ランスとフィルの闘い前編

「さて、この剣爛武闘大会の司会を務めます。ミシェル・クアハドラと申します」

 そう、女子生徒は言った。全員が武闘大会に参加するわけではないのだろう。大会である以上、運営は必要だった。無論外注する事は可能であろうが、その場合は経費が必要になってくる。そういうわけで生徒が受け持っているのだろう。

 実況役のミシェルは武闘大会の説明をする。

「この絢爛武闘大会は学年の垣根なく、最強の剣士を決定する大会です。ルールは単純明快、どんな武器でも使用可能。そして相手が死んだら負け、あるいは負けを認めたら負けです。そして次に対戦の組み合わせですが1対1での直接対決。そして組み合わせはくじ引きの末にランダムで決められたトーナメント方式になります」

 そう、ミシェルは説明する。

「さて、解説には剣聖でもある学院長ヴィルヘミアさんに来て貰っています」

「よろしく」

 そうヴィルは言った。

「さて学院長、本日の見所はどうなっているでしょうか?」

「やはり王家の一族は注目どころでしょう。特に三年生であり、最年少で剣聖の称号を得たランスロット君は我が学院でも歴代最強という呼び声が高いです」

 そうヴィルは解説する。

「ほう。では、ランスロットさんの優勝は固いと」

「大方の見立ではそうでしょう。だが私はそうは思っておりません。なにせ旧友である剣聖レイ・クラウディウスの秘蔵っ子がいますから」

「ああ。転校生のトール・アルカード君ですね」

「はい。私も実際に彼の腕前を見たわけではありませんので確かな事は言えませんが」

「解説のヴィル学園長でした。解説ありがとうございました。さて、それでは注目のトーナメント表に移っていきたいと思います」

 そう、ミシェルは言った。

「おおっと。何と。一回戦で兄妹対決が見られるようです。ランスロットさんとフィルフィーレさんが戦います。後は主な対戦としましては三回戦まで勝ち進めばクレアドールさんとその話題の転校生トールさんが闘います。そのトールさんですが決勝戦まで勝ち進めばランスロットさんと当たるようです」

 そう、ミシェルは説明をした。

「それでは試合を観ていきたいと思います」

 そうミシェルは言った。

「一回戦第一試合、ランスロットさんとその実妹であるフィルフィーレさんによる試合になります。注目の兄妹対決を観ていきたいと思います!」

 ミシェルは言った。


 闘技場の円形ステージには二人の姿が立った。

 ランスロットとフィルフィーレの姿である。以下略称ランスとフィル。

 二人とも強化服という防護服を着ていた。耐久性と防御力に優れた服ではあるが絶対ではない。それ以上の攻撃を食らえば当然ダメージは食らう事となる。

 フィルにとってはただの兄ではない。絶大な力を持つ最年少の剣聖であり、天才である。そしてただそれだけではなかった。王位継承戦で闘う可能性の高い難敵でもあった。

 つまり負けられない相手でもあった。

「聞いたよ、フィル。あの転校生を王位継承戦に取り込みたくて色仕掛けをしているそうだね」

 ランスは薄く笑った。

「ランス兄、それがどうしたの?」

「別に、フィルも女らしいところがあるんだな、って。女の武器を使おうとしている。それだけ必死なんだ。あの転校生がどれほど強いか知らないけど、フィルが入れ込む以上はフィルよりは強いんだろうね」

 ランスは語りかける。

「けどそれは実力で僕に勝とうって事を放棄しているよね。実に女の子らしい選択だよね。フィルは知っているんだね。君が僕には勝てないって事を。自分で勝てないから彼に気に入って貰って勝って貰おうとしているんだ」

 ランスは笑う。

「う、うるさいし。ランス兄」

「だってそうじゃないか。フィル。そんなに王位が欲しいかい?」

「欲しいというか、私がなる以外にない。信用できない。例えランス兄でも」

 フィルは言う。

「そうか。ならいい。けどそれは僕だって一緒だよ。僕も僕しか信用できない」

 ランスは言う。

「御託はいい。あたしは勝つ為に最善を尽くしているだけ」

 フィルは剣を構える。

「そろそろいいか。大会のスケジュールもあるだろうし」

 ランスもまた剣を構えた。

「両者! 準備はよろしいでしょうか!」

 ミシェルは言う。

「それでは第一試合! 剣聖ランスロットさんとその実妹、剣姫フィルフィーレさんとの闘いです! 試合スタート!」

 カン! ゴングが鳴らされる。それが試合の合図だ。

 二人の剣が交錯し、甲高い音を奏でた。

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