第15話 あなたが消えた週の真ん中
思っただけです、感じただけです。
声に出さずに、顔に出さずに。
密やかに秘め事を。
単純に素直に、純真に純粋に。
何をそんなに笑っているの。
あなたが思っていることなんて、
思っていることなんて、そんなものそんなもの。
きっとずっと思っていたのに。
裏切られることなんて、ずっと前から知っていた。
想像もしていなかったでしょう。こんなことになるなんて。
それとも賢いあなたには、全てが見えていたとでも。
そんなことを言うのでしょうか。
さようならと、それは確かにあなたの口から紡がれた。
嬉しい嬉しいこんなに嬉しい。
笑う私を見てからあなたも嬉しそうに微笑むの。
池の睡蓮咲かずに枯れて。夏の暑さにやられたのでしょう。
温水に足を浸してみたら、泥が柔らかくうねって鳴いた。
声を上げて泣いていたのは、近所に暮らす幼い子。
犬の口が裂け、猫の背が曲がり。腹を抱えて笑っていたんだ。
青い青い溶けた空に、風船が混ざって弾けてしまった。
だって今日は水溶日。だから明日は火溶日で、全てのものは溶けていく。
溶け残った月溶日。海の向こうで人が消えるの。
あなたに砂をあげましょう。
言葉が喉に詰まるように。
顔を覆って身体を包んで、何も考えなくていいように。
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