第2話
翌朝、
お婆ちゃんはお客さんの対応で忙しいく、お父さんとお母さんは部屋で寛いた。
早苗はこっそり部屋を抜け出しあの別棟を訪れた。
しかし別棟の扉は鎖で繋がれていて中に入るとこはできなくなっていた。
早苗は覚えていた、あの男の子がいた部屋の中に小さな覗き窓があった事を、
早苗は別棟の外から男の子がいた辺りを探して見た、思った通り覗き窓があった。
中を覗くと男の子の膝が少し見える。
早苗は何を思ったかポシェットから飴を取り出し覗き窓に手を入れた。
すると男の子の手が触れ、ビックリした早苗は瞬時に手を引っ込める。
確かに男の子の方から触れてきた、間違いなく置物などではない、早苗は再度触れた感触を確認する様に、振られてた指先を眺め軽く撫でた。
そして再度覗き窓に目をやると其処には男の子の顔があった。
早苗はまたビックリして腰を抜かした。
男の子の肌は絹の様に白く、眼は暗黒という言葉が似合うほど黒々としていた。
起き上がり男の子に近ずくと、藁を腐れせた様な酸っぱい匂いがほのかに臭う。
「あなたは誰?」
「…………………」
「如何して其処にいるの?」
「……………ザ…シン…ビィ〜ガー」
男の子は一生懸命何かを伝え様としている様だが言葉にならない。
早苗はテレビで、喋れない病気の人がいる事を思い出し、鉛筆と色紙を取り出し、手渡す。
数分して色紙が鶴に折られ出てきた。
「違う、そうじゃない」そう言いたかったが、男の子の嬉しそうに手渡してくる姿を見て、言うに言えない。
きっとこの子は何某の障害があって、ここに閉じ込められているんだ、早苗はそう思った。
でもどうして手足を縛られているのだろう?
次に早苗は、違う色紙に「あなたは誰?」とメッセージを書き男の子に渡した。
すると今度は紙風船になって出てきた。
男の子はキシシシと悪戯っぽく笑っている。
風天を手に取ると其処には、文字が書かれていた。
ミミズがのたうちまわった様な下手な字だったが其処には『ざしきわらし』と書かれていた。
早苗は紙風船の裏側に『さなえ』と書いて覗き窓に転がし入れた。
それを見た男の子は今にも飛び跳ねんばかりに喜び、覗き窓に口を突っ込んで、何度も「なえ!なえ!」と連呼した。
「さなえ…なのだけれどな」
遠くからお母さんの呼ぶ声がする。
早苗は慌てて鉛筆をポシェットに直し男の子に手を振った。
「それじゃ、また来るから」
男の子はその場を立ち去ろうとする早苗に「ああ、ああ、な〜え〜」と少し悲しげな声をあげた。
◇
今日のお昼は素麺、お母さんとお父さんとテーブルを囲み啜る。
お父さんが早苗の顔を見て言った。
「どうした?えらく上機嫌じゃないか」
「今日ね、素敵な出会いをしたのよ!」
「旅行客の子とでも仲良くなったのか?」
「そうじゃないけど、とにかく凄い出会い!」
早苗は時折感情だけで話をするところがある。
両親共その事を知っていたから、何に出会ったかは深くは聞かなかった。
ただ我が子が嬉しそうなら それで良いのだ。
昼ごはんを食べた後、家族3人で近くの川に涼みに行こうと言う話になり、早苗は水筒と麦わら帽子を身につけ、それからプラスチックの鉢受けをカバンに詰めた。
お母さんが「鉢受けなんて何に使うの?」とたづねた。
「綺麗なお花があったら持って帰りたいもの」
「それは良いけど、去年大事なお花千切って怒られたでしょ?考えて取りなさいよ」
「もう、しないって…」
そんな話をしていると、部屋にお婆ちゃんが入ってきた。
いつものように優しげな笑顔なのだが何処かピリピリしている様に感じる。
「早苗ちゃん、今日も別棟に行ったらしいけど、まさか又入ったりしてないだろうね?」
「え?ええ、勿論入ってないわ」
「そう、あそこはね、昔からお化けが出るから絶対は近づいちゃダメだよ?」
お婆ちゃんはそれだけ言って部屋から出て行った。
吹き抜け穴
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