第5話

寝る時間になり早苗は寝る準備をした後、ザシキワラシに会いに部屋を出るタイミングを伺っていた。

しかし、夜回りする人が一向に居なくならず、深夜12時を回ったあたりで止む終えず諦めて寝ることにした。


寝静まって丁度3時になった位だろうか?

急に妙な圧迫感が早苗を襲った。


早苗はあまりの寝苦しさに耐えかね、勢い良く起き上がる。

荒れた息遣い、額には汗がにじみ出ていた。


少し落ち着いたところで、障子に目をやる。

人の気配と、何処かで嗅いだことのある腐った藁の酸っぱい匂い。


「誰かいるの?」

「…………失礼……しても?」


女性の声、やはり誰かいる。


「…どうぞ」


早苗の返答と共に、障子をすり抜け女性が入って来た。

やはりあの時の幽霊、まさか向こうからやってくるとは思わなかった、

だけど前と違い半透明で実態が見えずらい。


女性はゆっくりとした口調で淡々と話し始める。


「この度は、弟が何時もお世話になっております」

「弟?もしかしてザシキワラシの事」


女性は静かに頷く。


「あの子とても楽しそうで、お陰様で力も徐々に戻ってきて…意識だけとはいえ私もこうしてご挨拶する事ができる様になったわけです」

「は、はあ」

「…その様子だと、座敷童についてご存知ないのですか?」

「そうね、あの子とはまだ会ったばかりで何も知らないわ」


女性は少し間を置いた後、「知らない方が、良いかも知れませんね」とぼそりと呟いた。


「早苗さん、今後とも弟をよろしくお願いしますね」


女性はそう言い残し立ち去ろうとした。


「待って!まだあなたのお名前を聞いてないわ」

「…………そうですね…姉ノ座敷童とでも呼んでください、そうそう、言い忘れていましたがあの子は直ぐに人を好きになります気い付けてくださいね」





早苗は考えていた。

もしかして座敷童って個人の名前じゃ無くて特定の人種名か何かなのでは無いだろうか?


早苗はお母さんに座敷童について聞いて見た。


「ザシキワラシ?さあ、聞いた事ないね〜、外国の食べ物か何かかしら?」


お父さんにも聞いたが同じ様な反応、

裕也が早苗の部屋に遊びにきた、駄目元で祐也にも聞いてみた。


「え?座敷童知らないの?マジで?」

「知ってるの?」

「知ってるも何も有名じゃん、日本人なら皆知ってるもんだと思ってた」


裕也の話によると、座敷童とは子供の姿をした妖怪で、見た者に幸運をもたらすとされている。

宿や旅館の守り神としても知られており、座敷童の住み着いた宿もしくは旅館は大繁盛するのだそう。


「へえ、妖怪というより妖精みたいね」

「座敷童は良い事ばかりじゃないぞ、恐ろしい力も持ってるんだ」


座敷童はその力故、霊感を持った欲深い人間に誘拐される事も少なくなかった。

しかし座敷童達は幸福を与える以外に呪う力も持っている。

呪いはその人間に様々な不幸を招き、破滅へと導く。


「つまり座敷童って言うのは福の神である一方貧乏神でもあるって事だ」

「へ〜不幸って具体的にどんなことが起きるの?」

「さー?本で調べて見たら良いんじゃない?此処地元なんだから伝承ぐらいあるだろ」

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