第20話 大晩餐会
本物嗜好のグルメ気取りが、
真夜中、鶏絞めて殺した。
夜明けと共に肉を煮込んで、
朝露のった野菜を混ぜた。
ぐらぐら茹だる鍋の中、
鶏は最後の時を告げた。
牛を屠った豚を潰した。
生き物が食材に大変身。
肉の塊、加工済み。
きれいに洗って消毒した。
薬に漬けて完全にした。
何年たっても腐らない。
味は変わらず美味しいままで、
品質管理は整頓されて
棚にずらりと並んでいる。
さあさあどうぞ召し上がれ。
美味しく健康、健全で
最高級の肉の味。
缶詰入りの肉達は、
殺される前に食べられる。
お休みなさい、いい夢を。
日が昇って明日になれば、
美味しく食べてあげましょう。
何百回も何千回も、
リサイクルした食事達。
今日のスターは誰がなる。
お湯をくぐって丸焼けて、
美味しそうに演じてる。
ナイフを入れて
フォークで刺して、
最後にスプーンで救い出す。
ご馳走様を言う前に、
次の食事が待っている。
生命維持に必要な
栄養素とかバランスが、
笑いながら逃げていく。
「もう十分でしょう?それ以上、
不味い身体にならなくたって」
食事みんなに笑われて、
それでも食べて食べ続けて、
不味い不味い食べられない。
自分が一番美味しくない。
牛を食べても豚を食べても、
美味しい肉にはなれなかった。
ざまあみろと哂われた。
声高らかに嗤われた。
いくつもの命を奪って食べて、
何も返せず枯れ果てる。
地面さえも嫌がって、
出て行ってくれと骨を押し出す。
骸骨黒い涙を流し、
入れてくれよと岩戸を叩く。
出汁にもならない用無しが、
折り重なって捨てられて
空に届いて門前払い。
地面と空の真ん中で
宙ぶらりんの状態で、
ためしに隣を齧ってみたら、
悪食食いが度を越えて、
これは美味いと大ブーム。
見世物小屋の戸が閉まる。
豚の手牛の手拍手喝采。
鍋の蓋は閉じられた。
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