第34話 スラムの街角で通行料をとるチンピラ

チンピラ達がいやらしく笑う。

 

「またボコボコにされてぇみてぇだなぁ?」

 

「冒険者になったらしいが、急に強くなったと勘違いしてるんじゃね?」

 

「きちんと教育しないとなぁ!」

 

これから一方的にリューをボコる、そう信じて疑わない男達。

 

スラムの人間と争うつもりはなく、見逃してやるつもりだったリューであるが、攻撃されるのならば別だ、容赦する必要もない。

 

(いっそ全員殺ってしまうか?生かしておいてもロクな事はせん連中だしな……)

 

たが、その時、女性の声が響いた。

 

「アナタ達!何をしているの!?」

 

叫んだのはレイラであった。

 

 

 

 

「引っ込んでろ!死にてぇのか?!」

 

男達が凄むが、キャサリンが出てきて冒険者ギルドのマスターであると名乗った。

 

キャサリン:「お前達、麻薬の密売人だな?!大人しくしろ、既に警備隊を呼びに行かせているぞ!」

 

ケンゴ:「ちっ……リュー!覚えてろよ!」

 

慌てて退散していくケンゴと男達。その後ろ姿を見ながらリューは小さく呟いた。

 

『ああ、後できっちり話をつけに行くよ。四夜蝶にもな。』

 

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― ― ― ― ― ― ― ―

キャサリンとレイラは、マリー達から少し離れて歩いていたのだが、前方でなにやらトラブルがあったようだ。

 

レイラ 「マスター、あれは、リューさんです……!」

 

少し近づいてみると、道の向こうからやってきた少年=リュージーンが少女と話しているのが聞こえた。そして、マリーと一緒に歩いていた少年(タンジ)がリューの胸ぐらを掴んだのだ。

 

近づこうとするレイラを押さえて、成り行きを見守っていたキャサリン。あれが本当に噂のリュージーンならば、この程度は何も危険はないだろう。

 

だが、そのうちリューが男達に取り囲まれる事態になってしまった。

 

このままでは危ない。

 

……囲んでいる男達が。

 

Bランクの冒険者を簡単にあしらったというリューである。スラムのチンピラなど相手にならないであろう。

 

話を聞いていた限り、どうやらチンピラ達は麻薬の売人であるようだ。

 

そんな連中がどうなろうとキャサリンにとってはどうでも良い。むしろ、リューが暴れてくれれば街のチンピラがキレイになり、また目撃したリューの暴行を黙っていてやると言えば、リューに貸しを作れるかも知れない、一石二鳥である。

 

だが、レイラが「止めなくちゃ!」と飛び出してしまったのだった。

 

慌ててレイラを追いかけ、現場に割って入る事になってしまったキャサリンであった。

 

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怪しげな男たちが逃げ去った後、キャサリンはリュージーンに声をかけた。

 

「はじめまして、君がリュージーンだね? 私は冒険者ギルドのマスター代理をしているキャサリンだ。」

 

キャサリンがリューに向かって手を出してきた。だが、リューはその手をとらず、黙ってキャサリンを見ていた。

 

相手が冒険者ギルドのマスターと聞いて、警戒したためである。

 

めげずに続けるキャサリン。

 

「前ギルドマスターのダニエルの事はもう聞いているだろう? 奴が君に対してした仕打ちも聞いている。奴は降格処分になった、安心してくれ。」

 

リューはレイラのほうをチラと見た。

 

ペコリと頭を下げるレイラ。リューも微笑んで頷いた。

 

それを見たキャサリンが食い下がってくる。

 

キャサリン 「君が冒険者ギルドに不信感を持っているのは分かるが、それについては正式に謝罪したいと思っている。今後の対応について説明したいので、一度、ギルドに来て話を聞いては貰えないか?」

 

リュー 「代理と言ったが?新しいギルドマスターがまた後で来る事になるんじゃないのか?」

 

キャサリン 「そ、それは、いずれはそうなると思う。」

 

リュー 「代理の人間と話をしても、また新しいギルドマスターが来たら、違う話になるんじゃないのか?」

 

キャサリン 「それは大丈夫だ、もし不安なr」

 

「りゅーにぃ!」

 

マリーがリューの足を掴んだ。

 

リュー 「ああごめんごめん、教会に帰ろうか。」

 

リューは後で時間ができたときに冒険者ギルドに顔を出すので、その時に話そうと約束した。

 

だが、キャサリンとレイラは帰り道が分からないと言うので、マリーを先に教会に送り、その後、リューが二人を一般街まで送っていく事になったのだった。

 

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― ― ― ― ― ― ― ― ―

 

リューとマリーが教会についたとき、反対方向からとぼとぼと歩いてくる男の子が居た。教会で面倒見ている孤児の一人、13歳の少年ダグである。

 

教会にいる子供達は、ある程度大きくなると、少しでも教会の経営を助けるため、外に出て大人の仕事を手伝うなどして、少しでも金を稼ぐ努力をしていた。

 

これは15歳になって教会を卒業するときに、お金を稼ぐ手段を学んでいく社会勉強でもある。

 

ダグもそうして外に出ている一人だが、なぜかダグは、すっかり意気消沈した様子でうつむいて歩いている。明らかに様子がおかしい。

 

よく見れば顔に殴られたような痕がある。

 

リュー 「どうした、ダグ?!」

 

ダグ 「りゅーにぃ……ごめん、今日の稼ぎ、落としてなくしちゃった……」

 

リュー 「落とした? ……本当か?」

 

ダグ 「…………本当だよ、ごめん、今日はオレ飯抜きでいいよ。。。」

 

ダグの様子がおかしいと思ったリューの瞳が金色に変わる。「神眼」の発動である。

 

リューは普段からある程度、表面の心の動きを察知する事ができるが、神眼をフルに発動すると、心の奥や過去や未来までも、全てを見通す事ができるのである。

 

リュー 「……喝上げされたのか。。。」

 

ダグ 「カツアゲ?」

 

リュー 「人を恐喝して金を巻き上げる事だ、おれの故郷のスラングだ。」

 

ダグ 「…どうして……分かったの?」

 

リュー 「顔を見れば分かる、殴られた痕があるじゃないか。必死で抵抗したんだろ?よくがんばったな。」

 

ダグの頭を撫でてやるリュー。

 

ダグ 「う……え……にいちゃ……」

 

堪え切れず涙がこぼれ始めるダグ。

 

リュー 「もう大丈夫だ。オレが話をつけてきてやる。お前は教会で待っていろ。」

 

どうやら、街のチンピラ達が教会近くの路地で、「通行料」を脅し取っているようだ。偶々そこを通ってしまったダグも被害を受けたのだ。

 

リューはポロポロ涙を零すダグに治癒魔法を掛け殴られた傷を治してから教会に送ると、ダグを殴った連中のところへ向かうのであった。場所は神眼で分かっている。ダグを殴った奴を許しはしない。

 

 

― ― ― ― ― ― ― ―

 

次回予告

 

チンピラを叩きのめしていたら警備隊に囲まれてしまう

 

乞うご期待!

 

 

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