敗者復活戦 龍牙vsディアン&シルヴィア
二戦目のフィールドも草原だった。そこに、三人の人物が降り立つ。
青の邪神龍である霧島龍牙。そして、黒マントを着たディアンに金色ドレスのシルヴィアの二人組だ。
互いに視線を交差させ、いつ仕掛けようかと考えている。
(あいつとの戦いでは、龍鎖封印式を渋ったことで負けた。なら、今回は発動させるべきか……?)
構えを崩さず考える龍牙。その瞬間に、ディアンとシルヴィアが動いた。
ディアンは鎌を構えて、シルヴィアはいつでも回復魔法で支援が出来るように準備して駆ける。
さすがにこれは龍牙も対応を焦った。まさか、こうもいきなり攻撃してくるとは思うまい。
「……龍鎖封印式は今回もいい。一撃で終わらせるからな!」
即興で術式を改変。全体に向けてマイナス60℃に温度を落とす凶悪な冷気を撒き散らした。草花が凍りつき、空気中の水蒸気が美しく煌めく。
あまりの冷気にディアンの足が止まった。だが、後方のシルヴィアから暖かな光が溢れ出す。
「っ! ディアン!!」
「悪い!」
ディアンとシルヴィアは手を繋いで、回復魔法で凍傷を癒し始めた。体についた霜が和らいでいく。
傷を癒したディアンが地面を強く蹴る。
「さっさと決めるぞ!」
「っ!? こいつら……弱めたとはいえ絶対零度の領域を平然と……!?」
ディアンの鎌を刀で受け止める龍牙。その体からさらなる冷気が溢れ出す。
「今度こそ凍りつけ。その全身を木っ端微塵に打ち砕いてやるよ……!」
直接冷気をディアンに叩きつける。先ほどよりもさらに温度の低い冷気は、ディアンの体を急速に蝕んでいった。
「うぐっ……くそっ……シルヴィア!」
「任せて!」
シルヴィアが回復魔法の出力を増加。ディアンの傷を癒していく。
「『天使』の力、なめないで!」
「……あ? 天使……だと?」
一瞬龍牙の魔力があり得ないまでに膨らみ、そしてすぐに収まっていく。龍牙の前で天使は禁句。最悪の地雷を踏み抜いてしまった。
「気が変わった。お前だけは、絶望のどん底に沈めて殺す!」
「なっ!? させるか! これでどうだ!!」
シルヴィアに対する強烈な殺気を感じ取ったディアンが鎌に魔力を纏わせる。それは、斬るものを消滅させる滅びの魔力。
普通なら、それに気づかずに消滅させられて終わるだろう。だが、相手はドラムグード王国最強の一角だ。即座に違和感に気づかれてしまった。
「異質な力? 龍魔刀は壊せないはずだが……念のため!」
龍牙はディアンの鎌を振り払い、大きく後方に飛び下がった。そこから、体に刻んだ魔方陣を光らせてビームを放つ。
そのうちの一発がディアンの足を貫通。だが、即座にシルヴィアが傷を癒す。そこから、二人で駆け出して龍牙へと攻撃を仕掛ける。
「鎌に、格闘か。面白い……絶対零度を本来の威力に戻して、細胞の一欠片に至るまですべて凍らせて破壊してやるよ!」
吹き荒れる白銀の嵐。何もかもを凍らせる死の乱舞の直撃を、二人はかろうじて避けた。距離を取り、凍傷を癒す。
そして、同時にディアンが目を光らせた。途端に、嵐は止んで龍牙の動きが完全に停止する。
「はぁっ!? 停滞の魔眼!? ……違う、何しやがった!?」
「邪眼。これで終わりだ!」
ディアンが鎌に魔力を満たして再度攻撃。龍牙目掛けて振り下ろす。
(ちっ、どうするどうする!? やむを得ない、か? 本当なら、まだ取っておきたかったんだがな……!)
至近距離に来たディアンと視線を合わせる。その瞬間、龍牙の両目におぞましい紋章が浮かび上がる。その紋章は、ディアンの目を覗き込むようにしてけたけたと嗤った。
「っ!? ごほっ!」
突如、鎌を取りこぼして倒れるディアン。その様子を見て、龍牙は首を傾げる。
「外傷がない? こいつ、魔眼にも耐性があるのか? 死絶の魔眼は、全身の穴から血液を噴き出して死ぬかなりの残虐な魔眼のはずだが……」
龍牙が使った奥の手、死絶の魔眼。元の世界でも一度として使われることのなかった残虐非道な一撃が今、ここに発揮される。
ディアンは倒れたまま動かない。即座にシルヴィアが蘇生魔法を試みるが……。
「ディアン起きて! 死んじゃダメ!」
「……蘇生だと? そんな魔法、存在するというのか?」
さすがにこれは厄介だ。そう考えた龍牙は、今のうちに二人とも消し飛ばしてしまおうとするが……。
「蘇生が……効かない……!?」
「まぁ、生半可な技じゃないからな」
「これは……もう、駄目ね」
突然、シルヴィアも倒れた。同時に、あの訳の分からない声が響く。
『決着~! 勝者、霧島龍牙!』
「……は? 運命共同体だってのか!? ……最初からこのシルヴィアとかいうやつを狙撃しておけば良かったのでは……!?」
転移が始まり、龍牙の体が消えていく。その刹那、龍牙は視線をシルヴィアに向けた。
「蘇生……か。天使は嫌いだが、こいつにはなんの関係もないしな。……もしかしたら、涼奈も……!」
淡い一縷の期待を胸に、待機スペースへと戻されていった。
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