決勝戦 ランスとの闘い前編

「さあ、ついにやってきました決勝戦です」

 そう、ミシェルのアナウンスが響く。

「決勝戦の組み合わせは我が学院史上最強の呼び声も高い、また史上最年少の剣聖であるランスロットさん。ランスロットさんは王国の第一王子でもあり、文句のないイケメン、剣の天才。しかも三人の美人姉妹を妹として持っております。何というチートぷりを発揮しているのでしょうか。まさしく生まれながらに全てを持っている男! 余裕での決勝進出です!」

 ミシェルのアナウンスが響く。

 女性ファンの多い、ランスは女子生徒が「きゃあああああああああああ!」「ランスロット様よ!」「いやああああああああああああああ!」などよくある黄色い声を出している。

 それに対してランスはウィンクで答えた。魅力に打ち抜かれた女子生徒が倒れ「私今日死んでも良い」などとのたまった。

「対するはこの方、トールさん……何々? トールさんは魔法使いの名門の家系を退学後、剣聖レイ・クラウディウスの元に剣の指導を受け、そしてこの剣士学院に入学。ほうほう。あの剣聖レイ・クラウディウスの秘蔵っ子! 満を持しての決勝進出だ!」

 そうミシェルはアナウンスをする。

「この組み合わせ、いかがでしょうか? ヴィル学院長」

「はぁ……」

「随分やる気がないですね? 決勝戦ですよ。やる気出して行きましょうよ!」

「だってイケメンって言っても男同士じゃね。男にはおっぱいもないし」

「おっぱいしか観てないんか!」

 ミシェルは突っ込む。

「失礼な奴だな。ちゃんと女を見る時は尻も見ているぞ。腰回りもちゃんと」

「いや、余計ひどくなってますってそれ」

「それに俺よりイケメンで剣の才能がある奴見てると妬ましくてむかつくいてくるんだわ」

「凄まじいまでにストレートな嫉妬! もはやオブラートに包むことを知らないこの男!」

「帰って酒飲みたい」

「ちょっと帰らないでくださいよ! 解説ですよ! 学院長!」

「わかってる、冗談だ」

 ヴィル学院長は少し真面目になった。

「下馬評からすればランスロット君が有利だろう。彼は我が校一の天才だ。その溢れるばかりの才は若い時の私すら凌ぐ。だが、トール君もあなどれない。なにせ彼は旧友剣聖レイの秘蔵っ子でもあるのだからな」

「はぁ~。真面目な事も言えるんですね」

「貴様! 私を馬鹿にしているのか! 私はこの学院の学院長なのだぞ!」 

 ヴィル学院長は憤った。

「さて! 両者がステージに立ちました! そして向かい合います」

 ミシェルは言った。ランスとトールは向かい合う。

 これからはもう二人の世界だった。お互いがお互いの事以外に意識をしていない。

 雑音はする。だがもはや集中しきっている二人にはそれが耳に入らない。

「トール・アルカード君か。妹達が気に入ってたから、君の素性を少し調べさせて貰ったよ」

 ランスは言う。

「素性?」

「高名な魔法使いの家系を出ているそうだね。そして優秀な弟がいた。けど君は魔法の才能に関してはからっきしだったようだ。そして魔法学院を強制退学。それから剣聖レイに弟子入りし、今に到るってわけだ」

「だから、なんなんですか? あまり言われて良い記憶ではないんで。詮索されると面白くはないですよ」

 珍しくトールは表情に不機嫌の色を浮かべる。

「別に、敵を調べるのは戦略の基本じゃないかい。僕は君を侮らない。決して」

 ランスは言う。

「それでは、剣爛武闘大会! 決勝戦を始めます」

 カン、ゴングが鳴らされる。

「さっきの詮索、君には余計な詮索に思えたかもしれないけど、僕にとってはそうじゃないんだ」

「え?」

 ランスは意味深に言ってくる。

「確認をしたかったんだ。調べた情報が本当かどうか。けど君の反応を見てわかった。その情報は本当だって。つまり君が『魔法を使えない』っていうのは本当の事なんだ」

 ランスは言う。

「何を、今更」

 ランスは手に意識を集中させる。魔力が迸った。手には篝火程度の炎が宿る。

「僕は魔法も使えるんだよ。僕は剣士っていうよりは、魔法剣士だからね」

 ランスは微笑を浮かべる。

「何と! ランスロット選手魔法も使えるようです! 何でも出来てしまう! まさしくチート野郎!」

 ミシェルは実況する。

「剣士が魔法を使えないと誰が決めた! 天才に不可能はないという事か」

 ヴィル学院長はそう解説する。

「そう、この大会は武器もありですが魔法の使用も禁止されていません。使えるなら別に使って構わないのです!」

 ミシェルは言う。

「火炎魔法(フレイム)」

 魔法の中でもオーソドックスな魔法である火炎魔法をランスは放った。

「くっ!」

 遠距離攻撃があるのはやっかいだった。

「……流石に君の弟には劣るだろうけど。あるのとないのとでは大違いだろう? 魔法って奴は」

 ランスは笑みを浮かべた。そしてトールは苦難の表情を浮かべる。

 まさかここに来てまた魔法に苦しめられるとは思っても居なかった。

「いくよ! 雷撃魔法(ライトニング)」

 ランスは雷撃の魔法を放った。痛烈な雷が襲いかかってくる。

 トールは身構えた。

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