「歪み」


 大人が言う大人になる方法を信じてはいけない。



 これは「味方」がよく言っていた言葉だ。


 僕も、これは本当にその通りだと思う。


 大人というのは、大人になる方法をくとき、必ずといっていいほど、過去の理想像を語る。


 だから大人の言う大人になる方法は、信じてはいけないのだと思う。


 大人になることなんて、とてつもなく簡単だ。


 例えば、運動がまったくできないとしても、勉強がまったくできないとしても、友人がまったくいないとしても、大人にはなれる。


 けど、どこかでかならず「歪み」が生じてしまうのだ。

 その「歪み」をできる限り減らすのが、学校という機関なのだ。その「歪み」が見られやすいのが勉強だから、学校は勉強を基盤にしていると僕は思う。


 そして、大人は、この「歪み」が完全に除去された人間を、大人になる方法だと言っているのだ。


 しかし果たして、完全に「歪み」のない人間というのは、本当に人間なのだろうか。


 とにかく、「味方」が言うことの中で、これが唯一、説得力に溢れていた言葉だった。


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