでは、近い将来、この街の冒険者ギルドは閉める事になってしまうかも知れない。

 

だが、そうならないよう、悪い点は改善するとキャサリンは言った。

 

冒険者ギルドの存在意義、必要性を切々と語り、ギルドの存続を訴えるキャサリン。

 

別に、リューにいくら懇願したところで、冒険者ギルドの存続を決定する権限がリューにあるわけではないのだが、事実上、今の状況を作ったキーマンがリューであることも間違いない。

 

なんとか、リューに、冒険者ギルドが存続できるよう、力を貸してほしいとキャサリンは言うのであった。

 

キャサリンは、リュージーンがこちらの味方となれば、状況をひっくり返す事は可能であると考えたのである。

 

 

― ― ― ― ― ― ― ―

 

次回予告

 

冒険者ギルドは必要なのか、不要なのか?!考えてみるリュージーン

 

乞うご期待!

 

 

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