第22話 君


「気持ち悪い、気持ち悪い、君はとても気持ち悪いよ」

笑った君はきれいだったね。

「毎日がつまらなくて、もうどうでもいいんだ」

そんな虫けらのような僕は、

「踏み潰してしまっても、かまわないね?」

ぐちゃぐちゃに、跡形もなくなるほど。


「好きにしてよ」


君はとてもきれいなんだ。優しいんだ。


「愛してないけど、殺してあげようか」


歓喜は生まれなかった。感情は死んでいた。


一緒に歩いて、君は笑って。

僕はただ相槌だけ打って、頷いていた。

「楽しい?」

君はいつも僕に聞くんだ。

「楽しいよ」

僕は嘘をついて、

「嘘つきだね」

君はいつも見破った。

草は枯れていて花なんて咲いてない。

寂しい風景の公園に人が寄り付くはずもなく。

僕らいつもふたりして、何人来るか賭けたんだ。


「楽しいね」

君は笑って、僕を殴った。

「痛いよ」

僕も笑って、鼻血をぬぐって。


「どっちだと思う?」

君はいつも曖昧な問い方をする。

もっと簡潔に話せばいいのに、

暴力以外の手が遅い君は、いつもまどろっこしい問いかけをして、

それに僕が答えられないと怒って踏みつけてきた。

「病んで、歪んで。依存してるのはどっち?」

そんなこと今更聞かないでよ。

「今、殺す?」

君は真剣な顔をした。


深刻な雰囲気は長続きしない。

どちらかが先に笑い出して、嘘のような本音を聞かなかったことにした。


毎日がつまらなかった。

君がいたけど、そこは変わらなかった。

相変わらず世界は灰色で、君は笑っていた。

いつも、今日世界が終わると思いながら起きて、

明日世界が終わると思いながら眠った。


君はいつまで一緒にいてくれたのかなあ。


「私、死ぬからバイバイね」


ナイフを腹に突き刺して、君はきれいに笑ったんだ。


「愛してるから、苦しんでよ」

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