浅井
僕の高校は、一年の終わりから文理選択が始まる。二年からは文系と理系によってクラスが分けられる。
僕はそのとき、特に進路については考えていなかったので、なんとなく理系にしていた。本当に目的があったわけでもない。なんなら、理系の人数がいっぱいなら進んで辞退して文系に移るぐらいには、なんとなくだった。
といっても、理系の人数がいっぱいになることはなく、むしろ理系クラスは、全九クラス中たったの二クラスで
一年の教室にあった自分の机を、二年の教室へと運び、指定された位置に着席した。このとき、僕はまたもや最前列の右端だった。
教室はそこそこな
そこへ、春川とまったく同じ動作で教師が入ってきた。彼女と何一つ変わらないその動作に、つい僕はその教師が春川なのではないかと疑ったほどだった。
けれど、彼女は春川などではなく、
浅井は僕らを見渡し、そしてこう言った。
「このクラスの担任になりました。浅井真理です。一年間よろしく」
「私は皆さんの個性を大事にしたいと思っています。ですので、お互いに個性を尊重できるようなクラスが、私の理想です」
「では、まず皆さんに、自己紹介をさせていただきます。名前と一年のクラス。部活動に、生年月日と……自分の個性を言ってください」
そして、浅井は僕を指名した。
僕は無言でその場に立ち尽くした。
教室は沈黙で包まれ、制服が
それらが一様に繰り返された後、浅井は言う。
「最後に回しましょうか。次の人」
僕は、その時の浅井の顔を見ていた。
一年生の時は、緊張と恐怖、
けれど、僕はその時浅井の顔を見た。
その時の彼女は、全ての色を失って、死んだような顔をしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます