第14話 傷


泣きそうなほど。

痛い、痛い傷があって。

膿んで、腫れて、

気持ち悪くて。

だから切り離して捨てたんだ。


捨てた途端に身体が崩れて、

不恰好に倒れてしまった。

自立するのに必要な、

大事な部分も捨ててしまった。


悲しくなって泣いてしまった。

泣かないために捨てたのに。


叫んだって遅かったんだ。

どうやったって手遅れなのに、

今更気づいてしまったんだ。


傷ごと全部、必要だった。


捨ててはいけない、ものだった。


あんなに痛くなかったら、

泣きたいなんて思わなかった。

あんなに腫れてなかったら、

切り離そうとは思わなかった。


どんなに後悔してたとしても、

支えていたものは戻らない。


地面に這いずり、コロリと最後に

涙を落としてみたけれど。


立ち上がれることはなさそうだ。

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