第43話 つららとり
「おれ、今日、巨人のつらら探そ。」「せんせ、おおかみのトンネルか?」
かっちゃんが先頭で珍しく先生によくしゃべっている。
今日の散歩は、おおかみトンネルのある田んぼ。
「おい、けい!また、じゅずだまとれるぞ。」とかっちゃんが後ろを振り向いてぼくに言う。
先生が
「もう寒くなっちゃったからないと思うよ。かっちゃんもネックレスつくりたいか?おかあさんにつくってやんな。教室にまだたくさんあるから。」
こないだ ぼくはせいこたちとじゅずだまでネックレスを作った。先生が
「けいは手さきがきようだねえ、じょうずじょうず。」と言ってくれると、それを聞いたほかの先生も集まってきて
「ほんとに、よく玉つめて きれいにできたねえ。」と口々にはめてくれた。
あさちゃんにあげたら ものすごく喜んでいつも首からさげてる。
「おいらはやんねえ。女遊びだっぺ。」
「あれえ、かっちゃん、おとこのすることおんなのすることって決まってないんだよお。」
かっちゃんは、またぼくにほうをふりむいて、にかあーって笑った。
田んぼのほうに降りていき、川にかかっている橋の下をくぐると、土手との境目あたりにいつもつららがびしーっと並んでいる。
「ゆうべ寒かったから大きくなってるねえ、」
「おいら大きくなってるとこ知ってる!」こうじとがそう言って向かったほうにかっちゃんも走ってついていった。
ぼくはたっくんと橋をわたって向こう側のどてのほうから橋の下をのぞいた。
「すっげー。」たっくんとふたりで声を出してしまった。ぶっといつららがさがっている。いままでこっちにこなかったから、小さいうちにとられることなく成長したんだ。
「たくちゃん!、けい!川に近づいたらだめだよ!」先生がさけびながらこっちに渡ってきた。
「そうかあ。こっちのほうが陽があたらないんだわ」先生も巨人つららを見て目を丸くしている。
「どうする?とってしまう?もっと大きくなるまで待つ?」
ぼくとたっくんは、またこんど来たときにどれくらい大きくなってるか お楽しみにすることにした。
「せんせ、ないしょにすっぺ。」たっくんが先生に約束だぞってゆびきりをした。
ぼくもたっくんと先生とゆびきりした。
まあまあの大きさのつららをビニールにいれてもってかえり、庭で遊んでたきりんさんやあひるさんたちにもわけてあげた。
えみちゃんが、つららすーぷにしよ。そう言って、おなべにつららをいれてたき火で溶かしはじめた。 「なんかいれよう、あ、はなびらにしよ。」
「じゃ あたしとってくる。」せいこが走っていき、ぼくもえみちゃんのおなべにつららを入れてから、庭の隅に走っていった。紅いさざんかの花をせいこがとっている。地面にいっぱい散っている。
つららと紅いはなびらをかきまぜるとカシャカシャと音がした。
「ひゃっこいからぼくも入れよう」っておなべに次々とみんながつららを放り込んだから、紅い花びらが浮いているつららスープになるまでに、せいこもえみちゃんもぼくもたっくんもみんなが順番にカシャカシャかきまぜることができた。
しま先生とさの先生がおおなわとびのはしとはしを持って、「みんなおおなわしよー、入っといで」と呼んでいる。
「みんな、8人入ったね、じゃあ いーち、にーい、さーん、」こうじが足をひっかけた。
「さいしょから はい!いくよー。」
あひるさんやひよこさんが集まってきていっしょにかぞえる。
「いーち、にーい、さーん、」 今度はぼくがひっかけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます