第7話 順位

もう誰も後ろにいない状況。

自分が最後だという認識は、

寂しさ悲しさその他諸々を含め一気に襲い掛かってくる。


自分がその順番になったのは、時間的な理由かもしれない。

能力的な理由かもしれない。その他さまざまな理由において自分はその順番にいる。


後ろに早く誰か来ないかと、期待と焦り、劣等感が混ざり合う。

どろどろとした感情は、最前列に羨望と嫉妬を募らせる。


誰か早く来ないかなあ!そうすれば少なくともこの焦燥感とはおさらばだ。

誰か後ろに来ないかなあ!そうすればもう寂しくなんかない。

誰かここに来ないかなあ!そうすれば振り返って優越感を味わえるのに。


もう誰も来ない。後ろに来ない。前にはたくさんたくさん人がいるのに。

自分が最後。一番最後。後ろの後ろの最後尾。なんで誰も来ないんだろう。

上には上がいるのは分かっているから。下には下がいるって早く分かりたいのに!


ずっと後ろを見ながら並んでいたら、前の人にぶつかった。

ごめんなさいと前を向いたら、気をつけろよと笑われた。

自分にはない表情で。自分には出来得ない笑いを作った。

優越感という表情は、こんなに醜く顔を変形させる!

自分もその顔になることを望んでいたのか。

後ろを見ることで安心感に浸りたくて、前は遠すぎてよく見えないと嘘をついた。


こんな表情、見たくなかった。こんな感情、欲しくなかった。


後ろに誰かが来ることでこんなに変わってしまうというなら、

後ろを見ることでしか安心を得られないなら、


こんな列など。離れてしまえ。


歩いて歩いて、一度だけ振り返った。

一列に並んだ集団は、ただの細い線になった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る