第21話 赤い首輪

首元が爛れた。いつものアトピー性皮膚炎だろう。

最初はうなじのあたり、髪の生え際の真下でじくじくと熱を持っていた。


それがいつからかぐるりと円を描くように侵食してきた。

首の裏側から炎症は広がっていく。


荒れて赤くなった皮膚は首を絞められた跡のようだ。

裏側はほとんど埋め尽くされて、皮膚炎が両側から正面に向かって広がってくる。

じきにこの模様は首輪のようにぐるりと首を絞めるのだろう。


皮膚ががさがさと乾いてかゆい。

思わずぼりぼりとかきむしる。ぱらぱらと乾いた皮膚がふけのように落ちてくる。


落ちた皮膚の下からは真っ赤に爛れた赤。

肌というよりはただの穴。柔らかすぎて簡単に貫通しそうな、脆い皮膚。


鏡に映してみるとじわじわと広がった炎症が、人の手の痕に見えてくる。


このまま赤い皮膚が浸食を続けて首が絞まったら、

いつかころんと首はとれるだろうか。



ありえない想像をしてみて、案外自分がその未来を望んでいることに気づいて、

笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る