第11話
早苗は走る。
誰も居ないはずの部屋の障子から無数の幼子の影法師が現れ、夕暮れとともみ早苗の方に伸びる。
『来るな!あっち行け!せっかく人間から解放されるのにまた縛り付けるつもりなの?』
『お前はあの子の此れからの自由に不必要だ!』
『これ以上あの子を苦しめるなら、僕達がお前を呪ってやる』
廊下の隙間や天井から蜘蛛が這い出てきて早苗に襲いかかる。
しかし早苗は怯む事なく前へと進み叫んだ。
「蜘蛛の怪物さん、私は貴方達がどんな人でどんな思い出でこんなことをしているのかは分からない、だけどこれだけは分かる。貴方達にとってあの子が大切なように私にとっても大切な存在だって事、あの子は今泣いてる。
分かるでしょ?この呪いは人間に向けられたものじゃ無い、あの子があの子自身を呪っているの、たとへ自由になれたとしても自分の心の闇に一生囚われ続けることになるわ、怪物さんはそれでも良いい?」
『・・・・』
『・・・・』
別棟に着くいた。
錠前は外れていたが、蜘蛛の糸が何十にも絡められていて開かない。
「お願い開いて!お願い!」
そんな時裕也がマサカリを持って現れた。
「よく分かんないけど開ければいいんだな?早苗は下がって」
マサカリを振り上げ門を破壊した。
と同時に早苗は裕也に目もくれず中へと走った。
お札が剥がれたザシキワラシの部屋、早苗は開けようと障子に触れたその時だった。
胸元にチクリと痛みが走ったかと思うとお札がまるで嵐に吹かれる様に剥がれ飛び、障子が一人でに勢いよく開いたのだ。
ザシキワラシの大きな泣き声に思わず耳を塞いだ。
「ザシキワラシ!!私よ!なえよ!」
必死に呼びかけるも泣き声にかき消され届かない。
泣き声は徐々に大きくなり、それと同調してか地震の規模も大きくなってゆく。
早苗は這うようにザシキワラシの下に駆け寄るとポケットの中からカリカリ梅を取り出しザシキワラシの口に放り込んだ。
「ん?ん〜!?!?ん〜〜!!!」
泣き声はピタリと止み、口を押さえ悶絶し始めた。
しばらくして正気に戻ったザシキワラシが早苗と向き合う。
「な、なえーえ、ゴ、、ゴメーゴメン、、なさい」
「ううん、謝るのは私の方、いつの間にか貴方を沢山傷つけてしまって」
「なーえ」
「何?」
「だ、大好き」
「私も!大好きよ」
しばらくして裕也が入ってきた。
「うお!?本当に座敷童が住んでたんだな、早苗紹介してくれよ」
ザシキワラシは早苗に親しげに話しかけている姿を見て、不機嫌そうな顔を裕也に向け、舌をベーーと伸ばした。
「ザシキワラシ駄目よ。裕也も友達なの」
ザシキワラシはプイッと顔を背けた後、早苗の手を掴むと足速に部屋の外に飛び出していった。
別棟を抜け、森に入ろうとした時、キューブレーキを掛けるように、立ち止まった。
ザシキワラシはその場にしゃがみ込み何かを見つめていた。
見てみると其れは赤い印のついたロープ、もしかするとこのロープのせいで森には入れないのかもしれない。
と、その時だった。
ザシキワラシは早苗をお姫様抱っこで抱き抱えるとロープに沿って走り出した。
其れはまるで疾風、、、いやダチョウのように凄まじく、立つ砂埃がロープを巻き込んで舞い上がる程。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます