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@hoge1e3

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 私は,とあるシューティングゲームに出て来るザコ敵なのだが,

 シューティングゲームってどう考えてもおかしいだろ.


 プレイヤーは,1機の戦闘機にすぎないのだ.

 それに対して,こっちの軍勢は1万くらいいるんだぞ.


 でも,負けるんだな,こっちが.

(ちなみに残機の概念を導入したとしても,プレイヤーはせいぜい数十機だろう.しかもだいたい最初の1機だけが強くて,あとは装備が貧弱な連中しか来ない.なんでだ?)


 私が登場するのは,全面クリアしたらプレイできるエクストラステージ(エンディング後,タイトル画面でCONTINUEを選ぶ)の中盤あたり.同時に巨大な中ボス,じゃなくて上司が2体くらい闊歩しているなか,にぎやかしで編隊飛行する中の1機.だから,プレイヤーのヤロウ,上司をやっつけるので精一杯で,私は流れ弾に当たっていつのまにか死んでいる,という存在だ.


 私は,もう死にたくない,と思った.


 だから,なんとかして死なない方法を画策していた.

 ある日ついに,私のソースコードを発見したのだ.


// Zako.tonyu

while(true) {

  if (screenOut()) die();

  b=crashTo(PlayerBullet);

  if (b) {

    b.die();

    die();

  }

  x+=vx;

  y+=vy;

  vy-=0.1;

  update();

}


 ええと,私も最初な何のことだかわからなかったが,肝心なのはここらしい:


b=crashTo(PlayerBullet);←プレイヤーの弾にあたったかを調べ

if (b) {←もし当たっていたら

  b.die();←当たった弾は死に

  die();←私も死ぬ

}


 そう「私も死ぬ」などと物騒なことが書いてあるのだ.怒った私は,そのdie();という箇所を削除した.


 これで私は不死身だ! 

 

 ――しかし,勝手に私の挙動が変わったら,プレイヤーのヌシから「バグだ!」とかいわれて回収騒ぎになったりしないか? などと余計なことを考えた.まあ,おまけのステージに出てくる一介のザコ一匹がしのーがしぬまいが一緒か,むしろ「不死身の隠れキャラ」として脚光を浴びるかもしれないし.



 そして,プログラムは変更された.


―――――†―――――


 その後,このゲームは

「すべてのザコ敵が全然破壊できない大バグがある」

 という不名誉な評判を頂くはめになる.




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