二年生

 そうして、いつの間にか僕は高校二年生になっていた。



 語るべきタイミングを見失いそうなので、今ここで語らせてもらうが、学校生活において、無言のまま、誰とも話さないということは、良いか悪いかで言うと、悪い。



 けど、良い面もしっかりと併せ持つ。人間関係によって発生する諸問題について、縛られることはないし、何かするにしても、学校というのは複数人でやらせたがる。そういうときに効率的で、合理的に物事を推し進めることができるのだ。


 また、友人がいないということがデメリットとして列挙されると思うが、それもメリットでもある。確かに、誰とも交流がないと、情報不足に困ることが多々ある。


 例えば、僕が一年生の時である。


音楽の授業のことだったのだけれど、僕以外の全員がその日、音楽室に来なかったのだ。僕は一人きりで音楽室に二時間たっぷり居た訳だけど、チャイムが鳴ってから、教室に戻ると、音楽の授業を選択している連中が教室で馬鹿騒ぎをしていた。


 連中の大きな声から聞き分けて分かったことだが、どうやらその日は教師が出張で不在のため、教室で自習。という連絡が朝に入り込んできていたらしい。

 当然、僕はそんなことを聞いてなくて、音楽室に、のこのこと行ってしまっていた。



 けど、一人だけの音楽室というのは素晴らしい空間だと僕は思う。誰か来るのではないか、という妙な興奮で僕はワクワクしていた。僕の趣味の琴線きんせんに触れる出来事だったので、それは良い記憶としても、悪い記憶としても心に深く刻まれている。



 ともあれ、情報量の少なさは、根本的な解決策は卒業まで思い浮かばなかったけれど、それでもちょうどいいデメリットだな、と最後の方は思うようになっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る