第45話 辛いよ 熱でちゃった!
朝起きた時からやけに肩は重いし、足はだるいし、どうしたのだろうと思いながら、夫と慧を送り出し、ごみを捨てに行き、帰ってきたら良子が起きてきて玄関で泣いている。
「りょうちゃん寒いよ、パジャマで。」
せっかく暖まった部屋が冷えてしまっている。ボロ屋で隙間だらけ、おまけに私を探し回ったのだろう、ふすまやドアが全部開け放してある。
ほんのちょっとの間だったのに。しょうがないなあとりょうを抱き上げると、体がやけに熱い。
2,3日前から様子が変だったので気をつけてたのに、やっぱり熱が出てしまった。
朝なのに、かるく三八度をこえている。ついでに私のも計って目を疑う。この体温計壊れてるかも。別の水銀計を探してきてもう一度計ってみる。りょうを抱っこしながらの動作が耐えられないほど辛い。これは壊れてなんかないなあ、具合悪くしちゃたなあと、ようやく自分の体のことを意識した。やっぱり、8度4分ある。あーあ。
今日は、ひなぎく園でお楽しみ会に父母がやるだしものの相談があったのに。
熱があるって知ってしまうと、全く力がで出なくなってしまった。
あさこが起きてきた。「りょうちゃんどうしたの?」べちゃっとしてる良子がいつもと違うのがわかるのだろう。あさのおでこにさわるとこの子はだいじょうぶのようだ。念のため計ってみる。三六度。よしよし。
まず、綾さんに電話する。あさを預かってもらわなければ。ダイヤルをまわしかけて思い出した。頼めない。運が悪い。今日はしょうくんの保育懇談の日だった。新田さんはアメリカに行ってしまったし。
しょうがない、一度来てもらったことのある福井のおばさんに電話することにする。以前、近所の方が出産のときに手伝いに頼んでた方を紹介してもらったのだ。地元の年配の方だ。
2時ぐらいまでしかだめということだったが、とにかく早く来てと頼む。
「あさちゃん、福井のおばちゃんて、優しいおばちゃん知ってるでしょ、今から来てくれるからね。かあさんとりょうは病院行ってくるからね。」
30分ほどして、おばさんが来てくれた。
「あさちゃん、ほれ、あずきを炊いたからね、今からおもち焼いて食べようか。それからこれが頼まれたポカリスエット。」
あさはこのおばさんがちょっと苦手で 置いていくのがかわいそうだったが、りょうとふたりで病院に出かける。
それでも帰ってくると、あさはおばさんのひざに上で絵本を読んでもらっていた。
お洗濯を済ませ、夕食に肉じゃがを作ってくれていた。
「おばちゃんと生協マートに行ったの。」とあさ。本当に助かった。
「もう帰らなければ、めったにないのに、今日はお客でねえ。」
そうだったの。お宅のことしなければならなかったでしょうに、急にお願いして済みませんでした。と取り決めてある時間給を気持ち多めにしてお渡しし、帰ってもらった。
ふとんに休む前に、小寺さんに電話。産休で家にいる彼女に、えみちゃんのお迎えのついでに慧も連れてきてと頼む。2ヶ月になるかよちゃんをかごに入れて彼女は車でお迎えにいっている。
「父母会にも出られないね。先生に伝えておいてあげるね。」
あさも預かってあげると言ってくれたが、あさも風邪がうつっているかもしれず、かよちゃんにうつしたら大変だからと遠慮した。
食欲は全くなかったが、おばさんが作ってくれていたおじやを少し食べ、薬を飲んだ。りょうはもう眠っていた。あさもとなりの布団に寝かせて いつもは絵本を読んであげるのだが、
「かあさんはとてもしんどいから、ごめんね。」と言うと、
「いいよ。」といつも「だめ、いや、」ばかりの子がいやに素直だった。
気がつくと 枕元でりょうがごそごそと動いている。りょうちゃん、おふとんに入らないと寒いよと、りょうをみてびっくり、口に水銀計をくわえている。ケースを開けてしまったらしい。
噛んでしまったりしたら大変だった。気分が悪くて油断していた。
どきっとしたら頭が痛くなってきて、なんだか大声で泣きたくなった。
でもまずはふとんから出ているりょうに何かセーターでも着せなければ。起き上がってりょうのそばに行ったら、臭う。あーあ、りょうちゃんしちゃったねえ。おしっこは教えるのだが、大きいほうがなかなかだ。
おむつを替え、おしりをきれいにしてあげて、座り込んでしまう。
とにかくおむつの始末をしなくては。這うようにしてトイレに流し、手を洗い、また、しゃがみこむ。 寄ってきたりょうのおでこはもうそんなに熱くない。まずは良かった。さっき苦労して飲ませた薬が効いたのかな。問題は私だ。結構重症だ。
庭から声がしている。慧が帰ってきたんだ。ガラス戸のところに行き、かぎをあけて、小寺さんに挨拶する。「ただいまー。」と慧が入ってくる。
木戸の所で、小寺さんが
「明日もお迎え任せてね。」と言って帰っていった。
「けいちゃんが帰ってきてくれて助かるよ。かあさんは寝ていたいんだけど、りょうたちが心配で。危ないことがないように見ていてくれる?」
「りょうは寝てなくていいの?」
「本当はねてなくちゃだめなのに、じっとしてられないのよ。夕飯まであと1時間くらい、お願いね。」
「テレビみていい?」 「いいよ、でも、りょうたちのことよろしくね。」
もう限界だった。倒れこむようにふとんに入り、あまりに辛くて眠ることもできず、悶々としていた。こういうとき母親たちはみんなどうしてるんだろう。
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