第9話 「明日、世界は終了します」


私は一歩踏み出す。世界がその分、離れる。

私は一歩近付く。世界がその分、遠ざかる。


こちらからは触れられない。

世界はただ、じっと見つめている。


私は口に手を当てて、聞こえるように精一杯叫ぶ。


「明日、世界は終了します」


何も変わらない日常。朝の騒がしいラッシュアワー。

世界が終了する日の前日だとは、誰も気付かない。

私だって昨日、知ったことだから。


昨日、夜の闇に溶けるような声を聞いた。

静かなのに泣き叫ぶような、音階なんて無視したような、

「叫び声」だった。


声の主はずっと叫んでいるのだろうか。

明日とは、明日のことなのだろうか。



「明日」は音もなくやってきて、

知らないうちに今日へと塗り替える。


「明日、世界は終了します」


何も変わるはずがない。どこが変わってもいない世界で。

確かに「明日」は今日も死ぬ。

生まれてくる前に、「今日」に殺される「明日」

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