佐野良樹 ⑥
亜也がフェンスにもたれかかったまま動く気配がないので、僕は彼女の隣に腰を下ろした。
「亜也ちゃん、お腹空かない?」
「…そうね。コックに何か作らせましょうか。」
亜也はスマートフォンを取り出し、使用人を呼ぼうとしている。
「ま、待って!僕、チョコ持ってるんだ。
一緒に食べない?」
ポケットの一口チョコレートを彼女に渡す。
「あら、市販の量産ショコラ?
わたくし自宅のショコラティエが作ったものしか食べたことがないの。」
亜也は僕から受け取ったチョコレートを持ち上げて、太陽に透かす。
「割と美味しいものだよ。よかったら食べてみて。」
ビニールの包みを開いて口に含むと、舌の上でミルクチョコレートの優しい甘さが溶けだす。
亜也は恐る恐るチョコレートを齧った。
「意外と美味しい。安っぽい甘さが癖になるわね。」
亜也が目を丸くする。
「はは、失礼だな。」
もうひとつチョコレートを渡すと嬉しそうに食べた。
談笑しながらふたりで残りを全て食べ終えると、彼女は言った。
「少しわたくしの話をしても構わないかしら。」
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