第2話 いっぱいの手袋

 お母さんは冬が過ぎ暖かくなっても、手袋をして幼稚園に行くわたしに尋ねました。

 「あっちゃん、どうしていつも手袋をしているの」

 わたしの名前は、喜島あつ子。突然わたしはお母さんに質問されて困ってしまってしまいました。

 「あのね、あのね、わたし男の子といっつも遊んでるから、怪我をしないようにしておかないと危ないの」

 「そう。それは危ないわね。わたし先生に少し言っておかないとね」

 「いいの、いいの、わたし男の子と遊ぶのが大好きだから、いいの」

 「そうよね。うちにも男の兄妹きょうだいしかいないしね」


 わたしは4人兄妹の1番末っ子で、上の3人は全員男でした。お菓子の数やおもちゃの取り合いでいつもお兄ちゃんとケンカばかりしていました。あるのは戦隊もののおもちゃやミニカー、プラレールで、近くの広場でよくサッカーをしていました。

 両親は誕生日プレゼントに、お雛様やぬいぐるみ、お人形を買ってあげようか、と言ってくれるのですが、一度も買って欲しいとお願いしたことはありませんでした。

わたしはいつもいろいろ考えていつも可愛い手袋をお願いしていました。そのうちわたし用の手袋がいっぱいになりました。

 赤や白や、黄色、茶色、緑など色とりどりの手袋。りぼんが付いたり、手袋で押し返しがあったり、まりものようなファーが付いた手袋。さまざまなデザインの手袋がとてもたくさんになりました。


 わたしは、いつも二つのことに気を付けました。一つは男の子を好きにならないこと、もう一つは手袋を決して外さないこと。

 幼稚園から小学生にかけて男の子を好きになることがどういうことなのかよく分かっていませんでした。小学校にこれから入るわたしは男の子と遊ぶことが、好きになることだと思っていました。

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