第36話 逮捕されたはずのチンピラは即日釈放されていた?!

翌日、リューは約束通り警備隊の詰め所に行き、昨日の隊長=ゴランを呼んでもらった。

 

だが、出てきたゴランは、申し訳無さそうに、昨日捕まえたチンピラたちが夜のうちに釈放されてしまった事をリューに伝えたのだった。

 

「申し訳無い。」

 

頭を下げるゴラン。

 

リュー 「どういうことだ?」

 

ゴラン 「色々事情があってな……。」

 

ゴランはそれ以上何も言わない。

 

そこでリューは、ゴランが隠している“色々”を知るため心を読もうとした。一瞬だけ、リューの瞳が金色に光る。

 

だが、微かな時間であったにも関わらず、リューの瞳の色が変わったのをゴランは見逃さなかったようだ。

 

ゴラン 「…君にはどうやら隠し事はできないようだね。魔眼かい?」

 

だが、何も答えずゴランをじっと見るリュー。

 

ゴラン 「ええっと……いや、もともとボーダータウンは我々(第三警備隊)の管轄ではなく、第一警備隊の管轄でね。。。」

 

渋々話し始めるゴラン。

 

昨日はたまたま、ボーダータウンの近くをパトロール中の第三警備隊のところに女性が助けを求めてきたので駆けつけたのだと言う。

 

ゴラン 「だが、自分たちの管轄地域で我々が犯罪者を逮捕したという話を聞きつけた第一警備隊の隊長ボルトが、身柄を引き渡せと言ってきたのだ。やむを得ず引き渡したところ、証拠不十分だと言い出して釈放してしまったらしい。」

 

リュー 「まるでその隊長はチンピラの仲間みたいだな。」

 

おそらく、裏でスラムの犯罪組織と繋がっているのだろう、金でも貰って犯罪を見逃しているというところか。

 

これまで不可侵だったボーダータウンに縄張りを広げようとしてるのも、警備隊を抱き込んだので可能と踏んだのだろう。

 

ゴラン 「…ボルトには以前からそういう噂はあってな。探りを入れてはいるのだが、証拠がないのだ……。」

 

どうやらゴランとしてはボルトの不正を糾弾したいのはやまやまなのだが、証拠が掴めないという事らしい。

 

リュー 「ならば、証人を連れてくれば断罪できるか?」

 

ゴラン 「…?…そりゃ、まぁ、できるが、連中を捕らえても口を割らないと思うぞ?警備隊より組織からの報復のほうが怖いらしい。」

 

リューはニヤっと笑った。

 

リュー 「帰らせてもらうぞ。釈放したチンピラ共が仕返しに来るかもしれんからな、待っててやらないとな。」

 

ゴラン 「おい、危ないんじゃないか?しばらくどこかに隠れていたほうがいいのでは…?」

 

リュー 「問題ない。しつこいようなら潰すだけだ。」

 

ゴラン 「そ、そうか……聞いているよ、君の活躍は。ドラゴンスレイヤーで、東のダンジョンも簡単に踏破してしまったとか?」

 

だが、リューは自分の話には一切答えず、席を立って出ていってしまった。

 

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「それで、おめおめ逃げ帰ってきたのか!」

 

リューに懲らしめられたチンピラABCDがケンゴに怒鳴られている。

 

どうやらチンピラ達はケンゴのチームの人間だった。

 

昼間、ケンゴ自身がリューに痛い目に合わされた事もあり、ケンゴは怒り狂っていた。

 

ケンゴ達は犯罪組織というほどのものではなく、チンピラが数人集まって始まった愚連隊が、徐々に仲間を増やしてきたにすぎない、所詮はチンピラである。

 

だが、いい加減、ケンゴも脱チンピラを目指していた。そのために、スラムの三大犯罪組織のひとつ「四夜蝶」の仲間になろうと、その周辺をうろついているのだった。

 

四夜蝶のほうは、ケンゴ達を仲間と認めたわけではないが、利用できる時は利用している(つまり状況によっては使い捨てにする)という状態である。

 

縄張りの拡張は、明確に四夜蝶が指示した形ではなく、成果を出せたら正式に仲間にしてやるとケンゴを唆した結果であった。

 

逮捕されたチンピラ達の釈放は、四夜蝶と裏で繋がっている第一警備隊隊長ボルドの独自判断でやった事なのだが、後でボルトが四夜蝶に恩着せがましく言って金をせびってくるのは間違いないだろう。

 

結果的に、ケンゴ達は四夜蝶に借りを作る形となってしまう。

 

四夜蝶の中でのし上がる事を目標としているケンゴには面白くない結果となってしまった。

 

なんとか挽回しなければならない。

 

それに、気弱な優男だったリューごときに舐められては、スラム街でやっていけない。

 

ケンゴは以前から、リューに絡んで、誂ったり時には暴力を奮ったりもしていた。仲間に入れてやろうと誘ってやったのに断られたので、リューを皆でリンチにかけた事もあった。

 

ただ、今回は、以前のように甘い処罰で済ませる気はない。徹底的に痛めつけ、その後で殺してスラムに晒し上げる。

 

ケンゴ達のチームの力をスラムの連中に示さなければならないのだ。

 

ケンゴは仲間を全員集めて、リューの住んでおるアパートに向かった。

 

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アパートに帰ったリューはベッドで眠っていたが、予知能力が危険を知らせたため目を覚ました。

 

リューは神眼の能力でアパートの周囲を探査、ケンゴ達が居る事を把握する。

 

深夜に騒ぎを起こされても、他の住民にも迷惑なので、リューは自分から出ていく事にした。

 

「こんな夜中に何のようだ?」

 

アパートを取り囲んでいたケンゴは、奇襲が失敗した事は悔しかったが、同時に、逃げればいいものを、リューがわざわざ自分から出てきた事については嘲笑も沸いてきた。

 

ケンゴ 「舐めた真似しやがって!ただで済むと思うなよ!!」

 

リュー 「大声を出すな、迷惑だろ?」

 

次の瞬間、ケンゴ達は森の中に居た。リューが転移魔法で全員まとめて移動させたのだ。

 

もともと薄暗い中であったので、なにかおかしな感覚はあったものの、転移した事にケンゴ達はしばらく気づかなかった。

 

深夜の森の奥深く、以前リューが焼き払ってしまった事があり、少し開けた草原となっている場所である。明かりなどないが、満月の月明かりで意外と明るく見えている。

 

「……ここはどこだ?!?!?!」

 

 

― ― ― ― ― ― ― ―

 

次回予告

 

リューを夜襲しようとしたチンピラ達とリューが戦う

 

乞うご期待!

 

 

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