第8話 言葉というものは


言葉は、言葉だけでは意味を持たない。

かといって、感情だけが言葉にはなりえない。

感情を言葉の羅列として吐き出すことにも意味はない。

言葉は感情を持ってはいけないのだから。


言葉自体が感情となってしまっているものは、すでに言葉ではなくなっている。


だからどうだというのだ。だからなんだというのだ。


自分たちは常に言葉に囲まれていて。感情を表す方法も、言葉以外は使えなくて。

音楽や、絵や。その他諸々の芸術で訴えるには、あまりに拙くて。

泣くことも、笑うことも。言葉に慣れすぎた今では、あまりに足りない。


伝えるための媒介。感情を表す手段。想像力を駆使し、分かりやすくまとめて、

それを音にしようと、文字にしようと。言葉は感情を持ってはいけない。


言葉は泣くことも笑うことも怒ることも悲しむことも。必要がない。


それとも。


言葉は泣くのだろうか。言葉は笑うのだろうか。

誰かに、何かを伝えようと、もがくことはあるのだろうか。

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