ワナビー・ユア・コンビニエンスガール
出来ることならずっと、このぬるま湯に浸かっていたい。
恋人のように話して、恋人のように遠出して。ドライブに行ったり美味しいものを食べたり、たわいもない話をしたり同僚の文句を肴に酒を飲んだり。
身勝手だろうか。ずっとこのままでいたい、そう言ったら、君はいったいどんな顔をするだろう。こんな邪な腹の中も、いつかは君に気付かれる日が来るけれど、私からこんな話を切り出すことなどできやしない。そんなことを伝えてしまえば、君は私から離れていくに決まっているから。
私は君のすべてを知りたくないんだ。君の悪いところを見たくはない。私はただ、今見えている君だけを愛したい。
私は君にすべてを知られたくはないんだ。私の悪いところを大好きな君に晒したくない。君にはただ、輝いている私だけを見ていてほしい。
ああ、なんて身勝手な女。現実から逃げ、甘美な蜜だけを啜って生きようとする最低な女。君をよく知ろうともせず、私利私欲のためだけに君を利用しようと目論む、性根の腐った人間。私だってこんな意気地無しは嫌いだ。だけど生き方を改めようともしないのは、こんな生活を心地良く感じてしまったからだろう。
……友人からは、順風満帆だと、よく言われる。でもそれは違う。私達は雲の上を歩いているのだ。歩けていると思っているのだ。幻想が晴れれば、私は地上へ真っ逆さま。でもまだ……、ああ、私はまだ、この期に及んで、見て見ぬふりをしている。終わりを拒むが故に始まりを遠ざけた馬鹿な女は、刻々と近づく終わりの気配に、またしても背を向けるのだ。
ああ。もういっそ、このまま、都合のいい女のままでいたいって、そう打ち明けてみようか。けれど君は真面目だから、そんな提案を受け入れるわけがないだろう。私はそんな君だから惹かれたのだけれど。
八方塞がりな現状に溜息をついた。
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