第7話
「うん、綺麗! まさに芸術よ!」
シャーロットは小さな体を目いっぱい使って、自身が魔法で作り出した剣をうっとりと眺め、至福の表情を見せる。いいわいいわ、最高だわ。少し発光しているような所が幻想的で、前世では見れなかった代物だわ。
「しゃ、シャーロット、すごいじゃないか、ははは。げいじゅつ?が何かは分からないが、初日でソードを発動できるなんてシャーロットは魔法の才能があるのかもしれないな。」
「パパ!これを見て何か思わない!? ここの曲線とか、白と青の絶妙なコントラストに! 心が震えない!?」
「お、おーう、い、言われてみれば、き、綺麗だな!うん!きれいだぞー!」
普段は大人しいシャーロットの勢いとジト目に負け、ヨーゼフはまるで新入社員のようにハキハキと返答し、頷く。
「あぁ、ザ・ファンタジーって感じの剣を自分で作り出したって言う事実が嬉しすぎてたまらないわ……。」
シャーロットは変わらず恍惚な表情を浮かべながら、自身が作り出したソードの腹の曲線に指を這わせ、うっとりとする。そんなシャーロットを見たヨーゼフは話を何やらまずい空気を感じ取ったのか、焦ったように話を変える。
「しゃ、シャーロット! せっかくだし、試し切りしてみないか?ほら、メイルを着せた案山子がある。剣は作り出すだけでは意味が無いんだぞ? 使ってこそ意味があるんだ!」
ヨーゼフは少し古いような、使いまわした試し切りや、魔法の練習の的として使用するためのメイルを着せた案山子に近寄った。
作り出すだけでも意味はあるわよ、だって、感動するじゃない。とシャーロットは内心思いながらも、流石にあたふたしている父が可哀そうに思えてきたので、大人しく従うことにした。
「切り方とかってあるのかしら?」
「ふむ、本来であれば、型とかはあるが、まだ教えていないからな。初めてなんだし、とにかく思いっきり振り下ろしてみればいい。まぁ、さっきも説明したが、ソードはあくまでメイジが近づかれた時の予備武器だ。メイルを切れるような切れ味が出せる魔法ではない。相手の剣を受けたりする為に使う魔法だ。メイルが切れなくても気にするな。」
「分かったわ。やってみるわね。」
只の案山子相手とはいえ、5歳児が試し切りするなんて流石に長い間戦争が続いた異世界ね。この世界でも特に優秀な戦士と思われる父でさえ、メイルを切れる程の切れ味は持っていなかったのだ。切れる訳はないでしょう。でも、魔法を使うなんて、なんか楽しいかも。とりあえずやってみようかしら。
「えい!」
シャーロットは実にかわいらしい声をあげながら、ソードをメイル案山子目掛けて振り下ろした。そして、ソードがメイルに弾かれると思われた瞬間、ソードはメイルを何の抵抗も無く通り抜け、そして、そのまま最後まで振り切ることができていた。
「え?」
「え?」
何とも言えない抜けた声が父と娘から発せられる。
メイル案山子は剣が通り抜けた所から真っ二つに裂け、上側の半分がズレ、地面に落ちていった。
「え?なにそれこわい」
「え?なにそれこわい」
父と娘は互いに顔を見合わせ、意気投合した。
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