似非・自殺志願者

 ここから飛び降りたら?当然死ぬだろう。

 手首を切って洗面台に浸けたら?血が足りなくなって死に至るだろう。

 包丁を自分に向けて向けたら?この体は動きを止めるだろう。

 今車道に飛び出たら?バスに轢かれてひとたまりもなくなるだろう。

 線路に飛び出したら?それはそれは列車を止めるほど凄惨な事故になるだろう。


 ……結局のところ、僕はいつでも死ねるのだ。毎日「死にたい」「開放されたい」と思っているのに、その思いを叶える機会はいくらだってあるのに、それなのに僕はその踏ん切りがつかないまま、惰性のままに生活を送っている。

 死に伴う痛みが怖いのか、まだこの人生に淡い期待をしているのか。たぶんどちらもだろう。経験が積み上げた”恐怖”を真に受けて、経験からくる絶望の予測からは目を背ける愚か者。本当に嫌になる。きっと、悲劇から幸せへと転じる、そんなよくある御伽噺みたいな人生を望んでいるのだろう。馬鹿らしくて泣いてしまいそうだ。

 

 帰り道に寄った文具店でボールペンの替芯を買った。そのまま家路に向かっていたら、悲鳴が聞こえた。人が蜂の子を散らしたように走って……、その前に男がこちらへと走ってきている。手には、銀色に光る……、刃物?

 振り返っても誰もいない、翻っても未だ歩みを止めず、足がすくんだ、そのまま僕に突っ込んで、嫌だ、まだ僕は死

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