囚われの座敷童

@suupalsannkaidatemannsixyonn

第1話


早苗は町の小学校に通う小学生。

今は夏休みで山奥に暮らすお婆ちゃんの家に遊びに行く。

お婆ちゃんは昔ながらの長者で、大きな旅館の大女将、町でも『秘境の旅館』として知られていた。


家族3人、お婆ちゃんの使用人の用意してくれた車に乗り込み、険しい山道を走り抜ける。


早苗は窓からの景色を見ながらあちこち指差し「綺麗な青いお花があった!」「

あの草!あの草ね理科で習ったのよ」などと言ってはしゃいでいた。


しかし、ふと早苗は不思議なことに気がついた。

道を沿う様に地面に伸びたロープ、所々に赤い印がついている。

動物よけにしてはただ落ちているだけ、車が道を違えない様に張っているにしては土気色で一目じゃ気づかないほど見えにくい、何よりこの道はよく整備されていて間違えようが無い。

一体何のためのロープなのだろう?

ロープは旅館にまで続いていて、旅館の周りをグルリと囲んでいた。


「よく来たね早苗ちゃん」


お婆ちゃんが優しく門の前で出迎えてくれた。

お婆ちゃんに案内された先には豪華な御膳が準備されていた。


早苗は用意された豪勢な食事、使用人達のおもてなしに嬉しくなって、ロープの事などすっかり忘れてしまった。


夜になり、早苗はお風呂でポカポカになった体を冷ます為に自室のベランダで涼んでいた。

涼しいげな風鈴の音に耳をすませ、満月を眺めながら食べるキャンディーアイス、これこそ夏の醍醐味である。


「夜ももう遅いから早く寝なさい」

「は〜い」


隣の部屋から聞こえてくるお母さんの声に返事をする早苗、しかし寝る気など毛頭なかった。

旅館探検、去年もその前の年も家族と同室だった為、したくても出来なかった、早苗にとってのこの夏の一大イベントである。


早苗は皆が寝静まった事愛を見て、カバンから懐中電灯を取り出し廊下に出た。

早苗はまるで盗人の様に背を屈め、探索を開始。


他の客の鼾や団欒の声が聞こえてくる。

早苗は際へ先へと進み一番奥の東の門までたどり着いた、勿論真夜中なので門は開いておらずこれ以上は進めない。


早苗は何か面白いものは無いか辺りを見回した、すると庭を越えた先に別の建物があることに気づいた。


誰にも気づかれぬ様、窓を開け外に出た。

建物の門には『別棟』のもの字が、どうやら此処も旅館の一部らしい。

中は蜘蛛の巣だらけで、床は埃で白くなっていて一度中に入れば足型がつく程だ。

早苗は少し怖い気持ちになったが其処は子供、好奇心には勝てず中へと進んでいった。


探索しているとちょうど月明かりの当たる部屋の一角が目に入った。

その部屋は何とも君悪く、障子には無数のお札が張られていた。


早苗は障子の破れた穴から部屋を覗いて見た。

すると中には同い年くらいの子供が一人座り込んでいた。

その子供は着物姿に丁髷と如何にも時代劇に出てきそうな格好だった。


子供は早苗の存在に気づくと、こちらを向いて手招きをする様な動作をしてみせた。


早苗は誘拐された子ではないかと思い、助けてあげなきゃと思い、障子を開けようとした。

その時だ、奥から「何をやっている!!」と怒声が響いてきたのだ。


早苗はびっくりして障子に伸ばしていた手を引っ込めた。

暗がりからギシギシと音を立てだけかが近ずいてくる。


早苗は怖くてその場にしゃがみ噛んだ、しかし恐る恐る顔をあげると其処にいたのはお婆ちゃんだった。


「早苗ちゃん、こんな所で何をしているの?」

「え…あの、御免なさい、探検したくて…」

「もう遅いんだから早く寝なさい、其れと此処は汚いから勝手に入っちゃダメ、分かった?」

「………うん」


早苗はお婆ちゃんに手を引かれ自室の棟に取った。


「ねえお婆ちゃん、あの部屋にいた男の子って…」


早苗が問い掛けた時、早苗の手を引くお婆ちゃんの手が少しだけ強くなった。


「………お婆ちゃん?」

「ああ、アレは置き物だよ、もう古いから私もよく知らないけどね」



早苗はお婆ちゃんが嘘をついていることがわかった。

だけどその夜は何も考えたくなかったから、自分に「あれは置き物だったのだ」と言い聞かせ眠りについた。







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