口上

 曰く、生命を賭した大勝負に言葉は要らずと。

 曰く、自らを燃した剣術に翳りなぞ有らずと。

 曰く、何時如何なる剣戟であれど手加減は要らずと。


 互いの鋒が互いを捉えている。


 一撃必殺、長刀一閃、過去の技々数あれど。

 天下泰平、安寧秩序、此度の時流に其れは不要ず。

 さりとて剣はここに有り。

 戦乱潜りし我が流は、時とて流せぬ不動と成りて。

 絢爛極めし世であれど、此れ輝きて陰りを知らず。



 いざ。

 

 尋常に。

 


 

 ……此れは、ただ一刀にただ弌つの人生を捧げ、ただ剣戟に散るを是とした、ただ愚かでただ美しい、ただ名も残さず散った人間の、其の生の一幕である。

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