面談
七月下旬。猛烈な暑さと共に僕の学校はもう一週間程度で夏休みに入ろうとしていた。
相変わらず僕は無言を貫いており、その頃僕は何を言われようとも決して答えない、というルールに対する絶対的な自信を得ていた。
ただ、それを揺るがす事態が発生した。
それは個人面談だった。
普通の生徒にしてみれば、
これまで誰とも話さずにいられたのは、そもそもの時間が短かったからだ。どういうことかというと、授業中では、集団として授業をしているわけだから、僕を指名して、僕が口を開くまで何分も待つわけにはいかない。
だが、個人面談は、文字通り個人面談だ。無論、時間による制限はあるものの、それは二十分だった。
二十分間、教師と生徒が話すべき空間で何も話さないというのは想像もできないだろう。
だから、僕は怖かった。
しかし、逃げ出すのもまたできない。確かにバイトだの塾だの言って逃げ出すことは容易である。
でもそれだけは決して取ってはならない選択肢だった。
これは僕に課したルールでもあった。そしてルールとは守るものだ。それもまた、僕のルールだった。
結局、個人面談は一学期最終日の最後に行われることになった。
僕が黙りこくることは予定に組み込まれていたのだった。
面談の日が近づくたびに、僕の心は大根おろしで削られるように脆くなっていった。昼休みに人気のないところへ行って、いつものようにクラシックをいくら聴いても感傷的なんかにはならず、ひたすらそのことだけが気がかりで仕方がなかった。
結局、迎えた当日、僕は逃げずに教室の扉で待機していた。
ここまで来た自分を褒めてもいいくらいだ。
別のことを考えようとしても、この後の面談の事が頭の中で必ず引っかかり、頭から決して離れようとしない。口は異様に乾きだし、足の裏が汗をかいていることがよくわかった。
そうこうしているうちに、反対側の扉が開かれ、僕の一個前の人が出ていった。
そして——
「次、
それは、最悪な二十分間の始まりであると同時、「味方」との出会いの始まりでもあった。
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