第4話


この日の晩は宴会。

何千人もの客が広い会場に集まり、豪華な食事と酒にしらず積みしつつ和気藹々と宴会を楽しんでいる。


早苗達の両親は久しぶりに会った親戚達と思い出話に花咲かせていた。

早苗はというとそんな両親を横目に身を小さくして詰まらない様子でジュースをチビチビ飲んでいた。


「は〜〜、宴会なのにつまんない、ザシキワラシに会いに行きたいな〜〜」


そんな早苗の前に1人の旅行客の中にいた男の子が座った。


「俺、裕也ってんだ、君は?どこから来たの?」

「何よ急に、、」

「大人ばっか盛り上がってつまんないからさ、飲み仲間が欲しいんだ」


そう言って男の子は炭酸飲料の缶を開け、早苗のグラスに注いだ。

早苗は男の子の行動に笑った。


「フフフ、お酒じゃないんだから缶のままでいいのに、変なの」


その後2人は

どこに住んでいるのか、誰と来たのか、普段何をしているのか、色々んな話をして盛り上がった。


宴会が終盤に近づき、舞台の上に艶やかな着物を着た踊り子達が登場し、大人達が一斉に声援を挙げた。

そんな大人達を一目見た後、裕也は口元に手を添え内緒話をするように早苗に顔を近づけた。


「実話さ、俺、ここに来る途中見たんだ」

「見たって何を?」

「幽霊」

「ええ!本当?」

「ああ、あんな感じの赤い着物を着た女性の幽霊、肌は絹みたいに白くて、目は見た事ないぐらい黒々しててさ」


絹の肌?黒々とした眼?

早苗はその特徴がザシキワラシと似ていることに違和感を覚えた。


「何処で見たの?」

「東の宿外の山場の中、俺らそこに泊まってんだ、何かを見つめてるように見えたかな?」


東の宿と言ったら別館の一番近くにある場所だ。

もしかしたらザシキワラシと何か関係があるかもしれない…、早苗はとその幽霊に会いたくてソワソワした気持ちになった。


突然、宴会場の電気が消え真っ暗になった。

騒めく会場、電気は直ぐに点灯したがその後も何度かチカチカと消えたりついたりを繰り返す。


「幽霊が出た時と同じだ、そん時もこんな風に電気が消えたんだ」


その言葉を聞いた早苗は、さっとその場からガタンッ!と立ち上がり東に宿へ走った。



早苗は東の宿の廊下に着くと窓枠から外を覗きこんだ。

其処には確かに女性の幽霊が居た。

別棟近くの庭の林の中からジッと別棟を見つめている。


幽霊は全く動く様子がなくただ悲しげな表情を浮かべているだけ、

一体何をしているのだろうか?


早苗の中で様々な推測が飛び交う。

この状況から分かる事は、あの幽霊はザシキワラシと何かしらの関係があるという事だ。

見た目も似ているし、もしかしたら兄弟?母親?いや、だとしたら如何してザシキワラシを別棟に放置しているの?


その時だった突然後ろから肩掴まれ、早苗は思わず声を上げた。


「ワッ!?」


振り向くと其処には裕也が居た。


「ビックリした、脅かさないでくれよ」

「驚いたのはこちよ、!?」

「いやさ、急に走ってどっかいっちゃうんだもの、追いかけたくもなるよ」

「まったく…」


早苗は再度窓の外に目をやった。

其処には幽霊はいなかった。


「もしかして幽霊に会いに来たの?」

「……消えちゃった」







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